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いつでも側に〜一途な両片想い〜

せいとも

両片想いの行方①

 『ありがとう』鈴の心からの言葉は、純真な子供の要素と大人の魅力とを併せもつ笑顔だった。

 誰をも魅了する女優畑中鈴に、魂が宿った瞬間かもしれない。

 思わず見惚れてしまう……。

 十八年の歳月を経て、鈴が鈴らしく笑った瞬間、直人は初めて鈴を見た日を思い出した。

 あの頃から月日は経ち、荒波にもまれ辛い思いをたくさんしたはずなのに、変わらない鈴が愛しくてしかたない。

「鈴は、今まで色々経験してきたと思うけど、どの仕事が好き?」

「う〜ん」

 今まで、自分で仕事を選ぶ事なく、依頼があればよっぽどのことがない限り引き受けてきた。ただ、鈴の純真なイメージを壊すような無茶な依頼がなかったのもラッキーだったのかもしれない。

 何かを思い出しているのか、一生懸命考えている姿すら可愛い。

 母親から解放された鈴は、本人無自覚かもしれないが、表情が輝いている。見守るだけのつもりが、想いが溢れそうになりながら、鈴の言葉を待つ。

「やっぱり、映画かなぁ。監督やたくさんのスタッフさん、共演者の皆さんと何ヶ月も掛けて、最高の作品を作り上げていく喜びに参加できるのが、大変だけど楽しい」

 ドキッとするほどの妖艶な表情で女優畑中鈴は語る。

 最初は、母親のエゴから始まった芸能生活かもしれないが、鈴には天職だったのだろう。

「鈴はこれからもっともっと活躍するよ」

 直人は確信している。社長になる前から見てきたが、鈴ほど輝く女優は限られている。

 いずれは、自分の手から離れていくかも知れない切なさが押し寄せる……。

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