いつでも側に〜一途な両片想い〜

せいとも

未来を見据えて⑤ SIDE鈴

《side 鈴》

 マネージャーから、社長室に寄るように言われた。

 社長の実家にお世話になってから、心が穏やかだ。お子さんが、息子さんである直人お兄ちゃん一人なので、娘が出来たみたいで嬉しいと言って可愛がってもらっている。

 初めて家族の温かみを知った気がする……。

 直人お兄ちゃんは忙しいのか、実家で見ることがないのが寂しい。

 私の中には、いつも直人お兄ちゃんがいる。きっと大人のお兄ちゃんには、私は小さな子供のような存在だろう。

 今まで、たくさんの人に出会ってきたが、直人お兄ちゃん以上の人はいない。

 憧れの初恋から始まったこの恋は、消えることなく私の胸の中にある。

 いつか、伝えることが出来るのだろか……。

 チャンスがあれば伝えたい……。

 『コンコン』

「はい」

「畑中鈴です」

「どうぞ」

「失礼します」

 社長室の奥のデスクで仕事をしていたお兄ちゃんが、こちらにやってくる。ドキドキが止まらない。

「どうぞ。座って」

「はい」

「どう?うちの実家は?困ってることはない?」

「はい。良くしていただいてます」

「鈴。今は俺と鈴しかいないんだ。気楽にしてくれていい」

「うん」

「本題なんだが」

「うん」

「鈴ももうすぐ十八歳になる。デビュー十八周年だ」

「……」

「どうした?」

「うん。全く実感がなくて……」

「必死に頑張って来たもんな」

 直人お兄ちゃんに優しい顔で言われて、胸が熱くなると同時に、気づけば目から涙が溢れていた。

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