いつでも側に〜一途な両片想い〜

せいとも

成長⑧ SIDE鈴

《side 鈴》

 気づけばいつも光の中にいた。

 たくさんの大人に囲まれて、カメラの前にいる。

 後ろの方から、お母さんがにこにこしながら見ている。お母さんの笑顔が見たくて、笑っていたのだと思う。

 物心ついた時には、お母さんと二人の生活だった。

 毎日、お母さんと出掛ける日々。ベビーカーに乗せられ、電車に乗りあちこちのスタジオに行く。

 スタジオに行かない日は、兵藤アカデミーでレッスンを受けていたように思う。

 幼稚園は行っていない。

 初めての集団生活が小学校だった。馴染み方がわからない。そして、なぜかみんな私を知っている。

 撮影には行っているが、自分が出ているCMやドラマなど、見たことがない。


 家から一歩出るとお母さんは、完璧な母になる。私より女優なんじゃないかと思うほど演技が上手だ。

 家の中では、最低限の家事だけしていて、いつも物が溢れていた。

 いつからか、衣装部屋を借りていたようだ。

 毎日毎日、撮影やレッスンに行く。

 小さい頃からずっとなので、生活の一部で嫌ではない。ただ、小学校の勉強がわからなくなるのが嫌だった。

 友達もできるはずなく、学校では席に座りひたすら教科書を眺める。すると、台本を覚える感覚で、内容が暗記出来る。

 でも、算数は解き方の説明を聞き逃すと、わからないところが出てくる。

 レッスンの合間に、隅のベンチで教科書を見ていると、優しそうなお兄ちゃんが声を掛けてくれた。
 

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