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いつでも側に〜一途な両片想い〜

せいとも

成長⑤

 このころから、兵藤アカデミーでも鈴のことが問題になり始めていた。

 玲子の勝手な行動が目立つようになってきたのだ。

 付添のはずだった母親の存在が、いつしかマネージャーのように現場でも動き、更には勝手に仕事を受けてくるのだ。

 何度か事務所が注意しても、それなら移籍すると言い出す始末。

 直人は、母親の存在もだが、鈴が心配でならない。

 相変わらず、カメラの前では完璧だが、普段は無表情。仕事は完璧で、母親以外の問題はないのだが、心が全く見えない。

 この年代の子が見せる、明るさや楽しさが全く存在していないかのようだ。何を考えているのかすら全くわからない。

 このままでは良くないが、直人にも余裕がなくどうすることも出来ないまま……。

 早く一人前にならなければ……。


 鈴が高校生になる頃だった。あれだけ、勝手な行動をしていた母親の姿を見かけなくなった。

 撮影所やスタジオ入りも、鈴が一人で現れる。

 玲子が四六時中ついてきていたので、専属のマネージャーはついていなかったが、一人となると話は変わる。鈴ほどの出演数を誇る女優となれば、マネージャーをつけなければ危ない。

 話を聞いた直人は、事務所の社長としてではなく、鈴の馴染みのお兄ちゃんとして話を聞く。鈴の警戒心をなくし、素直に話をしてもらうためだ。

「最近、お母さんを見ないね」

「えっ?あっ、うん……」

 カメラの前とは全く違う素の鈴が返事をする。

「体調でも悪いのか?」

「ううん」

「何があった?」

「彼氏が出来たから……」

「……。家にも帰らないのか?」

「たまに……」


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