いつでも側に〜一途な両片想い〜

せいとも

成長④

 将来を見据えて、大学の経営学部に入学した。父親の仕事を継ぐためだが、大半は一生鈴をサポートしたいという思いが強い。

 ただ、この頃になると鈴の母親の存在が気になりだした。

 鈴のことを全く見ていないのは以前からだが、年々派手になっている。働いている様子はないし、鈴が赤ちゃんの時に離婚しているはずだ。

 大人になり、物事が見えてくると嫌な予感しかしない。鈴の今の収入はCMも含めると、かなりの額だと思う。働かずに派手な生活をしている母親を見ると、鈴の収入を使っているとしか考えられない。

 鈴に依存している母親をなんとかしない限り、鈴は一生母親の言いなりで、嫌な仕事も引き受けなければならない。

 小学生にしては、働き過ぎている。社長である父も、そのことについてはポツリと心配の声を漏らしていた。


 直人が大学を卒業する年、父親が体調を崩した。元々兵藤アカデミーに一般の社員として入社予定だったが、ある程度知識があることから、急遽社長に就任することになった。

 小さい頃から見てきた世界だが、表の華やかさと違い、裏側では人間関係が物を言う世界。

 父が築き上げてきた世界を引き継ぐ大変さを身をもって実感しながら、地道に実績を積む。

 時には、直人が継いだ途端に手のひらを返すように、偉そうになる人もいる。

 継いでニ年ほどは、周りを気にする余裕がなく過ぎていった。

 ちょうどその頃、鈴も小学生から中学生になる、思春期を迎えていた。

 仕事以外では、極度の人見知りを発揮し、学校に行っても、存在を消している。最初こそ、芸能人だと好奇の目で見られたが、一貫した鈴の態度に、みんな何も言わなくなった。

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