転生守銭奴女と卑屈貴族男の結婚事情
116
結婚式の日付が決まって一か月とちょっと。窮屈ながらもようやくコルセットに慣れてきた頃。
ドレスの仮縫いが終わっていた。
義叔母様によればウエディングドレスは流行り廃りというものがあまりないらしく、昔からデザインはほとんど代り映えしないらしい。
というのも、式を挙げる貴族夫婦自体がいないので、『前に結婚式を挙げた○○家のデザインがこんな感じだったし、それから大きくずれなければ大丈夫だろう。マナー違反にはならないはずだ』という考えのもと、デザインを決める貴族が多いらしく、流行に左右されないそうで。
周りから浮かないように奇抜過ぎず流行を追ったデザインにしつつ、個性を出そうとしてどこかワンポイントだけアレンジをする。そしてそのワンポイントを公爵家や侯爵家の女性貴族が気に入ると真似をし、さらにそれに気が付いた他の貴族がそれを真似し……と言う風にグラベイン貴族のドレス流行は決まるらしい。
ただ、ウエディングドレス自体、そうそうお目にかかれるものじゃないので、そういった流行の動きからは外れるらしく。
何がいいたいのかと言えば、ウエディングドレスは肩回りが結構がっつり開いたデザインのものだった、ということだ。以前、婚約パーティーで着たドレスは露出が少なかったというのに……。
上半身はシンプルに、しかし腰から下は結構ボリュームのあるスカート。しかもレースと刺繍がめちゃくちゃ豪華。
あんまり世の中のウエディングドレス事情には詳しくないが、結構派手な方だと思う。わたしはもう少しシンプルなのでも……と思ったが、デザインに口を出したのは義叔母様。となれば文句もでまい。
やっぱり、ウエディングドレスとも成れば、自分で決めたいとか、パートナーと相談したいとか、あると思うけど、わたしはほとんど義叔母様と決めてしまった。
あんまりウエディングドレスに憧れがない、っていうのもあるし、義叔母様が大丈夫といったドレスならきっと大丈夫、という絶対的な安心を買えるので、わたしは義叔母様に決めて貰ってよかったと思う。
何を着るかより、誰の隣に立つかが重要だと思うので。
それに――。
「ロディナさん、本当にその色でよかったのかしら。もう少し明るい色でも……」
「常識外れじゃないのなら、この色がいいんです」
「……そう?」
まだちょっと納得いっていなさそうな義叔母様ではあったが、わたしはわたしで我儘を通していたのだ。
ベールの刺繍とドレスに付けるコサージュの色。今代の王族の婚約パーティーのドレスやウエディングドレスのアクセントカラーが水色と赤、黄色だったらしく、それ以外なら何色でもいい、と言われたので、わたしは濃い紫のものにしてもらっていた。
ディルミックの、瞳色。
あの偶然にも出来上がった概念ドレスのときとは違う、意図して彼の瞳色に寄せたものである。
「本当に紫色が好きなんですのね」
「……ええ、大好きなんです」
義叔母様はもう少し明るい色を進めてくれたのだが、ここは譲れない。
「まあ、いいでしょう」
ぱちり、となんとも言えない小気味いい音を立てて、義叔母様は持っていた扇を閉じた。
「そこの貴女、ディルミックを呼んできなさい」
義叔母様は傍に控えていたミルリにそう命じていた。え、もう? 早くない?
「も、もう見せるんですか?」
「……? 仮縫い段階まできたのなら見せても大丈夫でしょう」
夫なんだから、と最後までは言わなかったが、義叔母様の顔はそう物語っていた。
いや確かにそうだけど! 心の準備、心の準備が!
ドレスの仮縫いが終わっていた。
義叔母様によればウエディングドレスは流行り廃りというものがあまりないらしく、昔からデザインはほとんど代り映えしないらしい。
というのも、式を挙げる貴族夫婦自体がいないので、『前に結婚式を挙げた○○家のデザインがこんな感じだったし、それから大きくずれなければ大丈夫だろう。マナー違反にはならないはずだ』という考えのもと、デザインを決める貴族が多いらしく、流行に左右されないそうで。
周りから浮かないように奇抜過ぎず流行を追ったデザインにしつつ、個性を出そうとしてどこかワンポイントだけアレンジをする。そしてそのワンポイントを公爵家や侯爵家の女性貴族が気に入ると真似をし、さらにそれに気が付いた他の貴族がそれを真似し……と言う風にグラベイン貴族のドレス流行は決まるらしい。
ただ、ウエディングドレス自体、そうそうお目にかかれるものじゃないので、そういった流行の動きからは外れるらしく。
何がいいたいのかと言えば、ウエディングドレスは肩回りが結構がっつり開いたデザインのものだった、ということだ。以前、婚約パーティーで着たドレスは露出が少なかったというのに……。
上半身はシンプルに、しかし腰から下は結構ボリュームのあるスカート。しかもレースと刺繍がめちゃくちゃ豪華。
あんまり世の中のウエディングドレス事情には詳しくないが、結構派手な方だと思う。わたしはもう少しシンプルなのでも……と思ったが、デザインに口を出したのは義叔母様。となれば文句もでまい。
やっぱり、ウエディングドレスとも成れば、自分で決めたいとか、パートナーと相談したいとか、あると思うけど、わたしはほとんど義叔母様と決めてしまった。
あんまりウエディングドレスに憧れがない、っていうのもあるし、義叔母様が大丈夫といったドレスならきっと大丈夫、という絶対的な安心を買えるので、わたしは義叔母様に決めて貰ってよかったと思う。
何を着るかより、誰の隣に立つかが重要だと思うので。
それに――。
「ロディナさん、本当にその色でよかったのかしら。もう少し明るい色でも……」
「常識外れじゃないのなら、この色がいいんです」
「……そう?」
まだちょっと納得いっていなさそうな義叔母様ではあったが、わたしはわたしで我儘を通していたのだ。
ベールの刺繍とドレスに付けるコサージュの色。今代の王族の婚約パーティーのドレスやウエディングドレスのアクセントカラーが水色と赤、黄色だったらしく、それ以外なら何色でもいい、と言われたので、わたしは濃い紫のものにしてもらっていた。
ディルミックの、瞳色。
あの偶然にも出来上がった概念ドレスのときとは違う、意図して彼の瞳色に寄せたものである。
「本当に紫色が好きなんですのね」
「……ええ、大好きなんです」
義叔母様はもう少し明るい色を進めてくれたのだが、ここは譲れない。
「まあ、いいでしょう」
ぱちり、となんとも言えない小気味いい音を立てて、義叔母様は持っていた扇を閉じた。
「そこの貴女、ディルミックを呼んできなさい」
義叔母様は傍に控えていたミルリにそう命じていた。え、もう? 早くない?
「も、もう見せるんですか?」
「……? 仮縫い段階まできたのなら見せても大丈夫でしょう」
夫なんだから、と最後までは言わなかったが、義叔母様の顔はそう物語っていた。
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