転生守銭奴女と卑屈貴族男の結婚事情

ゴルゴンゾーラ三国

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 夜。ベッドの中でうつらうつらとしていると、ふと、ディルミックが「ロディナは一般公開の庭園と温室を見に来るか?」と聞いてきた。
 眠いけれど、我慢出来ないほどではないので、意識をディルミックに向ける。あくびが出てしまうのは……まあ、一度くらいは許してほしい。


「うーん……どのくらい人が来るんですか?」


 温室は一度見に行ったが、庭園はまだ見れていない。温室があれだけ凄かったのだから、ちょっとくらい見に行きたいな、という気持ちはある。
 ただ、わたしは別にいつでも見に行けるので、人が多いと気が引けるというか。護衛がつくくらいだし、あんまりうろつかない方がいいのかな、とも思う。


「最初の数日と最後の数日はそれなりに混むが、中間あたりならば、人はまばらだ。人が少ない日なら、庭園を散歩しても大丈夫と思うが……」


「中間……」


 中間と言えば、丁度ディルミックの誕生日ではないだろうか。義叔母様から日にちを聞いてはいるので知っている。
 ディルミックに聞いた話だと、見回りを兼ねて、期間中、たまにディルミックも庭園を周るらしい。先代の時はいろいろと挨拶をしてもらっていたが、ディルミックに代替わりしてからは、平民が寄り付かなくなってしまったが、巡回は形式として残っているので周らないといけないのだとか。
 そして、誕生日当日も丁度巡回が入っている日のようだ。
 日中は彼に会うのは難しいだろうから、ついでにちょっと顔を見に行くのも悪くないかもしれない。


「一般公開中はいつもと少し設営が違うんだ。普段庭園にいかないロディナでも楽しめると思うが……」


 なんでも、植物の説明が書かれた看板が設置されるらしい。平民が来る一般公開でそういう看板を立てるとは、グラベインの識字率はマルルセーヌよりも高いのだろうか。マルルセーヌじゃあんまり見られない対応だ。
 他には、切り花のアートや、花束やちょっとした軽食が買える売店が並ぶなど、一般公開というかお祭りみたいになっているらしい。
 それならちょっと、興味がわく。


「じゃあ、中日なかびに、すいているようなら少しだけ」


 あんまり混んでいるのに出かけたら、護衛の意味ないしね。でも、ミルリはともかく、チェシカとか、興味持ちそうだし、一緒に周るのも楽しいかもしれない。


「…………」


「ど、どうかしたか?」


「いーえ、なんでも」


 ちょっとだけ、巡回についていったら迷惑かな、と思ったが、言わないことにした。あんまり仲が良いところ、他人に見られるとよろしくないんだろうし。
 こういうところは少し、窮屈だな、と思いながら、わたしはディルミックに挨拶をして、眠りに着いた。

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