転生守銭奴女と卑屈貴族男の結婚事情
47
採寸からデザイン・生地選び、仮縫い試着を経て、ようやく今日、ドレスが完成し、最終フィッティングまで来た。
パーティーはもう来週にまで迫っていて、この期間は本当にあっという間だった。
最初のうちは、平民だからと分からないことだらけで大変だったが、後半になってくると、覚えても覚えても次の作法を教えられるので、「これで付け焼き刃って、本当に大丈夫なのか……?」と不安になってきた。前半は肉体的にしんどかったが、後半は精神的につらい。
義叔母様には本当にお世話になった。今後は文字を教わるのがメインになるだろうが、まだまだ作法を教えてほしい気持ちがある。
ディルミックはわたしに貴族としての働きを期待していない、と言っていたし、彼自身が積極的に社交界に出る人間じゃないので、今ほどガチガチに学ぶ必要はないだろうが、わたしの精神安定のために教えておいてほしい。今後、また、こうしてパーティーに出席する可能性があるかもしれないのだから。
それは後で頼みこむとして、今はフィッティングである。
この一か月半強、ずっとコルセットをしてきたからか、ある程度は慣れてきた。とはいえ、それは我慢できるようになった、というレベルであり、パーティー終了後は絶対にコルセット外すぞ、という強い意志がある。ウエストラインが綺麗になるのはいいが、普段からドレスを着るわけでもないし。
しかし――。
「お似合いですよ!」
仕立て屋さんにそう言われてに着させてもらったドレスは、なんというか、予想よりもディルミックの瞳カラーに仕上がっていた。
義叔母様は淡い色が流行だと言っていたし、ディルミックの目は紫とはいえかなり深い色なので、そこまで概念ドレスみたいにはならないだろうと思っていたのだが。
確かに、淡い紫が基調ではあるのだが、袖やスカート裾の部分が、下に行くに連れて、濃い物へとグラデーションがかかっていて、端の方なんかはディルミックの瞳色そのものである。
アクセサリーに使われている宝石は黄色と言うか、金色と言うか、そのあたりの色なのだが、ディルミックの髪色に非常に近い。確かに、紫のドレスに合う宝石の色なんて分からないから、いい感じにしてくれとは言ったけど。
もはやこれは避けようのない、ディルミック概念ドレスである。
不幸中の幸いなのは、多分第三者は分からないだろうということだ。普段仮面付けているし、よっぽど覗き込んで凝視しないかぎり、ディルミックの瞳の色なんて分かるまい。髪の毛はともかくとして。
まあ、本人は絶対気が付くだろうがな!
「いいのではないかしら、お似合いよ」
最終フィッティングに同席した義叔母様が、わたしのドレス姿を見て言う。あんたなんかにはこの程度がお似合いよ! みたいな言いぐさではなく、本当に似合っていると思ってくれているような声音だ。
大体、「悪くないわ」としか褒めてくれない義叔母様にしては珍しい。
ということは、本当にこれで問題ないのだろう。
「ディルミックを呼んできましょう」
「――え、あ、いえ!」
わたしは思わず彼女を止めていた。
「と、当日のお楽しみと、いうことで……」
こんなモロ概念コーデを見せて、あと一週間、どんな顔をして彼と過ごせばいいのか。いやまあ、最終的には見せないといけないわけだけども。
――が。
「あの子もあの子で、長らく社交界に出ていないはずだし、エスコートをしなければならないのは今回が初めてのはずです。少し慣らしておくべきだわ」
そう言って、義叔母様は仕立て屋さんと共にわたしに着替えをさせていたミルリに、ディルミックを呼ぶよう命じていた。
無慈悲であるが、やはり彼女の言うことは正論であり、わたしは感情論しか持ち合わせていないため、従うしかないのであった。
パーティーはもう来週にまで迫っていて、この期間は本当にあっという間だった。
最初のうちは、平民だからと分からないことだらけで大変だったが、後半になってくると、覚えても覚えても次の作法を教えられるので、「これで付け焼き刃って、本当に大丈夫なのか……?」と不安になってきた。前半は肉体的にしんどかったが、後半は精神的につらい。
義叔母様には本当にお世話になった。今後は文字を教わるのがメインになるだろうが、まだまだ作法を教えてほしい気持ちがある。
ディルミックはわたしに貴族としての働きを期待していない、と言っていたし、彼自身が積極的に社交界に出る人間じゃないので、今ほどガチガチに学ぶ必要はないだろうが、わたしの精神安定のために教えておいてほしい。今後、また、こうしてパーティーに出席する可能性があるかもしれないのだから。
それは後で頼みこむとして、今はフィッティングである。
この一か月半強、ずっとコルセットをしてきたからか、ある程度は慣れてきた。とはいえ、それは我慢できるようになった、というレベルであり、パーティー終了後は絶対にコルセット外すぞ、という強い意志がある。ウエストラインが綺麗になるのはいいが、普段からドレスを着るわけでもないし。
しかし――。
「お似合いですよ!」
仕立て屋さんにそう言われてに着させてもらったドレスは、なんというか、予想よりもディルミックの瞳カラーに仕上がっていた。
義叔母様は淡い色が流行だと言っていたし、ディルミックの目は紫とはいえかなり深い色なので、そこまで概念ドレスみたいにはならないだろうと思っていたのだが。
確かに、淡い紫が基調ではあるのだが、袖やスカート裾の部分が、下に行くに連れて、濃い物へとグラデーションがかかっていて、端の方なんかはディルミックの瞳色そのものである。
アクセサリーに使われている宝石は黄色と言うか、金色と言うか、そのあたりの色なのだが、ディルミックの髪色に非常に近い。確かに、紫のドレスに合う宝石の色なんて分からないから、いい感じにしてくれとは言ったけど。
もはやこれは避けようのない、ディルミック概念ドレスである。
不幸中の幸いなのは、多分第三者は分からないだろうということだ。普段仮面付けているし、よっぽど覗き込んで凝視しないかぎり、ディルミックの瞳の色なんて分かるまい。髪の毛はともかくとして。
まあ、本人は絶対気が付くだろうがな!
「いいのではないかしら、お似合いよ」
最終フィッティングに同席した義叔母様が、わたしのドレス姿を見て言う。あんたなんかにはこの程度がお似合いよ! みたいな言いぐさではなく、本当に似合っていると思ってくれているような声音だ。
大体、「悪くないわ」としか褒めてくれない義叔母様にしては珍しい。
ということは、本当にこれで問題ないのだろう。
「ディルミックを呼んできましょう」
「――え、あ、いえ!」
わたしは思わず彼女を止めていた。
「と、当日のお楽しみと、いうことで……」
こんなモロ概念コーデを見せて、あと一週間、どんな顔をして彼と過ごせばいいのか。いやまあ、最終的には見せないといけないわけだけども。
――が。
「あの子もあの子で、長らく社交界に出ていないはずだし、エスコートをしなければならないのは今回が初めてのはずです。少し慣らしておくべきだわ」
そう言って、義叔母様は仕立て屋さんと共にわたしに着替えをさせていたミルリに、ディルミックを呼ぶよう命じていた。
無慈悲であるが、やはり彼女の言うことは正論であり、わたしは感情論しか持ち合わせていないため、従うしかないのであった。
「転生守銭奴女と卑屈貴族男の結婚事情」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
-
1,391
-
1,159
-
-
3万
-
4.9万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
5,217
-
2.6万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
8,191
-
5.5万
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
450
-
727
-
-
2.1万
-
7万
-
-
89
-
139
-
-
6,681
-
2.9万
-
-
218
-
165
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
614
-
221
-
-
2,534
-
6,825
-
-
62
-
89
-
-
183
-
157
-
-
1,000
-
1,512
-
-
614
-
1,144
-
-
398
-
3,087
-
-
62
-
89
-
-
71
-
63
-
-
6,237
-
3.1万
-
-
33
-
48
-
-
14
-
8
-
-
215
-
969
-
-
6,199
-
2.6万
-
-
104
-
158
-
-
116
-
17
-
-
27
-
2
コメント