転生守銭奴女と卑屈貴族男の結婚事情
44
ぐううぅぅ……。
ン間抜けなその音が寝室に響いたとき、わたしは、やっちまったなあ、と思いながら顔を覆った。
コルセットをするようになって数日が経った。コルセットをしているおかげか、義叔母様に姿勢を注意される回数が減ったが、いかんせん、お腹いっぱい食べることが出来なくなってしまった。いつもの半分くらい食べると、辛くなってくるのである。苦しいのは元々なのだが。
ダイエットにいいかも、なんて思ったのは初日、二日目くらいまでで、それ以降はずっと腹が満たされなくて、いつ腹が鳴るのかひやひやしていた。
そして今、最悪のタイミングで鳴ってしまったのである。
なにも、義叔母様が来てから、久々の営みのときに、鳴らなくてもいいじゃないか!
顔を覆った手の、指の隙間から、ちらと覗けば、きょとんとした顔のディルミックが見えた。畜生、いっそ笑ってくれ。
「……何か食べるか?」
体を起こしながらディルミックが言う。
「い、いや、だいじょう――」
きゅるるる……。
またお腹が鳴る。
悲しいかな、説得力が全然ない。
コルセットをしているときは、お腹が締め付けられているので、お腹が空いたな、と思っても、我慢できる程だったのだが、コルセットから解放されるお風呂上りから就寝までの間は、どうにも空腹感に気を取られる。
「無理をしなくていい。ベルトーニらはもう帰っているだろうが、待機している使用人はいる。簡単なものなら出してくれる」
そう言って、ディルミックはベッド近くの壁に取り付けられた紐を引っ張る。多分あれ、使用人室に繋がってるんだろうな……。
申し訳なさに、わたしは顔を見せられない。完全にそういう雰囲気でなくなってしまった。
わたしが両手で顔を覆い、固まっている間にも、使用人が来る。ディルミックは扉越しに、「何か軽食を」と言っていた。
使用人の返事を聞き、ディルミックは立ち上がる。
「どこへ?」
「仮面を取りに部屋へ行ってくる」
そう言えば、寝室に来るときにはもう仮面を外しているのか。ちら、とベッドサイドのテーブルを見ても、そこにはランプがあるだけだった。
「わたしが取りに出ますよ。わたしが食べるんですから」
「……その姿の君を出すわけにはいかない」
言われてから、自分の格好に気が付く。今日は初夜のときにも着た、ちょっと気合の入った方の寝巻である。
「……お願いします」
確かにこの姿では出られない。無理だ。
わたしはおとなしくディルミックの言うことを聞くことにした。
バタン、と扉が閉まり、ディルミックが出て行ったのを確認し、わたしは一人、羞恥にまみれながらベッドの上で足をばたつかせたのだった。
ン間抜けなその音が寝室に響いたとき、わたしは、やっちまったなあ、と思いながら顔を覆った。
コルセットをするようになって数日が経った。コルセットをしているおかげか、義叔母様に姿勢を注意される回数が減ったが、いかんせん、お腹いっぱい食べることが出来なくなってしまった。いつもの半分くらい食べると、辛くなってくるのである。苦しいのは元々なのだが。
ダイエットにいいかも、なんて思ったのは初日、二日目くらいまでで、それ以降はずっと腹が満たされなくて、いつ腹が鳴るのかひやひやしていた。
そして今、最悪のタイミングで鳴ってしまったのである。
なにも、義叔母様が来てから、久々の営みのときに、鳴らなくてもいいじゃないか!
顔を覆った手の、指の隙間から、ちらと覗けば、きょとんとした顔のディルミックが見えた。畜生、いっそ笑ってくれ。
「……何か食べるか?」
体を起こしながらディルミックが言う。
「い、いや、だいじょう――」
きゅるるる……。
またお腹が鳴る。
悲しいかな、説得力が全然ない。
コルセットをしているときは、お腹が締め付けられているので、お腹が空いたな、と思っても、我慢できる程だったのだが、コルセットから解放されるお風呂上りから就寝までの間は、どうにも空腹感に気を取られる。
「無理をしなくていい。ベルトーニらはもう帰っているだろうが、待機している使用人はいる。簡単なものなら出してくれる」
そう言って、ディルミックはベッド近くの壁に取り付けられた紐を引っ張る。多分あれ、使用人室に繋がってるんだろうな……。
申し訳なさに、わたしは顔を見せられない。完全にそういう雰囲気でなくなってしまった。
わたしが両手で顔を覆い、固まっている間にも、使用人が来る。ディルミックは扉越しに、「何か軽食を」と言っていた。
使用人の返事を聞き、ディルミックは立ち上がる。
「どこへ?」
「仮面を取りに部屋へ行ってくる」
そう言えば、寝室に来るときにはもう仮面を外しているのか。ちら、とベッドサイドのテーブルを見ても、そこにはランプがあるだけだった。
「わたしが取りに出ますよ。わたしが食べるんですから」
「……その姿の君を出すわけにはいかない」
言われてから、自分の格好に気が付く。今日は初夜のときにも着た、ちょっと気合の入った方の寝巻である。
「……お願いします」
確かにこの姿では出られない。無理だ。
わたしはおとなしくディルミックの言うことを聞くことにした。
バタン、と扉が閉まり、ディルミックが出て行ったのを確認し、わたしは一人、羞恥にまみれながらベッドの上で足をばたつかせたのだった。
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