転生守銭奴女と卑屈貴族男の結婚事情

ゴルゴンゾーラ三国

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 義叔母様が来てから二日。今日はレッスンがお休みだ。
 というのも、ドレスの仕立て屋と宝飾店の人がやってきたのである。採寸とドレスのデザインの相談、付けるアクセサリーの決定を話し合うためにお休みなのである。


 わたしと一緒に義叔母様が見てくれることになった。採寸はともかくデザインや宝飾はてっきりディルミックと一緒に確認するものだと思っていたが、確かに義叔母様と一緒の方がより心強いだろう。
 仕立て屋のお姉さんにされるがまま、採寸を行う傍らで、義叔母様がドレスについて教えてくれる。


「王家の婚約パーティーですから、色は白と黒は絶対に選んではなりません。白は主役の二人しか身にまとうことを許されませんし、黒は葬儀を連想させるのでふさわしくないのです。また、今回、王子の婚約者であるアンベラ嬢は白いドレスに黄色の刺繍を入れるそうですから、黄色を選ぶのもやめなさい」


 主役と被る色と葬式の黒がNGなのは、この世界でも一緒なのか。成程。


「また、今は薄い色合いのものが流行ですから、その辺りで色を選びましょう。ロディナさん、好きな色は?」


 好きな色……。そう言われてパッと思いつく色はあまりない。色とかを意識して生活していないのである。
 この色が好きだから、選べるときにはこの色を選ぶ! みたいなものはない。
 ああでも……。


「紫、は好きかも……しれないです」


 少し考えて思い浮かんだのは、ディルミックに送るために買った便箋である。あの紫は濃い方で、薄い紫ではないのだが。


「紫……。まあ、いいわ。主流は赤や青、緑あたりではあるけれど、紫もそう珍しい色ではないでしょう」


 義叔母様の許可が出たので、紫色をベースにコーディネートすることが決まった。
 義叔母様いわく、貴族のドレスとは、余り奇抜にならず流行を抑えながらも、他とは違うデザインを見せつけるのがいいのだという。刺繍とかレースとかで差を付けるらしい。
 だから余り突飛すぎない赤や青、緑や黄色、と言った無難な色が好まれるのだとか。まあ、今回は黄色は使えないわけだが。


 デザインもしっかり流行に沿ったものにすることになった。今はフリルが抑えめで、首までかっちりと、露出を下げたものが流行らしい。ただ、袖は七分丈くらいで、手袋を付けるのだとか。
 少し前までは首回りや背中を露出させ、派手なネックレスを見せつけるのが主流だったらしいが。
 背中がガッツリ開いているドレスとか、落ち着かないので、露出が少ないドレスが流行ってくれていてよかった。


「ああ、それと。髪はこのまま伸ばしなさい。ネックレスを目立たせられない代わりに、髪飾りを派手にするのよ。長い方がいろいろアレンジができるでしょう?」


 今は肩甲骨辺りまでしかないが、二か月半あればもう少し伸びるだろう。本気で綺麗に伸ばしたかったら、少し毛先を切って丁寧に少しづつ伸ばした方がいいのだろうが。
 本当はショートカットの方が楽なのでばっさり切りたいところなのだが、義叔母様がそういうのなら我慢である。


 あれやこれや教えてもらいながらドレスや装飾品を決める。わたしはどんなものがいいか分からないから、義叔母様の言うことをそのまま受け入れるつもりだったので、二、三時間もあれば終わるだろう、と思っていたのだが、あれやこれや貴族の流行を教えてもらいながら選んでいったので、結局、ほぼ一日使ってしまうこととなった。
 レッスン、今日休みでよかったわ……。

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