転生守銭奴女と卑屈貴族男の結婚事情

ゴルゴンゾーラ三国

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 カノルーヴァ領の中で最も都会だという主要都市、カノルヴァーレにわたしたちは来ていた。
 ミルリ曰く、これでもグラベイン王国の中では都会と言うわけではなく、かといって田舎というほどでもない、中間層の街らしい。
 マルルセーヌの田舎村で過ごしてきたわたしからしたら、道が煉瓦でしっかり舗装されているだけで十分都会である。わたしの村なんて道らしい道もなく家がぽつぽつあるだけの村で、周辺の『町』と呼ばれている村でも、道はあったけれど普通に土だった。
 あれはあれでファンタジー感あって、嫌いじゃないけど。


 わたしと一緒に来てくれたのは、ミルリと護衛のハンベルさんである。
 ハンベルさんは灰色の髪をもつ、グラベイン人らしい褐色肌の人だ。わたしからしたらそこそこイケメンに見えるけど、こっちだとちょいブサくらいになるんだろうか。
 ミルリの言動を見るに、そこまで嫌われていないようだけれど。目を引くようなイケメンじゃないということは、差別されるほどの不細工でもないということか。あれ、なんかこの言い方、どっちにしろ失礼な気がする。


 わたしの少し後ろをミルリが歩き、さらにその後ろにハンベルさんが歩く。護衛と言えど、ぴったりくっつくことはないようだ。まあ、そんなことされたら買い物しにくいし、これでちょうどいい。
 特にこれと言って目的もなく歩き、メインストリートに並ぶ屋台を覗いて、ウインドウショッピングを楽しむ。
 日本の様に電柱が乱立しているわけではないが、ある程度は近代的だ。
 いや、それはいいんだけど。


「ミルリ……この街、階段多くない?」


 あっちにも階段、こっちにも階段、である。
 メインストリートと思われる道は平たんで、屋台なんかも並んでいるのだが、逆に、店舗としてのお店屋さんは階段を上らないと入ることが出来ない。
 階段があって、店があり、また別の階段があって、踊り場があって、店があったり別の階段に繋がったり……と、メインストリートなら一本道で迷う心配も可能性もないが、一度階段を上って店を探索してしまえば迷子になりそうだ。
 ていうか単純に、これだけ階段があったら息が上がりそうである。


「確かに……言われてみればそうかもしれません。わたくしは生まれがカノルヴァーレですので、これが当たり前でしたが」


 この街出身か……体力付きそうだなあ。あと、老後に足腰や膝が弱ってきたらしんどそうな街だ。


「よろしければ、奥様が行きたい店を教えていただいても? ご案内します」


 うーん、探索を兼ねているから、自分であれこれ見て見たかったけれど、メインストリート以外はミルリに案内を頼んだ方がよさそうだ。こんなの、どこにいってどこに行ってないか分からなくなって、現在地の把握すらできなくなりそうだ。
 わたしはミルリに頼み、ボードゲームかカードゲーム、とにかく暇つぶしになりそうなものが売っている雑貨屋への案内を頼んだ。

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