童貞のまま異世界転生したら童帝になってました

みょんちー

(35) 救世主_参上



〜チャルエ  通り道付近〜

脇腹を押えながらただひたすら逃げていくガルド。
その後ろからは網目状の衝撃波が迫ってきている。
横に逃げようも飛んで避けようも、範囲が広い為避け切ることは出来ない。

「体力がもう持たん……!全力で前に出て避けるか……!」

思い切り前に走って左右どちらかに避ける方法。
前に出て横に移動する為、当たる心配がない。
それを決行するためには体力が十分に必要だが、息を切らしているガルドにそんな難題はほとんど不可能だ。

空からガルドの様子を見るカイルは、煽り言葉を叫びながら嘲笑っていた。

「あはははは!!!!逃げても無駄よ!!」
「無駄ぁ?……無駄ってのは自分で切り開くもんじゃっ!!」

無理難題の状況を突破しようと勢いよく地面を蹴り、衝撃波から数百メートル引き離す。
キリのいいところで右に方向転換し、息を切らしながらもただひたすら真っ直ぐ走った。

どんどん近づいてくる衝撃波と、脇腹の血が止まらず永遠に出てくるのを抑えるガルド。

煽られた事と、無理な状態で走ったのがバチとして当たったのか……ガルドの足は遅くなりつつあった。
衝撃波から避けれる位置まで、おおよそ20m程であるがそこまで届かない。

もう身体が動かないのだ。

「はぁ、はぁ……」
「あらぁ〜?もうバテてるようね!!」

空から笑い声を上げ完全に下に見ているカイル。
ガルドの状況は大きく劣勢に傾く。
目がかすみ、口から鉄の味がし始めた頃には膝が地に着いていた。

走馬灯が走る。
今まで旅をしてきた思い出、大切な仲間。
全て脳内に込み上げてくる。

カイルは勝ちを確信した為、地上に着地しチャルエに戻っていく。
コケにしていた女を殺せて心がすっきりしていた。

「さて、次はエテルナの方に向かおうかしら」
「……ワシは……」

横を見ると衝撃波がガルドの真横まで到達していた。
目の前が青白い光に包まれていた。
それがガルドの最後の光景……

かに思えた。

「消去魔法!!!!」
「!?」

衝撃波がその場で止まり、破裂音とともに消えた。
カイルはすぐに破裂した音の方を振り向き、目を凝らした。
聞き覚えのある声、身に覚えのある姿。
ガルドはそれを見て、霞んでいた目の色を取り戻していく。

「ヌシ……らは……!!」
「ごめんガルドちゃん!!遅刻、しちゃった!!」
「もう大丈夫ですよ、ガルドさん!!」

完璧に治癒されていたゾエラとマーチがいた。

「何?貴方達……」
「この子の仲間、もう手は出させないよ」

ゾエラが構え、カイルの攻撃を待った。
その間にマーチがガルドの近くまで近寄り、回復魔法を当てながら状況を説明した。

「フルトロンに逃げてきたチャルエの住民から状況を聞きました。タケルさん達がここに来て戦ってるってのを聞いて……」
「ヌシら……後2〜3日と聞いたんじゃが……」
「師匠がタケルさん達が行った後に、ずっと治癒魔法を当ててくれてたんです。私達の力になりたいって、二人が授けてくれた言葉で」

そこでガルドはウィドウに言った言葉を思い出す。
フッと鼻で笑い、マーチに向けて叫ぶガルド。

「ヌシらそんだけ遅れてきて!延滞料金の一銭もなしか!!!」
「ご、ごめんなさい!!」
「まぁ良い……回復魔法で全てチャラじゃ」

脇腹から出ていた出血も全て回復し、傷も全て塞がった。
スクッと立ち上がり、カイルの方を向いてニヤリと笑う。
構えていたゾエラも立ち上がったガルドを見て、安心した顔で見た。

「おかえり、ガルドちゃん」
「遅刻した奴に言われとぉない台詞ナンバーワンじゃ」

ガルドとゾエラが立っている光景にカイルは驚いていた。
衝撃波の消滅、仲間の集結、そしてガルドの復活。
圧倒的に不利な状況で、後退りするしかできなかった。

「四天王は油断が多いのう」
「よく言うわね……貴方も復活したからってそっちが優勢と思ったら……!!」

その瞬間、カイルの視界からガルドが消えた。
消えたとわかった瞬間、腹部が殴られる感覚を味わった。
遅れて音が聞こえ、カイルは数十メートル吹っ飛んだ。

「それを油断と言うんじゃ」
「がっ……あぁ!!」

みぞおちに入った為息が出来ないカイル。
容赦無いガルドは拳を握り、カイルの次の言葉を待つ。
ジリジリと近づき、血の痰をペッと地面に吐く。

「エルザルの住民に比べれば、今の痛みは肩を叩かれた程度じゃ」
「がっはぁ……!!何を……!」
「ヌシを今から四天王から手下に引きずり下ろしてやる」

拳を握り、憤怒を静かに露わにする。

「ゾエラ、マーチ。チャルエに入ってタケルの元に行け」
「え、でも……!」
「大丈夫じゃ、ここはワシがやる」

カイルは立ち上がり、息を整える。
ガルドは立ち上がったカイルを見て近づいていく。

「ヌシ、ワシを殺したいんじゃろぅ?ワシの心臓はここにあるぞ」
「舐めるな……このクソ……!!!!!」
「ガルドちゃん!!」

カイルは拳を握り、ガルドの顔面に殴りを入れた。
だが食らったガルドは微動だにせず、殴ってきた腕を右手で掴む。
掴まれたカイルは引きはがそうとするも、ボルザーク族の握力は伊達では無い。

「くっ……!!」
「行け!!ヌシら!!」

聞いた二人は頷いてチャルエに向かった。
腕を右に動かしながら、カイルの焦っている顔を見る。
ガルドはそんな顔をされても慈悲などなかった。

「パワーはフーガの方が強いんじゃが……思っている心情の重さはワシの方が強い。もう覚悟は決まったか?」
「……ふふ」
「!?」

カイルは空いている左手を後ろに回し、個体を作る。
小さな個体が体につき、カイルはニヤリと笑った。

「分が悪いから逃げさせてもらうわ……!!」
「待て、まさか……!?」
「type:20」
「ヌシ!!」

聞き覚えのある言葉を聞いて、ガルドはハッと気付く。
気付いて片方の手でカイルの襟を掴もうとするも、もう遅かった。
目の前が光で包まれ、明けた時にはカイルはもうそこにいなかった。

「逃がしたか……まぁよい、チャルエに戻ってゾエラ達と合流じゃ」

チャルエに向かって走っていくガルドが、城に目を向けると崩れ落ちていく様子が見えた。



〜チャルエ 戦闘城 城内〜

「フーガ!レミィ!」
「タケル!兄貴!」

城内で待機していたフーガとレミィは、タケル達の安否を心配していた。
タケルは無事だがオウガが危ない状態だった。
右腕と左脚が無い状態で、もし敵がまた来た場合狙われるのはオウガだと察知したタケル。

「オウガがあぶねぇ、こっからなんか騒ぎが起きれば」
「タケル!!」

レミィがタケルの呼ぶ声を聞き、後ろを向くと倒れていたアグアナがぬるりと立ち上がる。
地鳴りが発生し、目が赤くなっているアグアナ。
今までのお色気は全て無くなっていたような感じがした。

「なにが……!?」
「ふふ……ふははああはははははああああははっはは!」

不気味な笑い声が聞こえたと思ったら、心臓の音がドックンと城内に響き渡る。
タケル達は今の心臓音を聞いた瞬間、背景が青色に変わっていくのが見えた。
城が崩れていく、ここに長時間居るのは危険だ。

だけど気にするのはそっちでは無い、目の前の悪魔だ。

「領域……!?」
「タケル!なんだこれは!」
「くそっ、めんどくせぇもんが帰ってきたか」

いつもと様子が違う。
そして考えられるのは一つ。
屋上に向かっている最中に誰かがアグアナに力を与えたんだとタケルは固唾を飲む。

「あははああはははははうふはあはあは!!!!まおうさまのちからぁ……さいっこうぁぁぁぅぅ!!!!!」

ビンゴ・・・……

アグアナに力を与えたまでは想像出来た……が。
人物に関しては想像もしていなかった。

魔王

そいつがアグアナに力を与えた人物だ。

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