童貞のまま異世界転生したら童帝になってました
(34)最強力_解放
〜チャルエ 戦闘城 屋上〜
ぼそっと呟いたオウガはゆっくりと立ち上がる。
その姿、威圧はエテルナさえも怯えてしまうほどだ。
最強族のボルザーク族の限定解除。
新人戦の時にガルドが発動した時と同様、一定期間限定的な力を得れる解放能力。
「俺にこれを解放させたなぁ!!!」
「やっぱり嫌いだ、この族は……!!」
壊死して無くなった部位が一時的に再生する。
限定解除が切れた瞬間、再生部位は消えるが延命する為には必須だとオウガは覚悟を決めて発動した。
「type:08!!」
「うらぁ!!!」
個体から針が無数にオウガに飛んでくる。
オウガは蹴る素振りを見せ、衝撃波を出し針を吹き飛ばした。
エテルナは吹き飛ばされた針を避けながらオウガに近づいていく。
「type:01!!」
「遅せぇよ……!」
エテルナは個体を腕に纏わせオウガの腹に当てようとするが、速さが段違いの為かすりもしない。
それどころか、カウンターでエテルナの腹を殴り飛ばしていた。
数十メートル飛ばされるエテルナ。姿勢を変えオウガを探すがどこにも見当たらない。
「どこにもいない!?……type:04!」
周りにバリアを張り、何処からでも来ていいように待ち構える。
どこに来るか、どこから来るか、音沙汰もなにもない。
不安と緊張、恐怖が全て込み上げてくる。
状況はエテルナが若干劣勢……ここからどう巻き返すか。
「お前は油断が多いな」
「!?」
「格の違いはここではっきりしたぜ、お前も凡人なんだな」
エテルナの後ろから声が聞こえてきた。
確認不足?いいや違う。オウガはバリアを張る前に入り込んでいたのだ。
エテルナが振り向いた瞬間にオウガは頬をぶん殴った。
個体もバリアも連動して弾け飛ぶ。
こいつの体力によって個体の耐久値も弱まるのか……?
だったらこいつをぶっ飛ばせば話は早そうだ……!!
オウガは飛ばされるエテルナに向かって走っていく。
拳を握り腹部を狙って腰を入れる。
エテルナが足を着き姿勢を正した瞬間、拳を前に出した。
「家に帰って……おねんねしやがれ!!!」
「type:04……!!」
バリアを張ったと同時に割れる音が鳴り響く。
拳はまだ腹部を狙って動いている。
オウガの全知全強と限定解除が加わった拳は誰も受けきれない。
勝ったと思ったその瞬間だった。
「なっ!?」
「油断は貴方の方でしたね……」
限定解除が切れた。
ガクッと体が落ちる。
後一歩という時に切れてしまったのだ。
「さて……決着はついたと言ってもいいでしょうか?」
「あーあ、ほんとドジだなぁ……俺って」
個体が出現し青く輝き始める。
オウガに向かって放とうとしたその時、数メートル先の扉から音が聞こえた。
「はぁ、はぁ、セーフ!!」
汗をかきながら手を膝について息を切らしているタケルがいた。
オウガもエテルナもタケルがそこにいるのを驚いていた。
危険と思ったエテルナは青色の個体をタケルに向ける。
「アグアナはどうしたんですか?」
「殴り飛ばしてやったよ。そんで村長は今雑魚共をぶっ飛ばしたフーガとレミィにお渡し済みだ」
エテルナに向かって歩いていくタケル。
ジリジリと向かってくるタケルに対し、エテルナは後退りしていた。
「城の上でドンドンうるせぇから来てみたらオウガの方だったか」
「貴方は一体……何者……!?」
エテルナはタケルの根性に驚きを隠せず、思わず心の声が漏れてしまった。
それを聞いたタケルは指の骨を鳴らしながら返答する。
「童貞」
「は……!?」
エテルナは理解不能な返答に困って硬直してしまった。
それがタケルにとって好都合であった。
拳を握ってエテルナに向かって走っていく。
童貞……?なんですかそれは!?何かの能力、いや種族!?だとしたら完璧に情報を理解しないとこの男と戦えない!何か策は……!!!
「どうした、話聞こうか?」
「しまっ」
エテルナの腹部を殴り、吹き飛ばす。
油断していた為能力を発動していなく、バリアも張っていない。
オウガのダメージも蓄積されており、より痛みが走った。
「あり?こんなあっさり倒せるもんか、四天王って」
「がはっ……!!」
膝を着き呼吸を整えるエテルナ。
だがそれをタケルは許すわけがない。
「どうしたシスコン野郎。悩みは初めてか?」
「この……!!」
個体がタケルの後ろに回り、光り輝く。
タケルはそれに気づいていない。エテルナの不審な動きを待っていたのだ。
つまりエテルナに気を取られ個体の存在を知らない。
「type:08……!!」
「オウガ」
タケルの後ろで個体が弾け飛んだ。オウガが仰向けの状態になり片足で蹴っていた。
後ろで爆発音が鳴りタケルはびっくりしていた。
当然だ。タケルは今個体があることを知ったのだから。
「は、はぁ!もうびびったぞおい!!」
「俺の名前言ってただろうが!」
「違ぇよこいつの能力はなんなのか聞こうとしてたんだよ!!」
オウガ、こいつの能力はなんだ?と聞こうとした途中でエテルナが能力を発動した為、偶然……いや奇跡的にタケルが助かったのである。
タケルとオウガが言い合いをしている時、エテルナは立ち上がり小さな個体を作り出す。
「……」
「っ!タケル!」
「んぁ?」
その個体を自身の体につけ、城の屋上から飛び降りる。
その行動にタケルは驚いていた。
ここから地面までおおよそ30m程。生身の体で飛び降りたら死ぬレベルの高さだ。
そんな状況でエテルナは笑っていたのだ。
「逃げるも戦法……また会いましょう、童貞」
「おい!!」
やっとタケルも我を取り戻し、落ちていくエテルナを見ていた。
すると、彼女は光りだしパッと消えてしまった。
消えた瞬間……その場は静寂に包まれた。
「勝ったのか……?」
「逃げたんだよ。戦いでは勝ったが勝負では引き分けだ」
「……オウガ、お前その体動けるか?」
「肩を貸してくれ、そんでそのままフーガとレミィに引き渡してほしい」
〜チャルエ付近  通り道〜
「type:09!!」
「その技はもう効かんと言っとるじゃろう……!!」
ワープされてからすぐに戦闘を始めた二人。
状況はお互い引き分け状態。劣勢も優勢でも無い。
チャルエに入る為の通り道で戦闘を行っている為、周りの装飾や道がボロボロになっていた。
カイルは個体からブロックを生成し、道にばらまく。
ブロック自体何も無いが、人が通った瞬間感知し爆発を起こす厄介な物だ。
だがガルドも馬鹿では無い。一度食らって仕組みを知った為対処法は知っている状態だ。
「ヌシの負けじゃ……!!」
「本当にそう言えるかしらぁ……!?」
こめかみの血管が常に浮き出ているカイル。避けられることに腹を立てたのかブロックに小細工を仕掛けていた。
複数の木を利用し、感知を避けながらカイルに近づくガルド。
「extend.type:08……!!」
「!?」
ブロックは感知式爆弾から、感知せずに針が出てくるブロックに変わった。
無数の針がガルドに向かって飛んでくる。
脇腹や右手等に刺さり、木にもたれ呼吸と整える。
「負けはどっちかしら?」
「こすい女じゃのう。ヌシは……」
「言ってなさい……殺す為なら何でもするわよ。type:07」
ピンク色の個体が網目状に変化する。
ダリアに放った時の物と一緒だ。
ガルドは針を抜き、右に走っていく。
だがカイルは逃がすまいと右の方向に向き、個体を放った。
「さようなら。負け犬さん……!」
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