童貞のまま異世界転生したら童帝になってました

みょんちー

(25)負傷者_救出



「マーチ!!!」

斬られた手首からドクドク血が出て止まらない。
とりあえず着ていた服の袖部分を破り止血した。
処置の方法はこれで合っているのかはわからないが、今助ける方法は血を止めることだと思っている。

「……次はゾエラだ……!」

すぐにゾエラの方に向かって声をかける。
マーチとは違い損傷部分は斬られていない為か、意識は微かに残っていた。

「タケ……ル君……」
「ゾエラ!しっかりしろ!」

どうすることも……できないのか……!?
タケルは右手を見て自分の弱さが憎かった。
特定の相手に対して効果を発揮するこの理不尽な能力に苛立ちを覚えた。

「……ゾエラ……マーチ!」
マーチ……俺はあんたの面倒を頼まれてるんだよ!!
ゾエラ……俺はあんたの一番の相棒なんだよ!!

頼む、死なないでくれ……!!
俺は精一杯自分が出来る手当てを行った。
心臓マッサージ、声掛けや止血。
死ぬな、死ぬなと願うタケル。

「タケルくん……ごめんね……」

マーチの止血作業をしている時、ゾエラからかすかに謝罪が聞こえた。
ハッと気づいた時にはゾエラの目が閉じていた。

「……ゾ……ゾエラ?」

すぐに駆け寄り、呼吸が浅くなっているのを確認した。
気絶していたのがすぐにわかった。マーチも今気絶しているからだ。

「…クソッ!!」

マーチのそばにあった杖を持ち、何か魔法が出ないか試した。
テンパって振ったり回したりしたが何も起こらない。
魔法使いじゃなかったら発動しないのか…?

「ダメだ……。守れなかったのか……俺は!!」

杖をカランっと落とし、膝から崩れ落ちる。
頭がボーっとする。考えてもどうにもならないからだ。
俺は大切な仲間2人を守れなかった。
このまま助けれずに死んじまうのか……?こいつらは……。

「タケル……さん?」

タケルは声に気づき呼ばれた方向に顔を上げる。
そこには水晶玉を持った女性が立っていた。
そう、ラエンの姿だった。

「ラ……ラエンさん……!?」
「ど、どうしたんですか……?この有様……」

いつも通りの口癖がなかった為相当混乱してるようだ。

「頼むラエン……この2人を助けてくれ……」

ラエンはその言葉を聞き、すぐさま回復魔法をかけた。


〜5分後〜

ゾエラとマーチは近くの木に目を瞑りながらもたれかかっている。
ゾエラの内臓破裂も治し、マーチの手首もくっつけて治した。勿論外傷も全て完治。
あとは起きるのを待つだけだ。

「ラエンさん……本当に助かったよ」
「ファステルを以前助けてくれたお礼ですよ……フフ」
「ラエンさんはどうしてここに?」
「エルザルの未来を見に来たんですよ……私の能力は存在する物・・・・・でしたら何でも見れますからね……フフ」

ラエン曰く、エルザルの今後を見に来たらしい。
だが今エルザルに向かうのは危険だ。見るからに戦闘経験もなさそうな占い師が、1人で向かうような場所じゃない。

「まだ突っ込むつもりですか……?」
「いいえ。ここでわかりますよ……フフ」

そう言うと水晶玉が光り出す。
水晶玉には何も写っていないのも当然、ラエン本人にしか見えないからだ。

「……成程」

目を見開き小声で呟く。
言動からして何かが分かったらしい。

「……な、何か出たのか?」
「タケルさん。今日は行かないことをおすすめします」

ラエンはこっちを見て警告を送ってきた。
その目は本気で訴えてくる目だった。

「以前ファステルに攻めてきた配下が来ます。その状態で対面するのは危険ですよ……フフ」

確かに2人が起きていない状態で突っ込んだら死ぬのは確定だ。
光男に負けている時点でタケル達はまだまだ素人だ。

「後、パーティメンバーのガルドさんも到着しますね」
「いつ来るんだ?」
「20分ほどで来ますね……フフ」

エルザルを退避して鍛え直すのが正解か……?
タケルは座り込んでひたすら考える。

「ガルドさんを待ってエルザルに突っ込むか……フルトロンに一時帰還するかは任せます……どちらにせよ配下は来ますよ……フフ」

ラエンも座り込みタケルに提案をしてきた。
今の強さで配下に立ち向かっても負けることはほぼ100%。仮に俺の能力が通用するとしても……だ。

前ファステルで配下とガルドが戦っていた時の配下の姿
を思い出す。
小さくて姉妹のような感じだった。あの小ささで…俺の対象内に入っているのかがまず怪しい……。
通用する確率はほぼ0%だ。そう考えると今は撤退した方が身のためだ。

「そうだな……。ラエンさん、ありがとう」

俺は立ち上がり、ラエンに感謝の言葉を伝えた。

「俺達、一回フルトロンに戻るよ。今のままじゃ確実に負けるからな……鍛え直すよ」

ラエンはその言葉を聞くと胸を撫で下ろす。

「賢明な判断です……フフ」

ラエンも立ち上がり、タケルに手を振りその場を後にした。

「……さて、起きるのを待つか」



〜エルザル付近の森〜

「……っつぁ……

森の中で足を引きずりながらザッザッと歩く男がいた。

「なんやねんあいつの能力……せこ過ぎやろ……!」

愚痴を吐きながら魔王城に戻っている。

「……ねえ」

男は後ろの木にいた2人の女に声をかけられる。

「……へぇ、あんたらからお出迎えかいな」
「貴方、そんなに弱かったかしら?四天王でも下っ端でもない立ち位置にいた貴方が…ボロボロになって帰ってくるとはね……。"ダリア"」

コツコツとヒール音を立てながらダリアに近づいていくカイル。

「悪いなぁ……相性悪かったんや」
「……弱音を吐くなんて落ちたわね、呆れた。この前もファステルを攻めに行った時、情報になかった冒険者と出会ったわよ。どういうつもりかしら?」

ダリアはそれを聞くとフッと笑う。

「素人パーティーや……そいつら、舐めてたら死ぬで」
「貴様、カイルお姉様に無礼な口を……!」
「エテルナ、落ち着きなさい」

再びダリアの方を向くカイル。

「貴方の行動は目に余るものが多すぎるわ。敵の始末不足、能力抹消、偽りの情報…魔王様の機嫌を取り直すのも大変なのよ」

手をスっと上に構え、ピンク色の個体を出現させる。

「…冗談やろ…?」
「本気よ、情報役は又こっちで探すわ。type.07」

個体が一瞬で網目状に変化する。
ダリアは危機を察知し、体が痛む状態で走っていく。
能力を打ち消されたことで、速さも遅かった。

「さようなら」

森の中でズズン……と聞こえた。
木や地面、全てが網目状に水平移動で斬れていく。
細かく細かく……勿論……ダリアも。

「……エテルナ。エルザルに戻って再度あの女がいるか確認よ」
「はい、カイルお姉様」

指パッチンをし、網目状の個体を消す。
ヒール音の立てながら森の奥に消える姉妹だった。

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