童貞のまま異世界転生したら童帝になってました

みょんちー

(23)能力者_対決



光の能力が効かないのがわかった。
男とタケルの戦いの勝敗は目に見えている。
ゾエラとマーチも俺が能力を打ち消したことに驚いていた。
咄嗟の行動でゾエラを庇ったが、まさか俺の能力の対象内とは思いもしなかった。

「お前……なんや?なんで俺の能力打ち消しとんねん」
「さぁ、知らねぇな!!」

タケルは男に向かって走っていき、拳を構える。
だが当然男は光の速さで消え、木の上に着地した。
男の様子が少し焦っているかのように思えた。

「これまた厄介やな……先に女2人を潰すか……!」

男は光となって消え、マーチの目の前に現れた。
マーチはタイミングが悪いことに、その瞬間目を瞑っていた為気づくのが遅れてしまった。

「まずは1匹目や」
「!?」

マーチの顔面に光の速さでパンチを入れる男。
結界魔法を張る余裕もなく、マーチは殴り飛ばされた。
木にぶつかり倒しを数本続け、岩にぶつかった。

「マーチちゃん!くっ……!」
「マーチ!!」
「他人の心配よりも自分の心配した方がええんとちゃう?」

ゾエラは咄嗟に声がする方を振り向いたが遅かった。
既に腹に数発パンチを食らっていた。
ツーっと口から血を吐いたと思った瞬間、ゾエラは血の混じった嗚咽をし始めた。

「てめ……ぇ!!」

見ていられないタケルは男に向かって殴り掛かる。
当然、男は避けカウンターを入れようとする。
だが男は顔面と拳の距離が数cmの時にあることに気づき、距離を取った。

「……勘がいいな」
「よー言われるわ、それ」

こいつに殴り入れてたら恐らく腕消えてたな……。
全身に能力を無効化する能力が巡ってるせいか、迂闊に動くのはちょっと厳しいな……。
面倒臭いやつやな、女2人しばき殺して逃げるか?

「今にでもお前をしばきたいけど……負ける戦いはやらん主義や。お前のめんどい能力、上に報告するで」
「ちぃ……!」

この男の考えてることがわからない。
拳をぎゅっと握り構えるが、男は全くこっちに来ない。

「まぁその前にお前のツレ、殺すわ。止めれるもんなら止めてみぃや」
「させるかよォ!!」

男に向かって叫び走り出す。
男はニヤっとし、光で逃げると思いきや横に避けた。
体術のみで戦うのと戦闘経験がほとんどないのを察したのか、光を出すまでもないっていう目をしている。

「見てみ、お前のツレの魔法使い。鼻血出して痛そうやなぁ」

ここから30mぐらいあるのに見えるのか!?
実際マーチは鼻血を出し、意識はあるがぐったりとしている。

「ほんでそこの体術女。血ぃ吐いてしんどそうやな」

ゾエラの方は横に倒れ、息を整えていた。
どちらも瀕死状態。俺との戦闘を避けてこの2人を殺すつもりか……!?

「ここに来て10分程度でもうピンチかよ……!!」
「安心せぇ、俺が強すぎるんや」
「くそっ……!!」

攻撃を当てたいが避けられる…逃げたら2人が殺される。
つまるところ、詰みというやつだ。

「……どないした?動き遅なってるで」
「てめぇが速すぎんだよ!!」

必死に当てようと追いかけるが一向に追いつかず、当たらない。泥試合というやつだ。

「タケル……さん!」

奥から微かな声が聞こえた。
紛れもなく、マーチの声だった。

「速度魔法、かけました……!それでこの人を……!!」

タケルの足が、腕が、瞬発力が全て向上した。

「マーチ……!!」

マーチの方を見て、戦える希望で満ち溢れた顔をした時だった。
マーチの右手首が光によって切断されていたのだ。
儚く飛び散る赤い液体、光に交じって美しくも思えた。

だが、美しく見えるそれも元は残酷な結果。
マーチは自分の手首を見て青ざめた。すると耳が響くような断末魔が聞こえた。

「マー……チ……?」
「うるさいから斬ったったわ。手首」

マーチの手首であろうものを地面に捨てる。
それを見た時、言葉が出なかった。
それと同時に憤怒が湧き上がる。

「言ったやろ、やっこい魔法は嫌いやねん」

俺は今まで、ここに来てこんな感情を出したことは無かった。
腹が立つ……そんな生半可な感情ではない。
怒り、憎しみ、恨みや嫉み。
そんな感情を凌駕する気分だ。

「……」

こいつを。

"ぶち殺してやる。"

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