童貞のまま異世界転生したら童帝になってました
(17)代表村_欠落
翌日
〜フルトロン 集会場〜
俺の朝はここから始まる。
起きると隣には優しそうなお姉さんが看護しており、窓から聞こえる鳥の声。包み込むような優しくやわらかい風……。
「……もう一生ここで過ごしt」
「タケルー!!!!!!!」
病室から耳が壊れるほどうるさいバカが入ってきた。
俺の朝を一瞬で地獄に変えるとはいい度胸だ……。
「大変なんじゃ!エルザルが!」
その言葉を聞いた時、ウィドウが言っていた言葉を思い出す。
『そしてその子を連れてエルザルに行って欲しいの』
マーチを連れてエルザルに行くのを伝えられていた為、エルザルに行くのが一気に不安になった。
「ガルド、マーチってやつはいるか?」
「もちろんじゃ!ヌシはとりあえずロビーに来るんじゃ!」
そう言うとガルドはすぐにロビーに戻って行った。
「……どうしたのでしょうか?」
「……あ"ーもう!病み上がり早々面倒くさそうなことが起きやがって…」
何も情報を伝えられていなさそうな看護師が出ていくガルドを見て唖然としていた。
俺は気だるそうにベッドから出ていつもの上着を着る。
「看護師さん、ありがとうございました」
そう言うと俺はまだ唖然としている看護を見てロビーに向かった。
〜集会場 ロビー〜
俺がガルドの所に向かっている途中、周りの冒険者達がザワザワとしている様子が見受けられた。
「あのエルザルだぜ……?」「まじかよ……代表村の1つが落ちたんかよ……」「ここもそのうち落ちるのかしら」
嫌な言葉がどんどん聞こえてくる。
やっぱり何かあったんだ……!!
「タケル!こっち!」
ウィドウが手を振る。俺のパーティにマーチとウィドウも一緒にいた。
「何があった……?エルザルがどうとか聞こえたが……」
ウィドウとマーチが下を向いて悔しそうにしていた。
「エルザルが潰された……死傷者500名超で犯行時間はたったの4分弱……」
ゾエラが魔王軍の恐ろしさに声が震えていた。
それぐらい、魔王の配下が脅威だった。
「……マーチの件、連れていくのはどうするんすか」
「村長も自分から死んだって聞いているし、もう行っても何も意味が無いかもしれないわね」
マーチを連れていく理由は見返す為って聞いたが……。
まぁ行ったところで見返す奴もいないしウィドウの言う通り行く意味が無いな…。
「……行きたいです」
マーチが拳を握りながら怒りを堪えていた。
ウィドウは滅多に自分から意見を言わないマーチに驚いていた。
「……行きたいです!見返す為じゃなく……配下を倒す為に……!!」
続けてマーチは力強く言葉を発する。
「……エルザルの生存者はファステルにいるわ。今エルザルには誰もいない状態。暴れるなら今が好機よ」
「待て待て!どの配下がいるかわからんでしょ!」
「ガルドが以前戦った2人組よ。覚えてるかしら」
ガルドがこの前戦った配下は全村に行き渡っている。
なのでもちろんウィドウも、誰がどの配下を倒したか理解していた。
ラエンというファステルで会った占い師の水晶玉を見ていた時、そいつらの能力は少しだが見えていた。
固体を出してそこから何かを出していた……。
「ゾエラ、俺と一緒にいただろ?あいつらの能力わかるか?」
「ごめん……詳しくは分からないけど固体を出していたのは知ってるよ」
俺たちが考えても仕方ない。戦った本人に聞くのが1番だろう。
「ガルド、お前が一番近くで戦ったんだ。覚えてるか?」
「え?知らん」
お前なにしとんねん……。
〜エルザル〜
「カイルお姉様、もうこの村に用はないはずですが。」
そこら中に転がる死体、倒壊した家の瓦礫が散乱していた。そこにカイルとエテルナが歩いていた。
「……私達をバカにしたあのすばしっこい女はいないのかしら?」
「ファステルで出会ったのでいないと思います」
「…ふん、それじゃあ次はファステルに行くわよ」
2人が歩いているとカイルの足を掴む男が這いつくばりながら訴えかけてきた。
「ま、て……お前ら…!!絶対っ……許さねえ……!」
その光景を見たエテルナが目をギンとさせ、固体を作り出した。
「汚らわしい手でお姉様に触れないでください」
男の目の前に大きな固体がふわふわと向かって浮いていく。
「あ……あぁああ……!」
死を悟った瞬間、男の視界が真っ白に光共に爆発音が鳴り響いた。
「……邪魔者は殺すまでです。カイルお姉様に触れさせません」
そう、エテルナは重度のシスコンである。
「エテルナ、ファステルまでの道のり案内しなさい」
「はい。承知致しました」
2人はビュンと空を飛び、エテルナが言う方向に飛んでいく。
「もうこんな所に用はないわ。せいぜい頑張って復帰する事ね」
〜フルトロン 寮〜
「タケル。エルザルに行くわよ。話を聞くよりも実際に能力を見た方が早い気がするわ」
ウィドウが何故か俺達のパーティのリーダー的存在になっているのは置いといて。
現状今行っても配下と鉢合わせになって負けるのがオチだ……どうにかして裏を攻めないとな。
「ガルドちゃんが前みたいに戦ってくれたらいいんだけど……」
「知らん!覚えとらんわ!弱いやつの能力なんぞ覚えてるわけないじゃろうが!」
「一応配下なんだけど……」
俺が知らないうちにこいつらもう仲良くなってやがる。
「ウィドウさん、ここからエルザルまでどれくらいでしょう?」
「馬車で7時間ね」
「へぇ〜7時間……7時間!!??」
思わずゾエラが二度聞きする。
「当たり前よ。遠いわよここから。」
今が9時30分……7時間なら夕方4時だぞ!?そんな頃にはもう配下も帰ってるっての!!
「ワシの能力でダッシュで行けば2時間じゃの」
「じゃあガルド。ダッシュで向かってなんもいなけりゃダッシュで戻ってこい。いいな?」
口を滑らせたガルドに対し、すぐに向かわせようとした。
「まって!じゃあこれ持ってって。現状を撮って私に行ってくれたら私の魔法で自動的に映写するわ」
「待ってるよガルドちゃん!」
「待ってます……!」
マーチ、ゾエラも1人で向かうガルドを応援している。
「いやなんでワシがもう行くみたいな流れn」
数分後、ガルドは涙を流しながらエルザルに1人で向かった。
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