【コミカライズ化!】リンドバーグの救済 Lindbergh’s Salvation

旭山リサ

1-1 ★ マーガレット王女の置き手紙 ~兎さんたちとお幸せに

【 好色なるハンター殿下、我が家族、私を知る皆々様へ 】

 辺境の地より、皆様へお別れ申し上げます。

 皆様からは、理不尽かつ執拗しつような嫌味の数々を賜り、辟易へきえきいたしました。

 ご存じの方もいらっしゃるでしょうが、私の婚約者である北のモンスーン王国第一王子、ハンター殿下は私以外の複数の令嬢と浮気をされています。

 王子だから側室を持つのは当然?
 子宝は多い方が良い?
 王族のおまえは我慢すべき?

 皆様、今一度冷静に考えてみてください。

 五十年前と今では、男女の恋愛観も、結婚観も大きく変化しています。

 世間では「一夫一妻」が理想とされ、南のヴェルノーン王国では「男女どちらも伴侶もしくは婚約者がいる身の上での不義行為は罪」であると法律で定められています。

 私の婚約者ハンター殿下は、武芸に秀でており、狩りの腕もなかなかだそうですね。特に兎狩うさぎがりがお好きだとか。あの耳の長い、つぶらなひとみの小動物を殺して「焼き肉にする」と聞いた時から、彼とは相容あいいれないと確信しました。

 喰らっていたのは野生だけではなく、社交界のうさぎたちであったとは思いもしませんでしたわ。

 東の我が国エデンでは、可愛らしい女性を「うさぎのようだ」と喩え、恋人を「子兎こうさぎちゃん」などと呼びます。同じ動物を用いたたとえでも「兎のお尻を追っかける」は好色を意味します。

 ハンター殿下、貴方あなたは上手く隠し通したつもりでしょうが、大きな過失を犯していましたよ。なんと吃驚びっくり、私宛の手紙に【他の令嬢に宛てた愛の手紙】が紛れ込んでいたのです。

 それだけではありません。モンスーン王国へ招かれた折のことです。貴方の浮気を調べる為、勝手ながら私室の引き出しを拝見致しました。

 するとまぁ、出てくること出てくること、書きかけの愛の手紙が何通も! 宛先は全て違う令嬢です。私への手紙には当たり障りのないことばかり書かれているのに、彼女らへの手紙には口からお砂糖を吐きそうな言葉が羅列られつしておりました。あえてお名前は伏せますが、私は決定的証拠をつかんだのです。

 ハンター殿下の好色さを家族に訴え、私は婚約破棄を願いました。
 けれど家族の言葉はこうでした。

「我慢なさい」

 国同士を結ぶ架け橋となるために、私は全て我慢して「うさぎのお尻好き」を生涯愛さなければならないのですか。とても耐えられません。

 私が婚約を破棄すれば国際問題に発展する。
 私が我慢しなければ困る人がいる。

 昔から「我慢」を強いられてきましたが「うさぎのお尻好き」だけは愛せません。女の尊厳に関わります。我慢の限界です。

 このような理由から私は家出をします。私は私の人生を生きるので探さないで欲しいです。

 ハンター殿下、うたぎさんたちとお幸せに。
 マーガレットのことは来世でも思い出さないでください。

 貴方の不義は、世界中へ知れ渡ることとなるでしょう。

 マーガレット・エデン

「【コミカライズ化!】リンドバーグの救済 Lindbergh’s Salvation」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く