【コミカライズ化!】リンドバーグの救済 Lindbergh’s Salvation

旭山リサ

1-3 ★ おまえのような不気味な知り合いはいない!

「ミミ、どうした!」

 私の悲鳴を聞きつけて、アルが礼拝堂へ飛び込んできた。アルに支えられながら、なんとか立ち上がる。

「い、遺体が! 入ってる!」
「え? 遺体? そんな馬鹿な、まだだよ」
「入ってる! 遺体が動いたのよ!」
「なんだって?」

 あまりに怖くてアルの背中に隠れたその時、遺体がひつぎからゆっくりと顔を出した。

「お、おはようございます」

 アルと私は二歩も三歩も後ずさった。

「おまえは誰だ!」
「ぼ、僕です」
「おまえのような不気味ぶきみな知り合いはいない!」
「ひどいです……兄上あにうえ
「へ? ま、まさか、チャールズか?」
「はい、そ、そうです」

 お化けは泣きそうな声で、再びひつぎの中に横になる。

「これは、良いひつぎですね。寝返ねがえりが打てるくらい余裕がありますし、ここに入っているとなんだかほっとするなぁ」
「アホなこと言ってないで、さっさと出ろ。それはおまえのひつぎじゃない、先約があるんだ」
「そ、そうですか、残念です」
「残念も何も、縁起が悪いから出てこい。大体なんでひつぎに入ったんだ?」
を隠す為にやむなく。どこでまた命をねらわれるかと思うと怖くて。人目を忍んでここへ来たら、ちょうど良い大きさのひつぎが置いてあったものですから」

 チャールズは辺りをきょろきょろと警戒しながらひつぎの外に出た。

「今日はその、折り入って頼み事があって、来たんですよ。僕に届いた暗殺予告の件で」

 全身をブルッと震わせ、チャールズは腕をさすった。

「誰も信用ならないけど、ミミと同じように僕に厳しく、本音を寄せてくれる貴方あなたなら信頼できると思って」
「厳しくても信用できない人間は多いんだぞ」
「そ、そうなのですか?」
「そうだ。自分は真人間まにんげんだと信じ、正道せいどうを説きながら他者を傷つける加害者に、おまえは辟易へきえきしたことがあるか? 無いだろう」
「無いです。僕は無知です。だからこそ頼れるのは兄上あにうえしかいません」
陛下へいかは?」
「こ、これ以上……父上いや陛下には迷惑かけられません!」
「おい、俺なら迷惑をかけてもいいのか!」
「そうじゃないですけど、他にもう……誰も」

  チャールズの涙が頬を伝い、足もとでパタパタと音を立てて零れる。

「アル。せっかくお兄さんを頼ってきたんだから、助けてあげたら? ものすごく不気味だったけど」
「そ、そんなに僕は不気味?」
「ええ。死相ってこんな風に出るのね」
「死相……僕はやっぱり殺されるのか! 運命は変えられないのか? うわあああん」
「ミミ、言い過ぎだよ。余計に五月蠅うるさくなったじゃないか」
「あ、ごめん。つい本音が」
「死にたくない。殺されるなんて嫌だ! 助けてください、兄上!」
「分かった! 分かったから、もう泣くな! おまえの泣き声は頭に響く!」

 アルは泣きじゃくる弟の背中をさすった。

【つづく】

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