【コミカライズ化!】リンドバーグの救済 Lindbergh’s Salvation
1-1 ★ 王子ならびに加害者の皆様へ
軽薄なる王子ならびに加害者の皆様へ
冥土から、皆様に心より恨みつらみ申し上げます。
生前は理不尽な叱咤激励を数え切れないほど賜りました。
あなた方はクズで社交界の掃きだめです。神様も、稀に失敗作をお作りになるのでしょう。
ご存じの通り、私は親友と思っていた、ダーシー・ハーパーの裏切りにより社交界から追放されました。ダーシーは、私の婚約者であった、第一王子チャールズに取り入り、私のことであることないこと吹き込んだようです。
舞踏会で私は、元婚約者チャールズとダーシーに公衆の面前で断罪されました。事実無根だと訴えましたが、あの王子は恋に盲目、もとより人を見ることに関しては視力が昔から大変お悪かったので、反証に関する事柄は全て無視されました。脳みそが小さく、空洞が多いのでしょう。言いがかりをつけられた件については死んでも否定致します。
一に、私は婚約者の立場で王室のお金に手を出したことはありません。王室と金の問題が日夜報道される昨今、私的に使えばどこから焼き栗、焼き石が飛んでくるか分からないので、触りたくも無かったのです。
二に、私は王子の信用に繋がりかねない悪い噂を広めたことは一度たりとてございません。王子からは私の自尊心を傷つける言葉を多くいただきましたがね。
三に、王子以外の相手と恋仲になったことは一度もございません。自慢ではありませんが、チャールズ以外の男性と全く御縁がありませんでした。ダーシーは違いますけどね。私の知る限りでは五人ほどお付合いされた殿方がいましたよ。あ、チャールズは六番目ですね。
それにしてもなんてまぁ、おつむの軽い王子でしょう。優しいところもあったような気がしますが、全て忘れました。――いえ、ありません。いつからか姉のような気持ちで、唐変木の婚約者を見守っておりました。恋ではなく保護者のようだと感じ始めたのが愛の終わりだったのですね。そもそも私と、おつむの弱い王子との間に愛はあったのでしょうか。
この文書があなた方の元へ届く頃には、私は首を吊って宙ぶらりんで揺れているでしょう。
この遺書において元婚約者のチャールズを一度も「殿下」と敬称で呼ばず、心の赴くまま罵倒した件については、不敬罪を絞首で償います。
王子、ダーシー、私を後ろ指でさした皆様のことは、来世でも許しません。
軽薄藁頭の不良債権男と、悪辣女と、冷たい大衆に、私は殺されたのです。
私を陥れた関係者一族の没落を心よりお祈り申し上げます。
 
                                                                                 
  ミミ・キャベンディッシュ
冥土から、皆様に心より恨みつらみ申し上げます。
生前は理不尽な叱咤激励を数え切れないほど賜りました。
あなた方はクズで社交界の掃きだめです。神様も、稀に失敗作をお作りになるのでしょう。
ご存じの通り、私は親友と思っていた、ダーシー・ハーパーの裏切りにより社交界から追放されました。ダーシーは、私の婚約者であった、第一王子チャールズに取り入り、私のことであることないこと吹き込んだようです。
舞踏会で私は、元婚約者チャールズとダーシーに公衆の面前で断罪されました。事実無根だと訴えましたが、あの王子は恋に盲目、もとより人を見ることに関しては視力が昔から大変お悪かったので、反証に関する事柄は全て無視されました。脳みそが小さく、空洞が多いのでしょう。言いがかりをつけられた件については死んでも否定致します。
一に、私は婚約者の立場で王室のお金に手を出したことはありません。王室と金の問題が日夜報道される昨今、私的に使えばどこから焼き栗、焼き石が飛んでくるか分からないので、触りたくも無かったのです。
二に、私は王子の信用に繋がりかねない悪い噂を広めたことは一度たりとてございません。王子からは私の自尊心を傷つける言葉を多くいただきましたがね。
三に、王子以外の相手と恋仲になったことは一度もございません。自慢ではありませんが、チャールズ以外の男性と全く御縁がありませんでした。ダーシーは違いますけどね。私の知る限りでは五人ほどお付合いされた殿方がいましたよ。あ、チャールズは六番目ですね。
それにしてもなんてまぁ、おつむの軽い王子でしょう。優しいところもあったような気がしますが、全て忘れました。――いえ、ありません。いつからか姉のような気持ちで、唐変木の婚約者を見守っておりました。恋ではなく保護者のようだと感じ始めたのが愛の終わりだったのですね。そもそも私と、おつむの弱い王子との間に愛はあったのでしょうか。
この文書があなた方の元へ届く頃には、私は首を吊って宙ぶらりんで揺れているでしょう。
この遺書において元婚約者のチャールズを一度も「殿下」と敬称で呼ばず、心の赴くまま罵倒した件については、不敬罪を絞首で償います。
王子、ダーシー、私を後ろ指でさした皆様のことは、来世でも許しません。
軽薄藁頭の不良債権男と、悪辣女と、冷たい大衆に、私は殺されたのです。
私を陥れた関係者一族の没落を心よりお祈り申し上げます。
 
                                                                                 
  ミミ・キャベンディッシュ
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コメント
旭山リサ
★清水漱平様★ 原作、コミック両方をご愛読いただき、誠にありがとうございます! 「絶望」で始まりながらも「救済」を軸とした物語になるように、全体の構成を何度も見直しながら執筆しました。本作から生命力を感じていただき感無量です。「エナジードリンク」という清水さんの喩えが大変ユニークで面白いですね! モンスタードリンクも吃驚の刺激強めな困難が待ち構えておりますが、ゴクゴクと飲み干して、どんな敵にも果敢に立ち向かって参ります。今後の展開に、ぜひぜひご期待ください!
清水レモン
コミック見てあらためて読み返すと、やっぱり計算と配慮が行き届いていて素敵かつ素晴らしい文章です。どこどこから「心より恨みつらみ申し上げます」で始まったのを読んだとき、絶望で始まる物語か~と心は打ちのめされていたのですが。ですが。同時に「ん? なんか強そう、なんだろうこの生命力!?」みたいなものもにじみ出ていて、期待感のほうが大きくなりました。いまでは、喜怒哀楽怨恨すべてをエナジードリンクのように飲み込んで生命を輝かせていくミミとアルが愛おしくてなりません。
清水レモン
心よりお祈り申し上げているのがひしひしと伝わってきて悲しいな、悲しいのですがなにかいいことありそうな前向きな気持ちになれました!