【推測不能!?】AIノベルちゃんにホラーを任せてみた件について

清泪(せいな)

第20話 遠藤さん

 私はゆっくりと近づき、隣に座って話しかけることにした。
 こんにちは。お久しぶりですね。
 遠藤さん。
 遠藤さんは驚いた表情を浮かべると、私の名前を呼んだ。

 どうしてここにいるんだい?

 ……私は少し迷ったが、正直に打ち明けることにした。
 実はこの春からここで学生として勉強することになったんです。
 そう話すと、彼はとても嬉しそうな笑顔を見せた。
 そうか……君もこの大学で学んでいるのか……それは素晴らしいことだね。

 僕は応援するよ。
 ……ありがとうございます。
 私はそう返事をすると、彼に質問をした。
 ところで……体調の方は大丈夫なんですか? 
 以前会ったときはかなり痩せていましたけど……。
 遠藤さんはその言葉を聞くと、苦笑いをしながら答えてくれた。
 ……あぁ、これかい?
 ちょっとダイエットに失敗しちゃってさ。体重が増えすぎて困っているんだよ。
 ……そういうことだったんですか。
 私は納得した。
 確かに今の遠藤さんはとても太って見える。
 きっと苦労したのだろう。
 でも今は幸せそうに見える。
 それだけで十分だと思った。
 だからこれ以上は何も言わないでおくことにした。

 ……それじゃあ、そろそろ行きますね。
 授業があるので。
 私は立ち上がると、彼に別れを告げる。
 そして歩き出そうとしたとき、ふと後ろを振り向くと、遠藤さんの寂しそうな横顔が見えたような気がした。
 ……どうかしました?
 私がそう尋ねると、彼はハッとした様子を見せ、慌てて首を横に振った。
 何でもないよ。
 引き止めて悪かった。
 彼はそう言うと、手を振る。
 私も振り返すと、そのまま立ち去った。

 それからというものの、遠藤さんとは時々会うことがあった。
 といっても挨拶を交わす程度だったが、それでも嬉しい気持ちになることができた。
 ある日のこと、彼が私のことをじっと見つめていることに気付いたことがある。
 何か用でもあるのかと思い、声を掛けようとしたのだが、なぜか躊躇われてしまい、結局そのまま見つめ合うだけになってしまった。
 不思議に思いながらも時間が過ぎていく。やがて昼休みになり、食堂で食事をしているときに、偶然にも遠藤さんを見かけた。
 彼は友人らしき人物と一緒に座っていた。
 何やら楽しげな様子で会話をしているようだった。
 その様子を見てホッとしている自分がいることに気付き、思わず笑みが溢れる。
 すると視線を感じたのか、二人がこちらを見てくるのが分かった。
 まずい!
 急いで顔を伏せるが遅かったようだ。彼らは私のそばまで来ると、声をかけてきた。
 ……ねぇ、今こっち見たよね?  
 もしかして俺達に会いたかったとか?
 ……そんなわけありませんよ。たまたま目に入っただけですから。
 ……嘘つけよ。
 本当は俺たちのことをずっと見ていたんじゃねえのか?
 ……違いますよ。しつこい人ですね。
 ……おい、あんまり調子に乗るなよ?
 彼は凄んでくる。

 どうしよう?
 私は怖くなり、何も言えなくなってしまう。
 すると二人は舌打ちをして去っていった。
 助かった……
 ほっと胸を撫で下ろす。

 それから数日後の夕方、一人で帰ろうとしていたときのことだ。
 正門を出てすぐのところに遠藤さんがいるのが見える。
 誰かを待っているのだろうか?
 彼はスマホを手に持ちながら立っていた。

 ……あの人が遠藤さんの恋人なのかな?
 私はそう考えてしまう。
 だってあんなに綺麗なんだもの。
 それにスタイルもいいし。

 私は二人の様子を遠巻きに見守ることにする。
 しばらく眺めていると、一人の女性がやってきた。
 どうやら彼女が待ち合わせをしていた相手のようだ。
 彼女は遠藤さんに駆け寄ると、腕を組んで寄り添うようにして歩いていく。
 仲良さそうだ。
 ……良かった。私は心の底から安堵する。
 そして同時に羨ましいと思ってしまった。
 二人の姿が遠くなっていく。
 私はそれを黙って見ていることしかできなかった。
 ……私はいつの間にか泣いていた。
 どうしてこんなことで涙が出てくるのだろうか?
 自分でもよく分からない。
 だけど止まらなかった。
 私はハンカチを取り出すと、それで目を拭い続けるのであった……。

 あれ以来、私は遠藤さんの姿を見かける度に彼に対して特別な感情を抱くようになっていた。
 もちろん恋愛的な意味でである。
 だが当然のことだが、告白なんてできるはずがない。

 そもそも男同士なのだ。

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