【推測不能!?】AIノベルちゃんにホラーを任せてみた件について

清泪(せいな)

第19話 僕が男だからだ。

 一瞬、私は言葉の意味を理解することができなかった。
 だがすぐに我に返ると、慌てて返事をする。
 な、ななな、なに言っているんですか!?
 突然のことで動揺してしまう。
 だけどすぐに冷静さを取り戻すと、キッパリと断った。
 ごめんなさい。無理です! 
 いくら恩人だからといって、さすがに見せられない。
 だって今の私は女なのだ。
 そんな状態で男の人に肌を見せるなど、できるはずがなかった。
 ところが、遠藤さんは諦めなかった。
 どうしても見たいとお願いしてきたのだ。

 どうしてそこまでして見たいんですか!? 
 私は思わず叫んでしまった。
 すると彼はこう答えた。
 それは……僕が男だからだ。
 そう言って私のことをじっと見つめてくる。
 その視線はとても熱っぽく感じられた。
 ひょっとして……私のことが好きだったりするんだろうか? 
 私は戸惑った。
 そして悩んだ末に、結局は彼の願いを聞き入れることに決めた。
 分かりました。見せます。
 ただし、後ろを向いてください。

 私がそう言うと、遠藤さんはすぐに後ろを振り向いてくれた。
 それを確認すると、私は身につけていた服を脱いでいく。
 上半身は何も身に着けていなかったので、下半身のスカートとショーツだけだ。
 それを脱ぐと、生まれたままの姿になる。
そして振り返ると、彼に背中を向けた。
 これでいいんですよね? 
 ドキドキしながら待っていると、やがて彼が話しかけてきた。

 あぁ、もうこっちを見てもいいよ。
 そう言われたので、私は恐る恐る振り向く。
 するとそこには遠藤さんの姿が見えた。
 彼の目線は私の顔ではなく、下の方に向けられているようだった。
 そこには大きな膨らみが存在していた。

 やっぱり女の子なんだな。
 そんな感想を漏らすと、彼はどこか嬉しそうな様子になった。

 それから私達の間に会話はなかった。
 ただ黙ってお互いを見つめ合っているだけだった。
 するとしばらくして、遠藤さんは静かに歩き出した。
 こちらに向かって近づいてくる。
 そのまま私の前に立つと、おもむろに手を伸ばそうとした。
 そのときだった。
 急に視界がぼやけたと思うと、目の前が真っ暗になり、何も見えなくなってしまった。
 
 それと同時に意識も遠ざかり始める。

 ………………

 気がつけばそこは病院のベッドの上だった。
 辺りには医師や看護師達がいて、何やら慌てた様子で声を上げている。

 ……あれ?
 ここは?
 それに私はいったい……
 それにあの人はどこへ行ったのだろうか?

 疑問ばかりが次々と湧き上がる中、私は目を覚ましたことに気づいたのか、そばにいた看護婦の一人が声を掛けてきた。
 気がついたのね。
 よかったわ。
 ……あなた誰なの? 
 すると彼女は悲しそうな顔をすると、信じられないことを言った。
 何を言っているの?
 冗談はよしなさい。
 私はあなたの担当医なのよ。

 えっ?
 何を言っているの?
 意味がよく分からない。

 私は彼女の言うことが本当なのか確かめるため、鏡を持ってきてもらって確認することにした。

 ……そこに映っていたのは見知らぬ顔の少女であった。

 そこでようやく理解することができた。
 私は女に戻っていたのだ。
 つまり今までの記憶は全て失われてしまったらしい。
 自分の名前すら覚えていない状態だった。
 そこで思い出したのは遠藤さんのことだった。
 彼は無事なのだろうか。
 そのことを尋ねたところ、彼は既に退院したと聞かされた。どうやら彼のおかげで記憶を失うことはなかったようだ。

 そこで私は彼を探すことにした。
 だがなかなか見つからなかった。
 それでも必死になって探しているうちに、ついに見つけた。
 しかし彼を見た瞬間、思わず息を飲むことになった。
 なぜなら彼は別人のように痩せ細っており、目は虚ろだったからだ。
 いったい何があったのだろうか?

 私は心配になったが、彼に話し掛けられる雰囲気ではなかったため、その場から去ることにする。
 またいつか機会があったら聞いてみることにしよう。

 ……こうして私の不思議な体験は終わった。
 その後で知ったことなのだが、私は丸一日眠り続けていたそうだ。
 そして目覚めるまでの間、夢を見ていた。
 それはかつての自分についての夢であり、過去の記憶を断片的にではあるが思い出すことができるようになった。

 それからさらに時が流れ、私は大学生となった。
 その頃になると私はすっかり落ち着きを取り戻しており、以前のようによく笑うようになっていた。
 そんなある日のこと、私はいつも通り講義を受けに行くため大学へ向かっていた。
 そして校舎の近くにある広場に差し掛かったとき、不意に足を止めることになる。

 理由は簡単だ。

 そこに懐かしい姿を見つけたからである。それは遠藤さんの姿だ。
 彼はベンチに腰掛けると、空に浮かぶ雲をぼんやりと見上げていた。

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