【雇用№010】愛とダンスと歌声と

　はぁ～～～、覚悟を決めてやるとしましょうか。やったからと言って、帰れるあてがないような気もするけど、今はこの与えられて魔霊樹を植えるという道を辿っていかないと、帰る手立てが糸筋も欠片も見当たらないからね。


　それに、仕事さえしていれば、ひとまずは、食事は出来るし、衣食住も不本意ながらちゃんと当たる。それが、誘拐で連れてこられた所であろうとも、今は大人しく、言われたことをしておいて、道筋が見つかるか、どうしてもやりたくないことをやらされる前に、戦うか逃げ出せるだけの力を確保しないとね。それまでは従順に、疑いの余地を持たれずに行動しないとね。


ということで、覚悟を決めて『再生』ボタンをクリックだよ。


『さぁ～～それでは、私の後に続いて踊って歌って行こう』


リズミカルな音楽が流れ出し、それについて、歌詞が字幕となって流れだす。これは歌って踊れるカラオケなのでしょうか？少し後ろを見ると、メイド３人の視線がガッチリこっちを向いています。う～～、緊張してきたよ。


『母なる大地に魔霊樹の加護を～～～～』
「母なる大地に魔霊樹の加護を～～～～」
『魔神ゼファリス様に愛ある祈りを～～～』
「魔神ゼファリス様に愛ある祈りを～～～」


　どうも、輪唱による歌のようだ。カエルの合唱を思い出すね。でもこれなら、メロディーや音感を先に聞きながら、どうにかこうにか合わせることができるよ。音痴のリュウ君だときっと無理だけど。カラオケに言って、採点したら、５０点台連発してたから。そりゃ～～、私とカラオケ行きたくないはずなのだ。


　私に酷い歌声を聞かせたくなかったんだもんね。私は、リュウ君が一緒にカラオケ行って、歌っていることに価値を幸せを感じていたから、リュウ君の音痴は別に気にしなくてもよかったんだけど。まぁ～～そんなとこが可愛いっちゃ可愛いいんだけどね。


『女神フェリシアに愛あるお仕置きを～～～』
「女神フェリシアに愛あるお仕置きを～～～」


　え～～～、女神様を冒涜する一文が入っているよ。ああ～～後ろから『ブーーーッツ』って吹き出す音が二つほど聞こえるね。そりゃ、自分たちの崇める神を侮辱する発言が歌に組み込まれていたらそうもなるよね。


　でも、私は悪くないよ。女神様の指示通りに、動画を再生したら、そういう風になっただけだからね。天罰とかは私にしないでよね。　


『女神フェリシアの今日の寝言は～～～～、お腹すいたよ～～～ダーリーーン』
「女神フェリシアの今日の寝言は～～～～、お腹すいたよ～～～ダーリーーン」


　いや～～、侮辱どころか、暴露話になっているよ。どうなっているの？この動画？というか、この人はさっきの魔神ゼファリス様？神と神の諍いに人間をお願いだから巻き込まないで。


『女神フェリシアは、自分のしご～～と～～～をほ～～ったらかし～～～』
「女神フェリシアは、自分のしご～～と～～～をほ～～ったらかし～～～」


『つけは全て、可哀想な魔法少女あ～～～い～～～の元へ～～～～～』
「つけは全て、可哀想な魔法少女あ～～～い～～～の元へ～～～～～」


　い～～や～～～、私の名前が入っている、しかもまた、魔法少女って言ってるし、神々の中でも知れ渡っているの？うっそ～～～。しかも、女神の仕事のつけが私にって。。。おのれ、あの駄女神許すまじ。。　


『あ～～い～～～は～～～、恥ずかしい衣装で～～～～、歌っておど～～～る～～～～～～』
「あ～～い～～～は～～～、恥ずかしい衣装で～～～～、歌っておど～～～る～～～～～～」


　分かっているなら、変な歌詞入れないでよ。それにこの歌詞いつ作ったのよ。昨日召喚されたのに、今日動画再生出来るって、どこまで魔神様は準備が宜しいのよ。まったくも～～～。


『あ～～い～～～は～～～、元の世界には～～～NO　Return』
「あ～～い～～～は～～～、元の世界には～～～NO　Return」


　えっ、今なんて言った、元の世界には戻れない。しかも、なぜに英語なの？もしかして、後ろにメイド達がいるからなの？えっ、この歌詞って、もしかしてもしかすると、魔神様から私へのメッセージなの？


『Yes,yes、イエース』
「Yes,yes、イエース」


　あれっ、しかも、なんか私の疑問に答える形になっているのよ。魔神様、日本語での歌詞がメイド達に聞かれるのであれば、全て英語の歌詞でお願いします。


『Yes,yes、OK.You　think　so』
「Yes,yes、OK.You　think　so」


以下歌詞は英語で歌われており、それに対して愛は輪唱しております。


魔神ゼファリス様。はじめまして。私地球から召喚された宮間愛と申します。


こうして、魔神ゼファリスと私のコンタクトが開始された。