キリトリセン~芸術的勇者~
第1話「はじまり」
私が初めてモンスターを倒したのは、6歳か7歳の秋だったと思う。
歳の事までは覚えていないが、あの景色だけは今でも時々夢に見る。
灰色の空と灰色の木々、そして痩せっぽちの仲間たち。それに輪をかけて痩せっぽちな、夢見がちな少年だった私。
薪を拾っていた私たちの前に、村の周辺には現れることのないはずの、クマとフクロウを掛け合わせたような巨大なモンスターがのそりと姿を現した。
その滑らかな毛皮は明るいオレンジ色に輝き、長く鋭い爪は透明感のある黒で美しい曲線を描く。
仲間たちは大声をあげて逃げまどっていたが、私が初めて見たモンスターに抱いた感想は「綺麗だな」だった。
私たちの中で最も年長だった仲間……タケシと言ったか? 体格も良く、私たちの面倒もよく見てくれた鍛冶屋の息子が、一人モンスターを眺めたままボーっとしている私の手を引っ張り「逃げろ!」と叫ぶ。
芝刈り用の小さなカマで雄々しくも私とモンスターの間に立ちふさがった彼を、……今でも申し訳なく思うのだが、私は「じゃまだよ。見えない」と横へ押しやった。
一歩前へ進み、もう一度じっくりとモンスターを見る。
私の目には、その美しいモンスターに、「キリトリセン」のようなものが輝いて見えていた。
あそこを斬りたい。
あの線の通りに斬ることが出来れば、あの美しいモンスターはオブジェとして完成する。
そんな不思議な思いに駆られた私は、手に持った芝刈り用のカマで優しくモンスターのキリトリセンを撫で、それをバラバラにした。
初めての割には上手く行った方だと今なら分かる。未だにあれほど上手く切り取れることは何十回に1回しかないくらいだ。
とにかく、湿った音を立てて私の前に崩れ落ちたそのモンスターの死体は、思っていた通り、とても美しく見えたのだ。
私はその出来栄えに満足して仲間たちへ笑顔を向けると、そのまま気を失ったのだった。
歳の事までは覚えていないが、あの景色だけは今でも時々夢に見る。
灰色の空と灰色の木々、そして痩せっぽちの仲間たち。それに輪をかけて痩せっぽちな、夢見がちな少年だった私。
薪を拾っていた私たちの前に、村の周辺には現れることのないはずの、クマとフクロウを掛け合わせたような巨大なモンスターがのそりと姿を現した。
その滑らかな毛皮は明るいオレンジ色に輝き、長く鋭い爪は透明感のある黒で美しい曲線を描く。
仲間たちは大声をあげて逃げまどっていたが、私が初めて見たモンスターに抱いた感想は「綺麗だな」だった。
私たちの中で最も年長だった仲間……タケシと言ったか? 体格も良く、私たちの面倒もよく見てくれた鍛冶屋の息子が、一人モンスターを眺めたままボーっとしている私の手を引っ張り「逃げろ!」と叫ぶ。
芝刈り用の小さなカマで雄々しくも私とモンスターの間に立ちふさがった彼を、……今でも申し訳なく思うのだが、私は「じゃまだよ。見えない」と横へ押しやった。
一歩前へ進み、もう一度じっくりとモンスターを見る。
私の目には、その美しいモンスターに、「キリトリセン」のようなものが輝いて見えていた。
あそこを斬りたい。
あの線の通りに斬ることが出来れば、あの美しいモンスターはオブジェとして完成する。
そんな不思議な思いに駆られた私は、手に持った芝刈り用のカマで優しくモンスターのキリトリセンを撫で、それをバラバラにした。
初めての割には上手く行った方だと今なら分かる。未だにあれほど上手く切り取れることは何十回に1回しかないくらいだ。
とにかく、湿った音を立てて私の前に崩れ落ちたそのモンスターの死体は、思っていた通り、とても美しく見えたのだ。
私はその出来栄えに満足して仲間たちへ笑顔を向けると、そのまま気を失ったのだった。
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