何時何分? 心臓が何回動いた時?

神楽堂

5

「けど、私は死神でございます。
 あなた様の過去の人生において、
 心臓が早く動いた履歴を消すことは可能でございます」

「それはどういうことだ?」

「あなた様の、ドキドキした体験を、なかったことにする、
 ということでございます」

なるほど、過去の心拍数を減らせば、結果として寿命が延びる、
というわけか。

「え~っと……」
死神は、作業着のポケットからタブレットを取り出すと、
俺の人生の履歴を調べ始めた。

「ええっと、あなた様は、お子さんの成長に一喜一憂して、
 そこでかなりの心拍数を使っていらっしゃいます。
 その履歴を消してみるのはいかがでしょうか」

「消すとどうなる? 寿命は延びるけど、その代わりに何か失う、
 ってのがお約束のようが気もするが」

「はい、あなた様はとても賢い! その通りでございます。
 この場合、あなた様とお子さんとの出来事は、
 なかったことになります」

「子供が部活の試合に出て応援したこと、
 子供が入試を受けて結果を待っていたこと、
 子供が希望の会社に就職できるか、ハラハラしたこと、
 すべてなかったことになるのか?」

「その通りでございます。あなた様には
 お子さんがいなかったことになるのでございます」

それは嫌だ。
自分の寿命が長くなったとしても、
俺の子供がいなかったことになるなら、
生きていてもしようがない。

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