ホムンクルスの恋人
第一話「高額なアルバイト」
気が付くと、ぼくは家族と記憶を失っていた。
最初の記憶は、国立治癒院の施術室。
白い天井。
まぶしく輝く無影灯。
白衣を身にまとった幾人もの回復術師が呪文を唱え、ぼくの失われた肉体がジグジグと音を立てて再生している。
「気が付いたか! きみ! 名前は言えるかい?!」
「……クロウリー。……エドワード・クロウリー」
それだけを答えると、ぼくの意識は、もう一度暗い闇の中へと吸い込まれていった。
「ようエド! 今日もいつも通り不機嫌そうだな!」
「やあフリッツ。ホーエンハイム教授の講義は終わったの?」
魔法学院の庭を埋め尽くす、鮮やかな山吹色に染まった銀杏並木の下、冷たくなり始めた空気を肺いっぱいに吸ったぼくの背中に、無遠慮な友人が飛びついた。
錬金学専攻の友人は、そのままぼくの肩に腕を回し、笑いながら錬金学棟の方へと歩きはじめる。
2限目には応用精霊学の講義をとっていたぼくは、彼の腕から頭を引き抜いた。
「ごめんフリッツ、ぼくはこれから応用精霊学の講義があるんだ。今日はちょっと付き合えないよ」
「おや? いいのかなエド。高額アルバイトの話を持ってきた親友に対して、そんな態度をとっても」
彼はノートの間に挟まっていた紙をひらひらと揺らして見せ、立ち去りかけていたぼくは、その場できれいに回れ右をした。
衣服や食事にそんなに興味を持たないぼくでも、冬が迫れば暖かい衣服は必要になる。
それよりなにより、ぼくの尽きることの無い学術的興味は、バカみたいに高価な学術書を無尽蔵に求めた。
単位はもうほとんど修めている。
応用精霊学の講義だって、半分は復習のために受けているようなものだ。
ぼくの手の届かないところまで紙を持ち上げて、笑いながらぼくを見下ろす友人に、ぼくは簡単に屈することになった。
最初の記憶は、国立治癒院の施術室。
白い天井。
まぶしく輝く無影灯。
白衣を身にまとった幾人もの回復術師が呪文を唱え、ぼくの失われた肉体がジグジグと音を立てて再生している。
「気が付いたか! きみ! 名前は言えるかい?!」
「……クロウリー。……エドワード・クロウリー」
それだけを答えると、ぼくの意識は、もう一度暗い闇の中へと吸い込まれていった。
「ようエド! 今日もいつも通り不機嫌そうだな!」
「やあフリッツ。ホーエンハイム教授の講義は終わったの?」
魔法学院の庭を埋め尽くす、鮮やかな山吹色に染まった銀杏並木の下、冷たくなり始めた空気を肺いっぱいに吸ったぼくの背中に、無遠慮な友人が飛びついた。
錬金学専攻の友人は、そのままぼくの肩に腕を回し、笑いながら錬金学棟の方へと歩きはじめる。
2限目には応用精霊学の講義をとっていたぼくは、彼の腕から頭を引き抜いた。
「ごめんフリッツ、ぼくはこれから応用精霊学の講義があるんだ。今日はちょっと付き合えないよ」
「おや? いいのかなエド。高額アルバイトの話を持ってきた親友に対して、そんな態度をとっても」
彼はノートの間に挟まっていた紙をひらひらと揺らして見せ、立ち去りかけていたぼくは、その場できれいに回れ右をした。
衣服や食事にそんなに興味を持たないぼくでも、冬が迫れば暖かい衣服は必要になる。
それよりなにより、ぼくの尽きることの無い学術的興味は、バカみたいに高価な学術書を無尽蔵に求めた。
単位はもうほとんど修めている。
応用精霊学の講義だって、半分は復習のために受けているようなものだ。
ぼくの手の届かないところまで紙を持ち上げて、笑いながらぼくを見下ろす友人に、ぼくは簡単に屈することになった。
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コメント
ノベルバユーザー601444
表紙のイラストがとても素敵でページをめくりました(^^)
とっても面白いです!
また明日続きを読みたいと思います!