ある男とある梟の旅行記

テオリア星人

気負い山篇 ep.2

男が気負い山の山頂近くまで登ると、洋館が見えて来た。
看板には「ソンデコーネ伯爵の館」と銘打ってある。
男「広そうな館発見。寝床貸し出し許可求む」
梟「ほろほー(保路防)」
男が館の前に立つと、頑丈そうな扉の横に、ライオンの姿をあつらえた黒色のチャイムが設置されていた。
チャイムを押す。
伯爵「入りたまえ」
なんの問いかけもなく扉が開き、男は屋敷へと招かれた。
屋敷の中はとても綺麗で、チリひとつないような掃除の徹底ぶりであった。伯爵に茶の間へと招かれた男は、振る舞われたお茶とクッキーを頬張りながら、伯爵の話を聞いた。
ソンデコーネ伯爵は、生来の疑問持ちだ。
例えば、忙しい時に限って別の仕事が舞い込んでくる。なぜ、全国どこでもそんなことが起きるのか。
なぜ、暇な時に限って仕事は来ないのか。
ソンデコーネ伯爵は疑問だ。
この難問が解決すれば、「そんで、こーね。」というスッキリした気持ちにもなれる。
しかし、解けない。解けないことが多すぎる。なかなかスッキリとしない。それがソンデコーネ伯爵の、生来の心労の種となっている。
伯爵「おじさんだからってね、全員根暗なわけじゃない。あんまり考えすぎちゃいけない、いろいろ難しいですね、人というのは。」
顎髭を触りながらしばらく話をして、お茶を啜るソンデコーネ伯爵。男は話を聞く役として屋敷に招かれたらしく、ソンデコーネ伯爵のマシンガントークを聞きながら、お茶を啜り、皿上のクッキーを消費する。
梟「ほろー(干労)」
伯爵「たとえば、君は噂をするかい?噂をしている時に限って現れるものなんだ、人という生物は。あれはやっぱり不思議だよねぇ。
ところが、いっちょんちょん。一人だけ立っちんぼうがいると。噂というよりは説教。噂の相手が動かないで、その人のところへ向かって私たちが歩いてしまう場合もある。そう、鉢合わせだね。私たちはびっくらこいた。こちらが引き寄せられているんだね。」
男は伯爵の話を聞きながら、クッキーを食べ終え、お茶を飲み終えた。
伯爵「いや、少し話が盛り上がり過ぎたようだ。お開きとしよう。今日は泊まって行ってくれたまえ」
男「歓談余暇終話。寝床布団ありがたし。」
梟「…zzZ」
男は館の大浴場に設置されているサウナで整った後眠りについた。
翌日、男はソンデコーネ伯爵と共に朝食を食べ、惜しまれつつも館を後にした。

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