ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
417話「旧王都バルルツァーレ」
カリファという貴族らしき令嬢と出会った二日後、俺はフランバスクを出立した。念のため、さらに一日かけて情報収集を試みたものの、カリファが持っている以上の情報が得られなかったため、この街での情報収集は打ち切ったのだ。
彼女の内容からさらに内陸部に進んで行くと、ディノフィス区最大の都市である旧王都【バルルツァーレ】が見えてくるとのことだ。かつてのディノフィス王国の王都だった都市であれば更なる情報を得ることができるかもしれない。そんな期待を胸に、俺はその都市へと向かうことにしたのである。
「ん? あれは……」
いつものように飛行魔法で飛んでいると、前方に数十人の集団がいるのが目に飛び込んでくる。よくよく見ると、幌馬車二台を盗賊が取り囲んでおり、何やら物騒な雰囲気だ。
また盗賊が調子に乗っているのかと内心で呆れていたその時、突如として状況が一変する。なんと、幌馬車の中から矢の弾幕が飛来し、盗賊たちを急襲したのだ。
そこからあれよあれよという間に、幌馬車に乗っていた連中と乱戦となるが、戦闘技術の差が大きく盗賊が押され始める。そして、旗色が悪くなったのを感じ取った盗賊たちが逃亡する動きを見せた。だが、そんな盗賊たちを逃すまいとどこからか現れた集団によって取り囲まれてしまい、あえなく御用となった。
「これって、俺が話した盗賊対策に似てるな」
先日、カリファという貴族の令嬢と思しき人物に似たような治安維持に関する対策を話したことがあったが、その内容が今目の前で起きた光景と酷似している。偶然なのか、それとも彼女が俺の話を聞いてそれを領主に伝え、それを受けた領主がその策を取り入れたのかはわからないが、こうして俺の盗賊に対する策の実例を目の当たりにして改めて自分の策が正しかったことを再認識する。数は力である。
「ま、別に悪いことをしているわけでもないし、俺は関係ないからいいや」
その光景を見たところで、別に俺は領地を治める人間でもなければ、何かの商売をやっている商人でもない。彼女が俺の話を鵜呑みにしてそれを誰かが実行したとしても、その責任はそれを選択した人間にあり、仮にその選択が上手く行ったところで、それに対して対価を要求することもしない。ぶっちゃけ面倒臭い。
俺が受け取った報酬らしい報酬があるとすれば、俺が話した内容が間違っていなかったことを認識できたという点だろう。それについては、他人事だが良かったなと思う程度でしかない。
そんなことを考えつつ、もうこれ以上この場にいても意味はないため、俺はそのまま旧王都へと向かうことにした。
飛行魔法で飛び続けること数日、お待ちかねの旧王都が見えてくる。そこは王都と言うだけあってかなり大きな都市で、規模だけならシェルズ王国の王都ティタンザニアに匹敵する。
カリファの話によると、大陸統一を果たしたアルカディア皇国は各国の統治者に対し、一定の自治権を与える代わりとして皇国に属することを要求した。所属は皇国となったものの、治めている人間は以前と変わらないため、国民たちも戸惑うことなく生活を送っているとのことだ。
治めている人間も国王ではなく執政官という役職に変化しており、その執政官に就いている者がかつての国王たちだということらしい。役職名は変化しているが、待遇はほとんど変わってはいない。変わったことがあるとすれば、執政官の上にアルカディア皇国の上層部である首脳陣たちが君臨し、その命令には絶対服従という点のみだ。
基本的に国という組織において、国王より上の役職というものは存在しない。だが、彼らを執政官という役職に置くことで、国唯一の王である皇帝を絶対の存在として押し上げるという腹積もりなのだと俺は解釈した。
とにかく、バルルツァーレという都市はそんな状況にある場所の一つであり、今も変わらず大都市としての機能を保ち続けていた。
「次の者、身分証の提示を」
「ん」
いつものように門を警備する兵士にギルドカードを提示する。これまたいつものように、俺の幻術で偽の情報を表示したギルドカードであるため、俺の正体を兵士に悟られることはない。
確認が取れ、何の問題もなく通行が許可されたので、遠慮なく都市へと入る。旧王都といっても石畳が並ぶ街並みというどこにでもある風景に変化はなく、精々が通りの幅が広いということと、行き交う人の数が多いくらいだ。
さて、旧王都へと潜入することに成功したが、まずは気になるアレを確認しておくとしようじゃないか。そう考え、俺は真っ先に冒険者ギルドへと向かった。
「初めまして、私はザシカといいます。この冒険者ギルドで職員をやらせていただいております」
「ふむ、ちなみにこのギルドのギルドマスターと解体場の責任者の名前を教えてくれないか?」
「はあ。ギルマスはオイト、解体責任者はユンガスといいますが」
「なるほど、八作目だな」
どうやら、今回は八作目の名前が採用されているようだ。さらに職員の名前を聞いてみると、キルール・ケルダ・メリーという人物がいることが判明し、ますますもって八作目だということが確定してしまった。
ここまで露骨だと、何者かの意図を感じざるを得ないが、仮に意図的に行っていたとするなら一言物申したい。フ〇イフ〇ンはどうしたゴルァ!? テ〇ルズは!? メガテンは!? 日本のRPGシリーズ網羅しやがれ!!
などと、一人脳内で盛り上がってしまったが、結局冒険者ギルドに直接用事はないので、おすすめの宿を教えてもらった。ちなみに、おすすめの宿の名前は【レイーダの酒場】だそうだ。 ……もうね。うん、何も言うまいて。
ひとまずは情報収集の時間として一週間を予定しているため、余裕を見て十日分を申し込むことにする。値段は一泊食事付きで三千ジークだそうだ。銀貨三枚だな。
当面の拠点を確保した俺は、その足で街へと繰り出す。しばらく歩き続けたところで、なにやら争っている声が聞こえてくる。
「や、やめてください」
「何がやめてくださいだ。この儂を誰だと思うておじゃる。かのアルカディア皇国にバグズビー家ありと言わしめた名家。バグズビー家の当主、ロドリゲス・フォン・バグズビーでおじゃるぞ!」
(うわー、また濃いのが湧いて出てきたなー)
その姿は、まるでガマガエルをおっさんにしたような見た目をしており、醜悪な顔と寂しくなった頭頂部に残された最後との砦ともいうべき髪が虚しくたなびく。その無駄に豪華だか下品な服と成金かと言わんばかりの着飾った姿は、はっきり言えば見るに堪えないものだ。
不幸にもそんな男の相手をしている女性は、身なりからして平民の女性だが、整った顔立ちと男好きする豊満な体つきはとても魅力的で、特に目元のホクロがとてもセクシーだ。
すれ違えば男が高確率で振り返るほどの美貌を持つ彼女だが、どうやら貴族らしいブ男に絡まれている様子だ。
「お前のような平民風情如きが儂の相手ができるのだ。嬉しかろう。さあ、儂と一緒に来るでおじゃる」
「やめてくださいっ」
周囲もなんとかしてやりたい気持ちがあるが、相手が貴族である以上下手に首を突っ込むと余計にこじれる可能性があるため、助けてやれない状況にあるようだ。……仕方ない、ここは俺が何とかしてやろうとしたその時、ブ男に声を掛けた人物が現れた。
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