ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
398話「アルカディア皇国」
「それは、アルカディア皇国の軍勢だろう」
「アルカディア皇国?」
海からやってきた襲撃者について国王に情報を持って行ったところ、そんな答えが返ってくる。聞くところによると、こことは別の大陸に一際大きな領地を持った大国が存在する。それがアルカディア皇国らしい。
かの大陸のほぼすべてを手中に収め、事実上の大陸統一を果たしたアルカディアは、次の標的として世界統一を目論んでいるのだろうというのが国王の見解だ。
「そんなわけで、次の標的に定めたのが」
「この大陸にあるシェルズということか」
「おそらくは」
それを聞いて、俺は呆れの感情が浮かんだ。大陸一つを手中に収めたのなら、それで満足していればいいものを……何が悲しくて再び戦争を起こそうとするのだろうか?
そもそも、他国を滅亡させて自国の勢力図に塗り替えただけで、反乱分子や国の方針に従わない人間はまだいるだろうに。
「そういうのも含めて、勢力図っていうのは塗り替えていくものだ。仮にそれができたとしても、新たな戦争の火種を生み出そうとする気が知れん」
「まったくもってその通りだ。此度のこと、この国の国王としてだけではなく、この大陸の人間として礼を言う」
「降りかかってきた火の粉を払っただけだ」
国王の感謝の言葉に手を振ってそんな風に返す。それにしても、アルカディア皇国か……。これは一度この目で見ておく必要があるかもしれないな。
とりあえず、国王との情報共有は終わったので、また何かあれば連絡するということでこの話は終わった。
再びモンスター農園へと赴いたが、図太いというかたくましいというか、あれだけの襲撃があったにもかかわらず、何事もなかったかのように仕事をするモンスターたちはある意味で大物だと感心してしまった。
それから、マンティコアやオクトパスの事後処理の報告を受け、また奴らがやってくる可能性を示唆し、次からは警戒を怠らないようにと指示を出しておいた。
今回のアルカディア皇国の騒動については今後のことを考えれば、相手方の情報を掴むためにもやはり一度アルカディアに足を運ぶ必要が出てきそうだ。
そんなことを考えつつ、モンスター農園からオラルガンドの自宅にある工房へと移動する。こういう時、本当に瞬間移動は便利な能力だと改めて気付かされる。
残っていた毛玉スライムもどきのぬいぐるみの生産ラインを設置作業を行い、なんとか形になるところまではできたのだが、原材料となる素材のうちバトルセーブルの毛皮の供給がまだ確保できていないため、俺は再びダンジョンへと赴いた。
「シャー」
「そいっ」
「キュウ……」
茶色い毛並みの鼬のようなモンスターをデコピンで一刀両断する。剣は使っていないため、一刀も両断もしていないのだが、そこは言葉の綾というものであるからしてあまり気にはしない。
生命活動を停止したバトルセーブルをストレージに仕舞い込み、分離解体のスキルを使って毛玉スライムもどきのぬいぐるみの材料となる毛皮を入手する。
ダンジョンでは、ダンジョンコアを破壊しない限りはダンジョンに出現するモンスターは無限に湧いてくる。それを利用して俺が材料を確保してもいいのだが、アルカディアのこともあるし、こればかりに気を取られるわけにもいかない。
「てことで、【ゴーレム生成】!」
『ムー』
ゴーレム生成の上位スキル【無機生物創造】を使い、戦闘に特化したゴーレムたちを十五体ほど生成する。いつものゴーレムたちに活躍してもらおうということになるのは当然だが、今回は限定条件付きの命令を出すことになる。
まず、バトルセーブルが生息する階層は三十から四十階層の間であり、Bランク以上の冒険者がやって来る可能性がある。仮に冒険者たちが俺が作ったゴーレムを見れば新種のモンスターか何かと勘違いして倒してしまうことも考えられる。
そこで、冒険者を見かけたら戦わずに全力で逃げるという選択を取るという条件を出し、極力冒険者にも見つからないように指示を出した。そして、今回の狙いはバトルセーブルの毛皮のみであるため、当然戦う相手はバトルセーブルだけとなる。
倒したバトルセーブルを魔法鞄に入れ、俺のストレージを経由して工房にある魔法鞄からバトルセーブルを取り出せるようにし、毛皮を解体するラインを追加する。これでバトルセーブルの毛皮を手に入れる工程の完成である。
この方法でネックとなるのが、不定期にやって来る冒険者だが、そこはなんとかゴーレムたちにやり過ごしてもらうほかない。念のため、ゴーレムに【気配察知】と【気配遮断】のスキルを付与しておき、冒険者がやってきたらどこか見つからない場所を選択して隠れるようにも指示を出しておいた。
「こんなものかな。じゃあ、後のことは頼んだ。くれぐれも冒険者に見つからないようにな」
『ムー』
了解したとばかりに戦闘ゴーレムたちが声を上げ、さっそく近くにいたバトルセーブルへと向かって行った。これで安定した毛皮の供給を行うことが可能となるだろう。
念のため、バトルセーブルが出現する他の階層に同タイプの戦闘ゴーレムを派遣する。これで毛皮が集まるスピードも上がって効率化ができる。あまりゴーレムを出し過ぎると、それこそ冒険者に見つかってしまう可能性があるため、三十から四十階層のうちの二つか三つ程度に留めておくことにした。
さらにその足でコンメル商会へと出向き、新たな商品があることをマチャドに告げ、新作を売り出す打ち合わせを行ったのち、毛玉スライムもどきのぬいぐるみの完成品が出てくる魔法鞄を預けてそのまま商会を後にした。
ついでに、しばらく顔を出せない旨を伝え、次に戻ってきたときには裁縫の得意な従業員を募って、商会主体によるぬいぐるみ系統の商品の生産にも着手していくことを伝えておいた。ゴーレム生産でも十分だが、俺がいなくなっても商会が回るシステムの確立は今後の重要な課題となってくるのである。
その後、各拠点の人間にしばらく出掛けることを伝える挨拶回りを完了させ、これで俺がいなくなっても大丈夫な状況を作り上げた。
「さて、それじゃあ敵情視察と行きますかね」
すべての下準備が完了した俺は、モンスター農園を襲ったアルカディア皇国がやってきた海岸へと移動する。目的地は北東。どんな国なのか、今から楽しみだ。
新たな国に向かう期待しながら、俺は飛行魔法で空へと飛び立った。
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