ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
393話「ダンジョンで新たな素材をゲット」
「はっ、ふっ」
転売ヤー騒動からしばらくして、俺はオラルガンドのダンジョンへとやってきていた。理由は単純で、たまには体を動かさないと鈍るからである。
テンバーイ商会とその悪事に肩入れしていたドルバード子爵の顛末を国王に報告し、一連の騒動は幕を閉じた。だが、ここでティアラたちの報酬の件についての話となった。
本人たちは以前俺に世話になったということで、無償で動くということになっていたのだが、やはり働きには何かしらの対価を支払うべきだと考えた。
ティアラたちに何か欲しいものを聞いたところで、おそらく素直に答えてはくれないことは予想がついていただろうし、彼女たちが一番欲しているものは俺との婚約であることは明白であった。だが、さすがにそれは俺の望むところではないため、何か他の形で報酬を払うということにした。そこで思いついたのが、オラルガンドの迷宮だ。
ここに行けば、何か珍しいアイテムやそれに準ずる素材が手に入るかもしれない。アイテムであればそのまま渡せばいいだけであるし、素材ならばそれを何かに加工してプレゼントすればいいということで、俺は再びオラルガンドへとやってきたのだ。
そして、一度グレッグ商会を訪ね、グレッグにも相談してみたところ、そういった類のアイテムが手に入ったという情報は毎日のように耳に入ってきているということらしく、これは期待大といったところだ。
ダンジョンに向かう前に一度冒険者ギルドでダンジョン攻略をする旨を申告しようとしたところ即効でギルドマスターのところへと連行され、また増えていた五年依頼や十年依頼を押し付けられる形となった。
一応SSランクの冒険者ということで、そういった面倒な仕事が回ってくるのは仕方のない。それは理解している。だが、理解しているのと実際に納得しているかは別問題であり、端的に言ってしまえば、“このタイミングで面倒な仕事を持ってくるんじゃねぇ!!”である。
俺はただ珍しいアイテムを取りに来ただけであり、間違っても仕事をしに来たのではない。しかも、すでに一生遊んで暮らせるほどの大金を稼いでおり、その気になればただ寝て過ごすだけでも勝手にお金が増えていくのだ。まさに、不労所得を得た状態だ。
だというのに、やらなくていい仕事を振られるのは決して気分のいいものではなく、ギルドマスターに恨み節を吐いたのは仕方のないことであると言いたい。
そんな事情を抱えながらも、依頼されている素材を回収しつつ階層を進めていく。もうすでに攻略階層が百階を超えており、最高到達階層である八十六階層を大幅に更新しているのだが、これが公の場で公表されることはない。
理由としては、過去に八十六階層に到達したのは複数人で構成された冒険者パーティーであり、かたや俺はたった一人のソロであるからして、単独でそこまで到達したとなれば、英雄視よりも化け物扱いされる可能性が高い。
尤も、化け物としての自覚があるため、他者からそう扱われたところでそれに不満を持つことはないのだが、面倒な連中を相手しなければならなくなることは明白だ。
歴史においても、都合の悪いとされる真実は伏せられ、国や組織にとって都合のいい解釈が伝えられたりする点を考えれば、本当のことを伝えないというのもそういった軋轢を生まないための措置だと捉えることもできる。
とにかく、過程はどうあれ俺は久しぶりにダンジョン攻略に勤しんでいる。確か、ブロコリー共和国以来となるため、一月か二月くらいとなるだろうか。……意外に短い気もしなくはないが、日々濃密な生活を送っている分一日当たりの濃度があるので、それも仕方がない。
「ギャギャッ」
「ふむ、Sランク程度なら一撃だな。そろそろ、もう一段階レベルアップしたいところなんだがな」
先ほど自分のことを化け物だと思っているとは言ったものの、はっきり言って俺の実力など化け物止まりでしかないのだ。いつぞやのロックドラゴンや癪だが俺の実質的な師匠であるナガルティーニャという越えなければならない壁がいくつか存在し、未だかつて出会っていない強敵もまだ控えている可能性も捨てきれない。
世界は果てしなく広く、すべての土地を踏破していない以上、俺よりも強者な存在がいないというようなことはないだろう。少なくとも、あのロリババアに致命傷を与えられていない現状を思えば、俺にもまだまだ強くなる余地は残されているはずだ。……そう思いたい。
「とりあえず、今回のダンジョンアタックで百五十階層までは行きたいところだな」
オラルガンドのダンジョンは、ナガルティーニャ曰く全部で三百階層あり、彼女が住まいとしていたのは二百五十階層という話だ。その時点で徘徊するモンスターの強さはSSランク相当が集っており、当然それ以降の階層では前人未到のSSSランクのモンスターが待ち受けているだろう。
そんな高ランクが、地上に溢れ出てこないのかという話をナガルティーニャにしたことがあったのだが、何でも百階層に強力な結界が張られており、ダンジョン自体が暴走しないよう自己防衛機能がいくつも施されているため、高ランクのモンスターになればなるほど地上に出ることはほぼ不可能とのことらしい。
尤も、時空魔法を使って意図的に外に流出させることはできると冗談めかして本当に実行しようとしたので、慌ててぶん殴って止めさせたという過去があるため、人為的な何かが加われば、百パーセント不可能ではないとのことらしい。
そんな情報を頭の中で思い出しつつ、現在百二十代の階層を突き進んでいる。出没するモンスターのレベルはSランクの中位程度といったところであり、俺にとっては雑魚である。
だが、一般的な冒険者たちからすれば、間違いなく圧倒的な強さを誇るモンスターたちであり、ここにいるモンスターが一匹でも地上へ解き放たれたなら、それこそ大惨事となるだろう。
そして、そんなモンスターから入手できる素材も破格といっていい程の値段で取引され、ここのモンスターたちを定期的に狩ることができれば、それこそひと財産を築くことも決して不可能ではない。
そのままかなりのスピードでダンジョンを攻略していく、出現するモンスターと罠を交互に対処していき、目ぼしいアイテムを探索していくが、これといったものはなかなか出てくれない。
ダンジョンから排出されるアイテムとしては、どれもこれも価値のありそうなものばかりなのだが、年頃の女の子のプレゼントとして相応しいものかと問われれば甚だ疑問だと言わざるを得ない。
「ん? これは、水晶か?」
そうこうしているうちに、どうやら水晶の鉱床に行きついたらしく、そこかしこにファンタジーよろしく水晶が地面から生えている。これ自体は綺麗ではあるが、これだけ丸ごと贈られてもただ綺麗だけでそれ以外の感想は抱かない。精々コレクションとして飾るか、シャンデリアなどの装飾系の素材として利用するかだ。
まあ、何かに使えるかもしれないので、入手しておいくことにし、さっそくストレージへと収納していったのだが、ここで不思議なことが起こる。
「再生した……のか?」
なんと、水晶をストレージに収納したそばから、ニョキニョキとタケノコの成長を早送りで見ているかのように再び地面から生えてきたではないか。その瞬間、俺は閃いた。
「これは、新たな無限素材の獲得の予感だな」
現在も俺が出資している商会で定番商品となりつつあるブレスレットは、オラルガンドのダンジョンで入手できる素材によって作られている。その素材は無限に手に入り、そのお陰で初期費用として掛かるであろうコストを削減することができ、売れた分だけ商会の利益となっているのだ。
そんな有難い素材が新たに手に入れたことで、水晶を使った装飾品などを作れば、さらに利益を上げることが可能となるだろう。
そして、運がいいことにダンジョンには水晶だけでなく、鉄鉱石や金鉱石などの鉱床もあるらしく、多くの鉱石を入手することができたのだ。
「しかも、ダンジョンのシステムなのか、採ったそばから再生成されていくから、ダンジョンが無くならない限り無限に採掘することができる。……なんて素晴らしいシステムだ。【ご都合システム】と命名しよう」
ただし、俺が発見した階層は百三十代の階層であるため、ここに来られる人間が果たして何人いるのかという疑問は残る。しかし、現状俺が到達できるため、ここで手に入る鉱石を市場で売り捌けば、それだけで莫大な利益を生み出すことができるだろう。
今回のダンジョン攻略で、不労所得になりそうないろいろを見つけられたことに顔を綻ばせたが、ここに来た目的を思い出し、さらに攻略階層を百五十まで伸ばしたところで、ある結論に至った。
「ってか、今回手に入れた鉱石を使って何か作ればよくね?」
目標だった百五十階層に到達したことで、その結論に思い至り、急遽ダンジョン攻略を切り上げ、俺は一度工房へと移動するのだった。
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