ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
360話「国王から新たな依頼」
「うーん……暇だ」
セラフ聖国との一件から一月が経過する。あれから何のトラブルもなく俺はスローライフを満喫している。
商会や畑の経過を観察しつつ、念のためセラフ聖国にも目を向けていたが、聖国内はつつがなくフローラに実権が集まりつつあった。いくら他の枢機卿が結託が結託しようとも、国民の総意と彼女に与えた結界を通り抜ける力の威光は凄まじく、現教皇がその地位から引き摺り下ろされるのも時間の問題となっていた。
その一方、商会についても職人ゴーレムと新たに雇い入れた人員とで協力して商品の生産ラインを確保し、需要に対しての供給をある程度賄えるようにした。
最後に畑については、マルベルト領の葡萄栽培やモンスター農園といった各畑の責任者である人員やアルラウネに一任しているため、何か特別な問題が発生しない限り、俺が直接出向く必要性は皆無になりつつある。
そんなわけで、俺が行っていた仕事のほとんどを他の人間に振り分けてしまったことで、俺自身が行う仕事というものがなくなってしまったのだった。
仕事が無くなれば当然暇になるわけで、俺が呟いた言葉の通り現在絶賛暇を持て余しているというわけなのである。
「ローランド様、国王陛下からの使いがやってきておりまして、手が空いた時に陛下を訪ねてほしいとの言伝を預かっております」
「わかった」
仕事をするわけでもなく屋敷でのほほんと過ごしていると、ソバスが国王からの伝言を携えてやって来た。どうやら、何か俺に頼み事か問題が発生したのだと当たりを付けるが、具体的な内容までは現時点ではわからない。
「まぁ、暇だし。とりあえず話だけでも聞いてみるか」
後になって知らされるよりかはマシだと判断した俺は、すぐさまソバスに出掛ける旨を伝えていつもの国王の部屋へと瞬間移動する。
「来たぞー」
「あぁ、いつもながら貴殿の行動の早さには感心する」
「ローランド様、ご機嫌よう」
「げっ」
国王の部屋に行くと、まるで待ち構えていたかのようにティアラがいた。思わず「げっ」という声を出してしまったが、これは失礼を通り越して不敬罪になるだろうな。まあ、そうなったらそうなったで国外逃亡で二度と戻らないだけだけどな。
「不敬罪にしませんから国外逃亡しないでくださいまし」
「おっと、口に出ていたか。とにかく、用件を聞こう」
心の声が出ていたことを反省し、国王に用向きを聞く、俺の言動に呆れた視線を向けてきたが、それもいつものことであると諦めたのか、俺を呼んだ用向きを話し始める。
「実は、我が国には王立学園という学び舎があるのだが、そこに務める講師が不足しておるのだ。そこで、もしよければ短期間でも構わないので、貴殿に臨時の講師をやってくれないだろうか?」
「俺は未成年だぞ」
「知っている」
寧ろ、どちらかといえば学園に通う立場にあるのではないのか? とにかく詳しい事情を聞いてみることにした。
シェルズ王国王都ティタンザニアにある王立学園は、一般的な教養と知識を学ぶ場であると同時に剣術や魔法などのあらゆる戦闘術を学ぶ訓練学校でもある。十二歳となった子供たちがこぞって入学試験に臨み、毎年数百人が学園に通うことになる。
全体の人数は千人規模のマンモス校であり、通常過程は三年で卒業することができるが、専門的な知識やさらなる訓練を行いたいものは最大で三年の延長が可能である。合計で六年まで通うことができる。
大抵の場合平民が通常過程のみを修得し、貴族や騎士を目指す人間などが追加の延長をする傾向にあり、その分学費もかかってしまう。
「自分よりも年下の先生とかおかしくないか?」
「逆に聞きたいのだが、貴殿にものを教えられる者がいるのか?」
「……」
国王の問いに改めて考えてみたが、確かにそう言われれば否定せざるを得ない。唯一戦闘はエセ師匠のナガルティーニャができなくもないが、知識やその他諸々の雑学についてはほとんど教えられるようなことはない。
鍛冶や錬金術についても習得しており、ポーションなどの薬学についてもある程度の知識はマルベルトにいた頃に書物から情報を得ていた。だからこそ、マークを優秀な人材に仕立て上げることができたわけだし、それについては僥倖だったと言及できる。
だからといって自ら進んで誰かに教えるということをするのは面倒であるし、何よりも講師としての報酬と商会や冒険者稼業で稼げる報酬とでは圧倒的に後者の方が多い。であるならば、講師をやるよりも冒険者や商会で新しい商品を販売する方が時間的な効率はいいのだ。
「まあ、よしんばそうだとして。あんたは俺という存在を講師として雇うのにどれだけの報酬を出すつもりだ?」
「貴殿に貸している土地をくれてや――」
「それは契約違反だ」
アルラウネに任せた畑、通称モンスター農園は国王との契約魔法によって結ばれている。契約が破られた際の罰則はないにしろ、一度交わした契約を反故にするのは一国を担う者としてはあまりいいことではない。
その他にもいろいろな条件を提示されたが、こちらを納得させるような条件はなく、どさくさに紛れてティアラが「では、私との婚約を」などという戯言をのらりくらりと躱しつつ、話し合いを重ねた結果、二週間という限定期間で大金貨三千枚という金額で折り合いを付けた。
暇を持て余していたところに突如として、学園の講師をやることが決まったのであった。
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