ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
355話「ミッション開始」
「ここがこの国の首都か」
そう呟く俺の眼下には、白を基調とする煌びやかな都市が広がっていた。あれからセラフ聖国内にある集落や町を巡って情報収集した結果、いろいろなことがわかった。その内の一つが、聖国の首都である【レイドパレス】だ。
別名“聖都”と呼ばれるかの都市は、聖国内の信者たちが巡礼に集い、神に祈りを捧げる聖地として知られているが、それだけではないことは大方の予想は付く。
レイドパレスの人口は七十万人ほどで、中規模国家の首都と同程度くらいなのだが、聖都の住人ではなく各地方からやってくる巡礼者が大体の割合を占めており、それを考慮すると実際の聖都の住人はその半分にも満たない。
元々セラフ聖国という国が発足したきっかけは、ある一人の神官が悟りを開き、神の啓示を受けたことで現在の聖都の位置に集落を作ったということらしいのだが、その神官が誰なのかがはっきりしていないことと、神官以外の他の住人がどこからやってきたのかという詳細が語られていないところを見るに、俺の中では信憑性の低い話であるというのが個人的な感想だ。
それでも、国としての体裁を僅かな期間で整えてしまっていることを考えれば、どこかの国の要人か元々勢力を伸ばしていた一派が根を下ろしたのだろうという予想を立てている。
「とりあえず、潜入してみるか」
このまま見下ろしていても何も始まらないため、実際にこの目で見てこの国の実態を調査すべく、人目のつかない場所に降りてから改めて徒歩で聖都へと向かった。
「次」
他の都市と同じく聖都に入るための手続きをする列を成していたので、そこに並ぶこと数十分、ようやく俺の番が回ってくる。いつのも通り身分証確認のため冒険者のギルドカードを提示しようとしたが、兵士から意外な言葉を投げ掛けられる。
「通行書または通行手形の提示を」
「そんなものはない。これじゃあダメなのか」
「冒険者か。聖都に入るには各地域にある教会にいる司祭以上の役職を持った神官が発行してくれる通行書または通行手形が必要となる。それを持たない場合通行料中金貨一枚を徴収することになっている」
「そうか。なら、これで頼む」
ギルドカードでの通行ができなかったが、通行料を払えば通してもらえるということだったため、素直に中金貨一枚を支払う。通行料としてはかなり高額だが、唸るほどの金を持っている俺からすれば問題ない。
「確かに徴収した。通られよ」
そう言って通行の許可が下りたため、俺はレイドパレスへと潜入する。街並みは遠目から見てもわかっていたが、白を基調としており、使われている建材のほぼすべてが白乳色で統一されている。何か特別な素材なのか、それともあえてこの色に染めてあるのかはわからないが、白一色だけあって見た目上の清潔感はかなりある。
歩いている人間も他国であれば武装した冒険者などが目に付くところだが、ここではセラフ聖国のロゴマークなのかある特定の決まった紋章が入った服を纏った人が多い。
街の概要としては色以外に特に変わったところはなく、他と同じく中世ヨーロッパの雰囲気を持った街並みである。活気自体は他の都市と比べると些か劣るものの、決して廃れているわけでもないのだが、どことなく窮屈さを感じてしまうところがある。おそらくだが、意図的に制限を掛けられているのだと当たりを付けつつ、聖都の街を散策する。
「とりあぜず、宿でも取るか」
レイドパレスでの拠点を確保するべく、俺はとある宿へと入った。例のアレがあるかと期待していたが、残念ながら今回ははずれだったらしい。
といっても、宿自体の質はそれなりで値段相応の品質は保たれている様子だった。ちなみに、金額は食事付きで一泊小銀貨六枚だ。
街の散策と宿の確保でそれなりに時間を消費したことで、気付けば辺りはすっかり暗くなっていた。だが、このまま就寝するのは少し早い。
「さて、内情を知るには行かねばならないだろうな」
レイドパレスを散策していた際、気になる場所を発見していた。それは、かなり大きな建物で見た目は教会だった。詳しい話を聞いてみたところそれは【大聖堂】と呼ばれる場所であり、この国の実質的なトップであるとされる教皇が住んでいる場所らしく、他国でいうところの王城である。
荘厳な雰囲気を持った建築様式だが、城のような防衛機能は備わってはおらず、見た目はかなりのものではあるが実際は脆い。
教皇が住んでいるということもあって正面から入ろうとしたところ、入り口に立っていた騎士に止められてしまった。彼らは終始「許可のない者の立ち入りを禁ず」と口にしており、取り付く島もないまま追い返されてしまったのだ。
おそらくだが、あれは特別な許可がない限り正面から入ることは難しいと考え、俺は潜入調査らしく黙って忍び込むことを選択した。
「ここからはちょっと真面目にいこうか」
そう呟くと、俺は気配を絶ち宿の窓から夜の街へと繰り出した。明るかった昼間とは打って変わって静寂に包まれてはいるものの、酒場や娼館などの歓楽街は賑わっており、聖都と呼ばれていてもこういった娯楽施設は一定数存在しているものなのだなと改めて思わされる。
人間の三大欲求である性欲と食欲の底力を見せつけられつつ、できる限り目撃されない場所を選びながら歩を進めていくと、大聖堂の入り口手前まで到着する。
(さすがに見張りがいるか……よし)
昼間にやって来た場所には、同じように騎士が立っており、見張りとしての職務をこなしているようだが、さすがに昼間の時と同じ騎士ではなく、別の騎士が見張っている。
(【マジックサーチ】)
魔力的なものを見る魔法を目に掛け、侵入者が来たことを知らせるアラームのような魔法や結界がないか慎重に調べる。すると、やはり要人が住まう場所というだけあってか、何かの魔法が掛けられている痕跡を発見した。
詳しく調べてみた結果、侵入者を知らせる類の結界のようであったらしく、それが大聖堂を取り囲むようにして張られており、どこから侵入しても必ず見つかってしまうようにできていた。
だが、残念ながら相手が俺であることを想定はしていないため、その結界が役に立つことはない。俺は見張りの騎士たちに気付かれないようできるだけ目立たない壁を上り、張り巡らされている結界の一部に穴を開け、周囲の結界が反応しないよう調整しつつ、魔力の淀みが起こらないよう慎重に作業をする。そして、俺が通れるくらいの穴を開けることに成功し、見事大聖堂の侵入を果たした。
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