ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
348話「薬の効果とルルミーレのその後」
「これが、わたくしの病気を治す薬ですか?」
「そうだ」
マルベルトの屋敷へと戻った俺は、すぐに家族を集めた。全員が見守る中、俺はエルフの里で手に入れた薬をローラに手渡す。半信半疑の彼女だったが、俺が持って来たものということもあって素直に飲んでくれた。どうやら、苦かったようで「苦いです」と顔を歪ませながらそんな感想を漏らしていた。
すると、ローラの体の周囲を緑色のオーラが一瞬だけ光った。それ以外の真新しい変化は見られなかったが、ちゃんと解析でローラの状態一覧を見ると、白血病の表示はなくなっていたので、エルフの薬が効いたのだろう。
「う、うぅ……」
「ロ、ローラ!」
「しっかりするんだ!? ローラ!」
「ど、どうしたの!?」
「手遅れだったというのか!?」
ローラの容体が急変し、俺、マーク、クラリス、ランドールの順に彼女に声を掛ける。その場にいた全員が最悪の事態を想定する中、ローラの弱々しい声が静寂を打ち破る。
「お腹が、空きました」
その言葉を聞いた瞬間、そこにいた全員がズッコケてしまい、いいオチが付いた形となってしまった。病気の方はもう大丈夫のようだが、これから失った体力を回復させるため、安静が必要となるだろう。
こうして、ローラを苦しめていた病気は完治し、これで俺の役目も果たすことができたのであった。
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「じゃあ、またな」
「兄さま、本当に行ってしまうのですか?」
「お兄ざまぁぁぁぁぁああああああ」
数日後、俺はマルベルトの屋敷を後にするべく、家族に見送られていた。ローラが完治した日に出て行こうとしたのだが、家族に強く引き留められ、せめてローラが一人で出歩くことができるようになるまでいてほしいと懇願されてしまったのだ。また病気がぶり返しても困るので、念のために数日滞在を延長することにした。
その間に特にトラブルが起こることもなく、奴隷たちの育成やルルミーレの今後について話し合ったりいろいろ細々としたことをやっているうちにあっという間に数日が経過し、特にローラ問題なく回復したので、マルベルトの屋敷を後にする運びとなった。
「ローラ。ロランちゃんにはロランちゃんのやるべきことがあるのよ。そうやって、いつまでも我が儘を言うんじゃありません」
「うぅ……」
母親クラリスの言葉でようやく手を放してくれたが、俺の服にローラの涙やら鼻水やらが付いてしまって内心なんとも言えない思いだったが、そういったことは口に出さず、俺は家族に別れを告げる。
「それじゃあ、俺は行く」
「うむ、達者でな」
「何か困ったことがあったらいつでも戻ってきてもいいのよ? ここはあなたの家なんだから」
「兄さま、お気をつけて」
「お兄ざまぁぁぁぁあああああ」
家族の温かい言葉に見送られながら、俺はマルベルト領を後にした。最後まで俺を引き留めようと縋り付いてくるローラをマークが抑え込んでいたのが印象に残ったが、今後ワイン造りについて指導や経過観察のため何度かここにやってくるということは告げていない。“許せ、ローラ。また今度な”である。
瞬間移動で王都の屋敷に戻ってきた俺は、すぐさまソバスを呼び出す。ローラの一件が解決したのはよかったが、また新たな問題が浮上しているからだ。
「お帰りなさいませ」
「ルルミーレの様子は?」
「特にお変わりなく冒険者活動に勤しんでいるご様子です」
「そうか」
あれから、ルルミーレの扱いをどうするかという話し合いが執り行われたが、俺としてはリリエールのところで働くのがいいかとも思ったが、二人の大反対を受けてしまう。俺の傍を離れたくないルルミーレと厄介の種でしかない彼女の世話をしたくないリリエールの利害関係が一致した結果、話し合いは平行線を辿っていた。
そんな中、気晴らしと生活費を稼ぐべく、冒険者ギルドで冒険者活動を行ったところ、それが性に合っていたようで、今では冒険者として活動をしている。元々、身体能力に関してはそこらへんの冒険者よりも秀でており、見た目の美しさも相まって彼女が冒険者たちに受け入れられるまでそれほど時間は掛からなかった。
最初の内は彼女の美貌にちょっかいを掛けてくる輩もいたが、Aランク上位の実力を持つ彼女に返り討ちに遭い、今では誰も彼女にちょっかいを出そうとする者は皆無だ。冒険者ギルドとしても実力ある冒険者の加入にもろ手を挙げて喜んでいるほどで、今では彼女の参入を快く思っている。
そして、他の冒険者たちも彼女の美しさと実力に傾倒し、遠巻きから眺める憧れのマドンナと化しており、いつか彼女と依頼を受けてみたいことを夢見る男たちで溢れ返っていた。
一方の女性冒険者はそんな彼女よりもそういった態度を取る男たちに白い目を向けており、ルルミーレの参入自体に反感的な者はいなかった。
「少しあいつの様子を見てくる。引き続き家のことを頼んだ」
「かしこまりました。お気をつけていってらっしゃいませ」
平穏なエルフの里から騒がしい人間の住む都会へと引っ張り出してきた手前、そのまま放置するわけにもいかず、俺はルルミーレの様子を見に冒険者ギルドへと向かった。
ギルドに入ると、そこには嬉々としてギルド職員から報酬を受け取っている彼女の姿があり、その様子を遠巻きから見ている冒険者たちという不思議な構図が成り立っていた。
多少異様な光景だが、ルルミーレが声を掛けてきた冒険者にやったことを思えば、仕方のないことなのかもしれない。
「調子はどうだ?」
「あら、ローランド君じゃない。見ての通りよ」
そんなルルミーレに声を掛けると、先ほど受け取った報酬の入った皮袋を掲げ、得意満面な笑みを浮かべてきた。その顔は実に満足気で、エルフの里にいた時のようなどこか陰のある雰囲気はなくなっていた。
それだけでもエルフの里から連れ出した甲斐があったのだが、これから彼女の処遇をどうすべきかと、改めて考えてみた。
まず、このまま冒険者として活動を続けてもらうという選択肢だが、これは難しいと考えている。理由としては、現在のルルミーレの冒険者ランクはCランクで、破竹の勢いでランクが上がっているが、これBやAともなればパーティー単位での活動を冒険者ギルドは提案してくることが予想される。
元々Aランクだったギルムザック達ですらパーティーを組んでいたことを考えれば、いくら個人の能力がずば抜けていようともギルドとしては複数人での活動を推奨してくるのは避けられない。
だが、種族が珍しいエルフということと、彼女の容姿が相まって彼女を仲間にしたいと考える冒険者は多数いるだろう。もちろん正当な理由であればいいのだが、そのほとんどが邪な考えを持つものばかりで、俺としては賛成しかねる。
かと言って、俺について回られてもフットワークの軽い俺について回られるのは足手纏いになりかねないし、場合によっては俺でも対処できないような事態になった場合において彼女を庇いながらその事態に対処するのは困難を極める。
冒険者もダメ、俺に付いて回られるのもダメだとなれば一体何ならいいのか。それを考えた結果、俺は一つの答えを導き出す。
「少しいいか。大事な話がある」
「え、ええ。いいわよ」
俺の真剣な表情を見て何かを察したルルミーレが神妙な顔で頷く。そして、俺は人気のない場所へと移動すると、彼女にあることを投げ掛けた。
「俺のものにならないか?」
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