ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
327話「面倒なことになったので、一旦帰ります」
「た、頼む! 俺を弟子にしてくれ!!」
またこれである。シルヴァスとの一件は何とか片が付き、数日が経過した。あれから素行の悪い冒険者が絡んでくることもなく、その点については問題ない。だが、それとはまた別の問題が発生していた。
「ふん、駆け出し冒険者風情が先生に教えを乞うなど笑止千万!! 精々己の不相応さを知るがいい!!」
「師匠に負けたお前に言われたくはない! それに、誰に教えるかは師匠が決めることだ」
あれから、シルヴァスとの決着がついたと思ったら、どうやら俺の実力と己の無力さを知ったシルヴァスが俺に弟子にしてくれと頼み込んできたのだ。その様子を見ていた冒険者たちも我も我もと弟子入りを志願している状況であり、中でも熱烈なのが俺に負けたシルヴァスとダンジョンで出会った駆け出し冒険者のジャスパーだった。
最初は俺がSSランクの冒険者と知って半信半疑だったが、その実力を知ってからは俺に陶酔するようになったらしく、彼もまた俺の弟子に志願する結果となった。
「言ったはずだ。俺は弟子を取る気はない」
これ以上面倒なことを抱え込むのは御免ということで、弟子に志願してきた冒険者たちはすげなく断っていたのだが、この二人はそれでも諦めきれないのか俺の顔を見るたびに弟子にしてくれと懇願する日々が続いていた。
ダンジョン攻略については、この数日間で十階層以上進めており、イグールが寄こした依頼もそれなりに消化できている。今日もその依頼の報告を兼ねて冒険者ギルドへとやってきているのだが、いい加減付きまとわれるのはうんざりになってきた。
「そんなこと言わないでくれよ師匠!」
「そうです先生! 是非とも俺に冒険者の極意を!!」
何の極意を教えろというのか? そんなものがあるのなら俺が教えてほしいくらいだ。
そんな二人を無視して依頼の報告に向かう。受付嬢に依頼書数枚とそれに記載された素材を納品し、ギルドを後にする。シルヴァスとジャスパーが俺の後を追いかけてこようとしたが、同じパーティーのヘザーやシルに引き留められて追ってはこれなかったようだ。
あいつらのことはともかくとして、ここ数日で変わったことといえばトーネル商会だ。新たに首都カフリワで営業を開始した新参の商会だが、扱う商品の質が良いということで庶民から富裕層までその名が知れ渡り始めており、日を追うごとに売り上げもかなり好調という報告をトーネルから受けている。
新たに雇った派遣人材の女性たちや孤児たちも徐々に仕事に慣れ始めてはいるものの、まだまだ一人前になるには時間が掛かるといった様子で、そこについては傍観するほかない。
「さて、今日はこれで休むとしよう」
今日の仕事も終わり、俺は宿に戻って休もうとしたのだが、ここで新たな問題に直面していた。それが何かといえば、野次馬問題である。
例えば、街を歩いていても俺がSSランクの冒険者であるとバレる前よりも視線を感じることが多くなったし、声を掛けられる確率も確実に上がっている。まるでテレビに出ている芸能人のような気分に浸れるが、知らない人間から声を掛けられるというのは存外に疲れるものであるとこの時になって思い知らされることになった。
何をするにも常に人の目があるということは、悪いことはできないし、ちょっとしたことでも噂になったりする。まさにスキャンダルである。どうしたものかと悩んだ結果、俺は一つの決断をすることにする。
翌日、ギルドマスターのところへやって来た俺は、現状を説明しこのままでは活動に支障が出ることを報告する。
「そうか、わしらとしては残念じゃが、仕方がないのう」
「そういうことだ。とりあえず、残ってる依頼はこれだ」
「随分と少ないのう。これだけでもお前さんが来てくれて助かったわい」
残っている依頼書を返すと、その少なさに驚いていた。俺としてはできることならすべて終わらせたかったが、今回ばかりは諦めることにする。
そのあと簡単にイグールと挨拶を交わし、そのままギルドマスターの部屋を後にしたのち、瞬間移動でカフリワへと戻ることにする。
一応、暇を見つけては首都には戻ってきているので、久しぶりという感覚はないが、とりあえずモルグルのダンジョン攻略は一旦これで終了とする。
一度確認のためトーネル商会へと向かおうとしたその時、俺の目の前に見覚えのある水色の紙が出現する。この紙は俺の弟マークに渡してある緊急連絡用の紙で、自分でどうにもならなくなった時のみ使うことを許しているものだ。
「なになに。“兄さま助けて。とにかく、戻ってきて”か……」
事態がひっ迫しているのか、詳しい説明は記載されておらず、とにかく戻ってきてほしい旨のみが書かれていた。
どんな状況なのかわからないため、判断のしようがないが、あのマークでも対処できない何かが起こったということは間違いない。
「なら、兄として戻らねばなるまい」
とりあえず、どんな状況になっているのか確認するべく、俺はすぐにマルベルト領へと瞬間移動で戻ってきた。
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