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ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく

こばやん2号

324話「怒涛なる攻略」



「よし、攻略再開だ」


 再びダンジョンへと戻ってきた俺は、四階層から攻略を再開することにする。昨日ちょっとだけ見た感じ、フィールドは森で出てくるモンスターは羊型モンスターのメェメェという少々ミスマッチな組み合わせだが、それもダンジョンだからという理由で片付けられるで、あまり気にしないことにする。


 メェメェから手に入る素材も肉と毛綿というアイテムで、肉は食用毛綿は衣類などの生活品として流通することが多いらしい。といっても、四階層に来られる冒険者は多くなく、その流通量も限られている。


 そういえば、ギルドマスターのイグールが寄こした依頼書の中にこのメェメェの毛綿の納品依頼があったはずだ。確認してみると、やはり毛綿の依頼書があったので、しばらくメェメェを乱獲することに勤しむ。


 ダンジョンを進みながらそれなりに毛綿を回収している間に、気が付けばボス部屋に到着していた。


 今日は朝早めにダンジョン攻略に入っているためか、順番待ちをする他の冒険者はおらずそのまま挑むことだできるようだ。


 ボス部屋に入ると、そこにいたのは予想通りのメェメェを二回りほど大きくした巨大メェメェで、名前も【ジャイアントメェメェ】というありきたりな名前だった。


 今まで戦ってきたこのダンジョンに出現するモンスターの中では動きが俊敏だったが、それでも俺にとってはゆっくりに動いているようにしか感じず、ものの数分で撃破することができた。


「次は何の肉だ? 熊か、それとも鹿? いや、猪という線もあるか」


 次は一体どんな肉がドロップするのだろうかと内心で楽しみに思いつつ、早々に四階層の転移ポータルを解放し、五階層へと侵入する。


 結論から言わせてもらえば、全部だった。なんとそこから五、六、七階層、と連続で攻略したが、順番に鹿型の【バンバンビ】、猪型の【ボアボーア】、熊型の【ベアベア】というモンスターが出現した。


 ボス自体も各階層毎に出現するモンスターを大きくしたものばかりで、当然ながらその程度の相手に苦戦する訳もなく順調に攻略階層を更新し続けた。


 ちなみに、手に入ったのは肉と角と牙と毛皮というありきたりのものばかりだったが、いくつかの素材が依頼に指定されているアイテムだったため、一定数を入手するべく乱獲を行っている。


「次は八階層か……うーん、予想は色物として蛇かカエル、あとは魚肉の線で魚という可能性もあるか」


 次はどんな肉が手に入るのだろうと予想するゲームを行いながら、八階層へと歩を進める。八階層は特別なフィールドではなく、洞窟型のようで一件変わった様子はない。だが、それが落とし穴と言わんばかりに、一つだけ追加されたギミックが存在した。


「む、この感じは罠か? よっと」


 感覚操作によって周囲の様子を探りながら進んでいると、俺の網に引っ掛かる気配を感じ取った。試しに拾った握り拳大の石を転がしてみると、罠が発動し落とし穴が出現する。穴を除いてみたが、下には針などの危険なものはなく、どちらかというと足止めが目的の罠のようだ。


 特に問題はないので罠を避けつつ進むと、モンスターが出現する。どんな相手かと思い身構えたが、そこに現れたのはなんとカエルだった。


 どうやら、俺が予想した通り今度はカエル肉が手に入りそうと思いつつ、カエルの詳細を調べると【ゲコゲーコ】という名前で思わず吹いてしまう。


「ネーミングセンスが酷いな。この取ってつけた感はどうにかならんのか?」


 モンスターたちのあまりにあまりな名前に思わずそんなことを呟く。カエル自体の強さは、今まで戦ったモルグルのダンジョンに出現するモンスターの強さに当てはめれば、強くはなっている。だが、俺とまともに戦うことができるレベルかと言われればまだまだ役不足といったところで、まったく苦戦することなく倒せている。


 そんなこんなで、八階層のボスを攻略し終えたところで昼飯時となったため、今まで手に入れたモンスターの肉の試食を兼ねた昼食を取ることにした。


「とりあえずは、素材の味を確かめたいからすべて塩焼きで食べるか」


 などと呟きながら八階層の転移ポータルを解放する。そして、その近くでストレージから調理道具を取り出し、肉の調理を行った。ただ肉を焼くだけなので時間を掛けずに調理が完了する。


 手を合わせていただきますをすると、一つ一つの肉を吟味していく。ちなみに、すべて肉串にしてある。


 まず、羊や鹿や猪や熊は前世で食べたことのある羊肉、鹿肉、猪肉、熊肉と似たような感じで、特に熊肉は癖や独特の臭いがあるため、料理に使用する際はひと手間が必要だ。カエルは鶏肉に近い淡白な味わいで、これも様々な料理に合いそうだ。


 各階層のボスも肉をドロップしていたので、お試しで食べてみたところ、通常モンスターの肉よりも脂が乗って旨味があった。熊肉は相変わらず臭いがあったが……。


 何はともあれ、各階層の肉を堪能した俺は、そのまま九階層の攻略に乗り出す。九階層も八階層と同じく広々とした洞窟型の造りをしており、ダンジョンとしてはスタンダードなものとなっている。もちろん罠は健在で、新しく弓矢が飛んできたり毒ガスが噴射されたりする罠が登場した。


「さあ、ここの肉はなんだ?」


 もはや、モンスターではなく肉と呼称している辺り、このダンジョンは俺の中で肉ダンジョンと認識されつつあるが、九階層のモンスターは意外にも狼型の【ガウガウ】というモンスターだった。


 灰色の毛並みに四足歩行の体躯を持っており、狼としてはよくいるタイプのものだったが、ネーミングは相変わらず酷いの一言に尽きる。


「狼の肉か、前世にいる狼は動物園以外ではいなかったからなー」


 狼の肉に関しては以前にフォレストウルフの肉を食ったことがあったが、日本人としてはあまり馴染みのない味であったため、個人的には積極的に食べたいものではない。……まあ、美味しかったんだけどね。


 などと、考えているとこちらに気付いたガウガウが俺に襲い掛かろうと疾走してきていた。考え事の邪魔になりそうだったので、水の牢獄に閉じ込める【ウォータープリズン】を使ってお黙りいただいた。しばらくすると、ガウガウがお亡くなりになり残ったのはガウガウの肉と牙だけであった。


 依頼書を確認すると、ガウガウの牙と毛皮が高いらしく、結構な数を要求されていたのでしばらく狼狩りをすることにした。


 そんなこんなで、狼狩りをすること数時間後、十分な数が集まったのですぐにボス部屋と向かいこれを瞬殺する。ボスは【ガオガオ】という名前の大きな狼でだったが、氷魔法で氷漬けにしてそのまま殴り砕いたので、詳しい情報は覚えていない。ちなみに、ドロップは牙と毛皮と魔石だった。


「そろそろ夕方になるな。冒険者ギルドに戻って依頼の報告をしないとな」


 今思い出したのだが、前回の依頼分を報告し忘れたままダンジョンにやってきてしまったので、今回は忘れずに報告をしなければならない。そう思った俺は、九階層の転移ポータルを解放するとそのままダンジョンから街へと帰還することにした。まさか、俺がいなくなった後で冒険者ギルドでちょっとした騒動が起きているとも知らずに……。

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