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ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく

こばやん2号

321話「三階層と懐かしき我が弟」



「やっぱこうなるのか」


 二階層のボスをあっさりと倒した俺は、転移ポータルを解放しすぐさま三階層へと向かった。ちなみに、二階層のボスは【ピググー】という一階層のボスと同じく取ってつけたような名前で、これがオンラインゲームであれば製作者サイドの職務怠慢が窺えるところだ。


 そして、そのままの勢いでやって来た三階層は、荒廃した大地が広がる荒野のようなフィールドで、そこにいたモンスターは俺の予想通り牛型のモンスターだった。


 調べてみると、そのモンスターは【ギューモ】という名前で、体長は二メートルほどの茶色い毛並みの鋭い角を生やした牛型のモンスターだった。一瞬、牛型のモンスターで有名なミノタウロスではないのかと思ったが、こういうのは気にした方が負けな気がしたので、それ以上は考えないことにした。


「モオー」

「こいつも突進か。ここのダンジョンのモンスターは、本当に猪突猛進が好きらしいな」


 二階層のピグーもそうだったが、四足歩行型のモンスターは前足を地面に擦り付ける仕草を取ってくることがあり、どうやらそれは突進をするという連中の意思表示でもあるようで、わかりやすいといえばわかりやすい。


 しかし、そんなわかりやすい前動作があって突進という直線的な攻撃が当たる訳もなく、ギューモの突進が俺に当たることはなかった。


 それから、ドロップしたギューモの素材は肉と角のようで、すぐに肉の味を確認したが、極上なモンスターの肉とはいかないまでも、それなりに美味しい肉のようで、一般流通している肉としては十分な味の肉であった。


 当然の如く三階層にいたギューモ狩りが始まり、かなりの量のギューモの肉を入手できたので、これを使ってまた新たな料理を作っていきたいところではある。味としては、今のところマンティコアから入手できる極上なモンスターの肉よりも上等なものは手に入らないので、その肉を使うのが一番だが、一般に流通させるにはこの肉の希少性などを考えれば騒ぎになることは目に見えており、それこそ貴族などの権力者が目の色を変えてやってくることは確実だろう。


 俺としても、そんな面倒なことになるリスクを背負って世に出したいものではないので、味としては数段劣るもののそれなりの味が出せる肉であるギューモの肉が手に入ったことは僥倖であった。


「まあ、俺は基本的に販売はやりたくはないけどな」


 コッカトリスの肉を使った唐揚げを屋台販売したことは、まだ俺の記憶に新しいが、あれは異例中の異例であって今後ああいった販売自体は他の者に委託する形を取るだろう。


 そもそも、飲食店系の店は数を売って利益を出す薄利多売方式が基本であるため、希少な素材を冒険者ギルドや商業ギルドに売り飛ばす方が一回の取引で大金をゲットできるので、楽なのだ。


 そして、クッキーや唐揚げのレシピについてはすでに商業ギルドに譲渡しており、その金額だけでももはや金に困ることはない。それどころか、月々に信じられないほどの額が懐に入ってきているため、これ以上仕事をする必要性がないのである。まさに不労所得万歳な状態だ。


 それでも、決して引きこもりの生活を送らないのは、俺の前世が仕事漬けの日々だったことに影響している。毎日毎日同じ仕事をこなす日々は、退屈はしなかったが、どこか虚しいという感情が浮かんでいた。だからこそ、自由を得た今生では世界を見て回ったり、自分の好きなことをやりたいと思ったのである。


 尤も、前世の記憶を取り戻した際、貴族の後継者という運命が待っていたのだが、その問題も弟マークにすべてを任せることで解決した。俺は良い弟を持った。


 だから、俺自身が直接領地経営に携わることはないだろうが、あいつでも解決できないような問題で困っていることが起こったら、連絡が来たときのみ助けてやらんこともないと考えてはいる。


「まあ、あいつなら問題なく領主をやっていけるだろう。そのための秘策は何個か教えてあるしな」


 現当主は俺の今生の父親であるランドールだが、マークがその地位をすべて引き継いだ後にいくつかの事業を始めろという指示を出している。その功績でおそらく男爵から子爵に陞爵されることは確実だと踏んでいる。


 貴族にとって最高の栄誉の一つとして、国に貢献し誰が見ても大きなことを成し遂げたと認められ、国王から陞爵を賜ることがある。マークに対して最終試験という訳ではないが、俺の弟としてそれくらいのことをやってもらわないと、俺の弟を名乗ることは今後苦しくなると考えている。


 それほどまでに俺が今までやらかしてきたことが大き過ぎるということもあるが、俺としては後悔も反省もするつもりはない。だが、もう少しスマートにできなかったのかという思いはなくもない。


「とにかく、精々俺の身代わりとして頑張ってくださいな。我が弟よ」


 普通はそんな面倒なことを押し付けられると嫌な顔をするものだが、何故だか俺の頭の中にいる幻想のマークは「はい! 必ずやロラン兄さまのお役に立って御覧にいれます」という輝かしい笑顔でそんなことを言ってくるような気がした。


 そんなことを考えていたせいか、今やっていることが一区切りつけば故郷にまた顔を出しに行くのも悪くないと思いつつ、俺は片手間にギューモを狩っていくのであった。

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