ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
318話「最初のモンスター」
冒険者とのいざこざがあったが、なんとか無事にダンジョンに入ることができた。ダンジョンはスタンダードな洞窟型のダンジョンではあるものの、大人数人しか通れないような狭苦しい広さではなく、荷馬車が数台ほど通れるくらいの大きいものだった。
どうやら迷路型の洞窟ではなく、ゲームで言うところのオープンワールド仕様のダンジョンとなっているらしい。それが証拠に、通常であれば見通しの悪いはずのダンジョン内は広々とした視界で、遮蔽物の類もまばらに岩がある程度でしかない。
「モンスターは……あいつか?」
そこでは、既に先に入っていた駆け出し冒険者が真剣な表情でモンスターと戦っていたのだが、戦っている相手に違和感を覚えた。なんとその姿はまるっきりヒヨコだったのだ。
体長は三十から四十センチと通常のヒヨコと比べれば四倍以上もの大きさとなるが、見た目はまんまヒヨコである。超解析で調べた結果そのヒヨコは【ピヨヨ】というヒヨコ型のモンスターであり、このモルグルのダンジョン最弱のモンスターだということがわかった。
試しにピヨヨと戦ってみることにしたのだが、これが予想に反して戦い辛かったのだ。その理由としては、その愛くるしさにあった。
「ぴよぴよぴよー」
「……」
とてとてとした歩調で一生懸命俺に襲い掛かって来ようとする姿は、襲うというよりも愛嬌を振りまいているようにしか見えず、デコピン一発を食らわせてやると、そのままお亡くなりになってしまった。
その時のピヨヨの断末魔の叫びは、こちらに対して罪悪感を抱かせるには十分すぎるほどで、心が痛んだ。だが、ピヨヨの本当の恐ろしさはその愛くるしさではないということがのちに判明することになる。
「ぴよぉー!」
「おっと。なるほど、伊達にダンジョンのモンスターというわけではないらしい」
よちよち歩きをするだけの愛玩モンスターかと思われたピヨヨのだったが、こちらが射程内に入ったと見るや、すぐにその尖った嘴をこちらに向けながら突進してきた。
想像してみてほしい。体長が三十センチのヒヨコが時速五十キロで突進する姿を。その突進力は、おそらくコンクリートの壁に穴を開けるほどの威力を秘めているだろう。
だからこそ、最初に出会った駆け出し冒険者は真剣な表情で戦っていたのだ。見た目に騙されて油断すれば、やられるのはこちらだということを知っているが故に。
「ふむふむ、こりゃあ。難易度自体はオラルガンドのダンジョンよりも高そうだな」
俺が冒険者ギルドで仕入れた情報によると、モルグルのダンジョンの総階層数は、五十階層と比較的浅い部類に入ってはいるものの、そのほとんどが広大なマップが広がっている場合がほとんどで階層毎にいるモンスターも下手をすれば大怪我をする可能性を秘めているモンスターばかりらしい。
ちなみに、毎年モルグルのダンジョンで犠牲となる駆け出し冒険者のうち、その被害となる要因の約七割が先ほど戦ったピヨヨによるものだということらしい。可愛い顔して残酷な奴だぜ。
しかしながら、常人では脅威となるその突進攻撃も俺からすればスローモーションの動きに等しく、仮にその突進を食らったとしても、大型犬にじゃれつかれた程度の衝撃くらいしか感じないため、まったくと言っていい程脅威とはなり得ない。
「ぴよぴよぴよー」
「ペチン」
「ぴよぉ……」
再び俺に襲い掛かって来ようとするピヨヨをデコピンで撃退する。ピヨヨから取れる素材は【ミサイルバードの肉】という食材か、【ミサイルバードの嘴】が手に入るようだ。個人的にはヒヨコなのにバードという名前が付くことに違和感を覚えた。
しばらくピヨヨを狩り続け、一定数の肉と嘴を手に入れたところで、適当な岩に腰を落ち着ける。俺が休憩している場所は、四方を岩に囲まれた袋小路のような造りとなっており、モンスターも一つの出入り口からしかやってこないため、不意を突かれてもすぐに対処が可能となっている。
そんな場所でどうして休憩しているのかといえば、新たな食材が手に入ったので、実際に調理して食べてみることにしたからだ。
「ローランドのイケイケクッキングのお時間です! ……結構頻繁にやってるなこれ」
などと言いつつ、ストレージから七輪に似せて作った七輪もどきを取り出すと、そこに網を張ってピヨヨの肉を調理することにする。
まずは素材そのものの味を確かめるべく、味付けは塩のみとし、純粋な焼き鳥として食べてみることにした。細い串に一口サイズのピヨヨの肉を刺し、味付けのため塩をぱらぱらと振りかけていく。前世で見た外国人が高い位置から斜に構えた状態で振りかけることはせず普通にだ。
「てか、あの振りかけ方に意味はあるのだろうか?」
などと、今となっては確認のしようがないことを呟きつつ、仕込みが完了した肉を網の上に乗せて焼いていく。ジュウっとした良い音をさせつつ、香ばしい肉の香りを漂わせながら、いい具合に焼き色が変化していく。
中まで火が通っていき、こんがりとしたきつね色に変わったところで、焦げないうちに網から上げ、簡単だがピヨヨの焼き鳥の完成である。
「では、いただこう。あー」
「お前、何やってんだ」
完成した焼き鳥を試食しようとしたら、それを阻むように声が聞こえてきた。嫌な予感がしつつ声のした方を見ると、そこには少年たちが訝しげな表情でこちらを見ていた。
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