ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
311話「少年たちの使いどころと餌付け(笑)」
時刻は夕方になる少し前くらいになっており、俺は再びあの少年たちのいる空地へとやってきていた。
新たに立ち上げる商会の従業員は確保したので、商会の営業については彼女たちだけで事足りる。では、この少年たちにやってもらう仕事をどうしようか考えた時、裏方作業に回ってもらうことを思いついたのだ。
未だ幼い少年少女たちに、客相手の接客をさせるのは少々難易度が高い。しかしながら、年若い彼らであれば物覚えも問題ないだろうし、やってもらう仕事は同じことの繰り返し作業になることが多いため、必要なのは根気とやる気なのだ。
日々の生活に困窮している彼らであれば、衣食住の保証と適正な給金を支払えば真面目に働くのではないかという目論見だ。孤児としてぎりぎりの生活を送っている以上、裏切れば元の生活に戻ることになるため、裏切りの心配もなく、多少きつい仕事だったとしても泣き言を吐かずにやってくれそうという算段も含まれている。
「おい、どこに行っていたんだ!?」
「ちゃんと待っていたようだな」
「お前が待ってろって言ったんだろうが!」
空き地に戻ると、すぐにあの時突っかかってきた少年がやってきて。どこに行っていたんだと問い詰めてくる。彼の問いを適当に流しつつ、真面目な顔で俺は問い掛けた。
「ところで、お前たちにやってもらいたい仕事がある」
「仕事? 仕事って一体どんな仕事だ?」
「仕事の内容は、物作りだ。今度新しい商会を始めることになったんだが、物を作る人手が足りていない。そこで、お前らにそれをやってもらいたい」
俺はその場に集まっていた少年少女たちにできるだけわかりやすく説明する。衣食住を保証したうえで、相応の給金を報酬として支払うことや、嫌になったらいつでもやめても構わない旨を伝えた。
警戒心の強い孤児であるが故か、それとも自分とそれほど歳の違わない俺の言うことが信じられないのか、その表情は怪訝なままであった。
今日会ったばかりの人間のいうことを信じろというのが無理な話だが、俺としては騙すつもりはなく真実を述べているだけなので、彼らが嫌がるのなら別の人材を新たに見つけるだけだ。
「本当に……」
「ん?」
「本当なんだろうな? 住むところと食べるものと着るものを用意してくれて、ちゃんと働けばお金が貰えるっていう話」
「信じないならそれでもいいさ。だが、ここで生活を続けていても待っているのは飢えによる餓死か、犯罪者として捕まり処刑されるかだと思うがな」
「……」
俺の話を聞いてどうするか迷っている様子だったが、俺の言っていることが未だに信用に値しないものだと考えているようで、どうするべきか悩んでいる者がほとんどだ。
こういった話が信用できるかどうかを確かめる方法はなく、かといって今の自分たちの状況を考えれば、今の生活を続けていても先はないということもなんとなく理解しているのだろう。
であれば、騙されたと思って相手の提案を受けてみるのも一つの手かもしれない。だが、それで奴隷や命に係わるとんでもなく危険なことをやらされる可能性もあり、疑いを抱きだしたらきりがないのだ。
――ぐぅ~。
そんな疑心暗鬼な状態で悩んでいる彼らだったが、どこからともかく腹の虫が鳴る音が聞こえてくる。俺の作ったスープを食べたとはいえ、食べ盛りの子供たちの腹を満たすには足りなかったようで、お腹を鳴らした少年が腹を押さえて赤くなっている。
「お前、こんな時に……」
「し、しょうがないじゃん。お腹空いたんだもん!」
「腹が減ってんのはお前だけじゃないんだ。少しは我慢しろよ」
周りの子供たちがお腹を鳴らした少年を責め立てていたが、そんな下らないことで喧嘩をする体力があるのなら、無駄にせず取っておくべきだと、俺は現実的なことを考えていた。
すると、俺に話し掛けてきた少年も同意見だったようで、「無駄な喧嘩をすんなよ。余計に腹が減っちまうぞ」と正論を言うと、途端に静かになった。今まで観察してわかったが、どうやら孤児たちの間で一番年長であろう彼がこのグループのリーダーらしい。
「腹が減っているのなら、まずは飯にしようか。でなきゃ、難しい話もできないだろうからな」
「……」
俺の言葉に、またご飯にありつけると目を輝かせる子供と、自分たちのような孤児に食事を与える同世代の子供である俺を不審がる子供とで別れたが、食事を与えてくれるのならもらうものはもらっておこうというスタンスを貫くようで、概ね俺の言葉に期待を膨らませている様子だ。
だが、リーダーの少年だけが「こいつは一体何がしたいんだ?」という視線を向けてきており、どういった意図で俺がそういうことをしているのか見極めようとする意志が伝わってきた。
「さて、お前らさっきスープを飲んだ時と同じようにテーブルに座って待ってろ。おい、さっきの食事で吐いたやつはいなかったか?」
「……そんなやつはいない」
「そうか。なら、多少は腹に溜まるもんでも大丈夫そうだな。お前も座って待ってろ」
「……」
俺の言葉に反論したそうな顔をしている少年だったが、彼としても料理を出してくれるのであればそれを断る理由はどこにもないので、素直に俺の言うことを聞いて着席する。こういう時だけ素直なのは、どこか可愛げがあって子供らしいと思ってしまう。まあ、俺も子供だがな。
さて、腹に溜まる料理ということで、まずは肉料理は確実に入れたいところだ。肉そのものをただ焼いただけのステーキもいいが、やはり子供が好きな定番料理としてハンバーグにする。
炭水化物系の料理としてお米の方がいいとは思うが、西洋的な文化が根付いているこの世界では米よりもパンの方が喜ばれそうだったので、主食はパンを選択する。
栄養バランス的に、必要なビタミンやミネラルを確保させるための新鮮な野菜を使ったサラダもメニューに加え、最後にデザートとして大量に在庫を確保しているスイートポテトを振舞うことにした。
作り方はそれほど難しくはないため、ものの三十分ほどで完成する。一番時間を要したのは、ハンバーグの中まで火を通す火入れの作業だった。
「よし、できた。おあがりよ」
二回目ともなれば慣れたもので、最初ほど遠慮することなく子供たちが料理を口にする。すると、黙々と勢い良く食べ始め、すぐに完食してしまった。おかわりを頼みたい奴がいないか尋ねると、ほとんどの子供が手をあげたため、さらに追加で作ってやった。
俺も自分用の食事を用意し、一通り満足した後、改めて先ほどの話をすることにしたのだった。
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