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ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく

こばやん2号

310話「いつもの人材確保」



「いらっしゃいまし。ようこそ【ガガール人材派遣商会】へ」


 三回目ともなればもはやいつもの作業であると言わんばかりに、俺はトーネルを連れてカフリワの奴隷商会へとやってきた。奴隷商会といっても、ここブロコリー共和国では奴隷に対しての規制が激しく、主に借金や犯罪を犯して慰謝料や罰金が支払えない人間を雇い入れ、人手を欲している相手に状況に合わせた人材を派遣する派遣会社のような業種として存在している。


 一応、信頼のおける商会ということでトールに聞いてみたところ、ガガール人材派遣商会という名が挙がったので、さっそく向かうことになったのだ。


 商業ギルドのギルドマスターがおすすめしただけあって、外装はとても商会を営んでいるとは思えないほどに綺麗な造りをしており、さながら病院や高級飲食店と言われた方がしっくりくるほどの清潔感を保っていた。


「新しく接客と護衛のための人手を雇いたい。条件は全員女であることと、反抗的でない者。この二つだ」

「かしこまりやした。少々お待ちくだせぇませ」


 商会の店員はそう言うと、すぐに奥へと引っ込む。しばらく待っていると、商品となる女性十数人と共に、身なりも恰幅もいい中年の男性が現れた。男性は俺たちに恭しく一礼すると、奴隷商人が話す独特の喋り方で話し始める。


「お初にお目にかかりやす。わてくしはこの商会の代表を務めるガガールと申しやす。以後お見知りおきくださりませ」

「そうか、今回は世話になる。では、さっそく見せてもらおう」

「どうぞご存分に」


 成人していない少年である俺が横柄な態度を取っても眉一つ動かさない辺り、商人として最低限の能力を持っていると言えるが、時折こちらを窺うような色を含んだ視線を向けてくるのはいただけない。それでは、こちらが何者なのか探りを入れていると喧伝するようなものだ。


 しかも、この国では奴隷に規制が掛かっている以上、表上は奴隷商会を名乗ることはできない。なるほど、だから外面だけでも良くしようと、綺麗な外装をしているわけか。


 連れてこられた女性も奴隷独特の貫頭衣一枚というわけではなく、ちゃんとした一般的な平服を見に着けており、清潔さを保つために日に一度水浴びも行っている様子で、奴隷独特の何日も風呂に入っていない体臭も漂ってくることはない。実にクリーンな職場環境だ。


 女性たちも皆悲観的な表情を浮かべていることもなく、どこにでもいる普通の女性で下は十代中ごろから上は三十代前半くらいの比較的若めの人材が集められている。接客ということで見目のいい者を集めたのだろう。


 その一方で、鋭い目をしたガラの悪そうな女性たちもおり、おそらくは戦闘の心得のある元傭兵か元冒険者といった感じの人間だということがわかった。彼女たちが護衛を担当する人材ということだろう。


 さっそく能力を確認すると、接客担当の人材はパラメータなどは一般的な能力であったが、接客や愛想などといった人と接することに長けたスキルを保持しており、ある女性に至っては接客がレベルMAXでカンストしているほどだった。


 逆に護衛は少し物足りないパラメータをしており、精々がDランクの上位からCランクといったところだ。……これは、強化が必要か?


「いかがでございやしょう? 一応は条件を満たしているとは思いやすが」


 一通り見て回ったところで、ガガールがそう問い掛けてくる。確かに、ステータスを確認するうえでこちらが提示した条件とは齟齬がなく、特に問題はない。護衛の実力が少々物足りない気がするが、それはあくまでも俺基準であって一般的にはこれくらいあれば護衛としては及第点だ。どこの世界にSランク相当の実力を持つ人材を護衛だけのために起用する馬鹿がいるのか。……俺です。すみません。


 とにかく、能力的にも素行的にも特に問題はなかったので、その場にいた全員と契約させてもらうことにした。


「全員と契約しよう」

「はい?」

「聞こえなかったのか? この場にいるすべての人材と契約したい。すぐに手続きを頼む」


 まさか、全員と契約するとは思わなかったようで、俺の言葉に一瞬呆けていた様子だったが、すぐに満面の笑みを浮かべると、契約の手続きに入ることになった。


 契約方法としては、家賃の支払いのように一月に幾らという形で徴収することになり、契約している人材の借金が完済されると、その後は本人が望まない限り自由雇用となるため、続けて雇いたい場合は本人との交渉が必要になってくるとのことだった。


 奴隷との違いはそこにあり、高額な価格を一括で支払えばその後所有権を主張し続けられる奴隷に対し、借金のカタとして労働を強いられている以上、その要因である借金を返し終えてしまえば晴れて自由の身となるのが、この国の奴隷制度らしい。


「それで、ご契約者様は坊っちゃんでございやしょうか?」

「いや、こっちの男で頼む」

「ロ、ローランド様!?」


 今まで一緒になって付いてきていたトーネルを親指で指し示してやると、トーネルが驚愕の表情を浮かべる。大方、人材の契約は俺がやるものだと思っていたようだが、甘い考えだったな。


 これは今まで立ち上げてきた商会の代表者全員が通ってきている道であり、商会を切り盛りしていく上では重要なことだったりする。商会の実質的な所有権については俺にあるのかもしれないが、経営のすべてを任せる以上、実際従業員と顔を突き合わせて働くのは他でもない彼らであるため、契約者は俺ではなく代表者の方が何かと都合がいいのだ。


 実際問題俺は他の場所へ出かけていることが多く、仮にいたとしても商会に入り浸っているわけではないため、契約者が必要となる急を要する案件などができた場合、俺が契約してしまうと都合が悪いのだ。


 などとトーネルが契約者であるべき理由を並べ奉ったが、本音としては俺は自由の身でいたいので、奴隷やそういった類の従者などを必要としていないというのが正直なところだ。


「というわけで、商会の代表者としてこれは必要な義務だ。商会の土地の権利の名義は俺にしてやったんだから、今回はお前が契約者となれ。それが嫌なら、土地の名義を俺からお前に変更するぞ」

「わ、わかりました。契約させていただきます」

「よろしい」


 そんな風に説明(威圧を込めて)してやったら納得してくれたようで、ぎこちないながらもこくこくと頷いてくれた。そんなわけで、トーネルが全員の契約主として登録が完了したが、まだ建物自体ができていないため、契約だけ行い後日また迎えに来ることになった。


 ちなみに、ガガール人材派遣商会に支払う一月当たりの金額は、締めて中金貨三枚ほどで、奴隷として購入するよりも遥かに安上がりとなったが、商会の売り上げとして出さなければならない金額に上乗せされるとなれば、かなりしんどい金額ではある。少なくとも一般的な商会ではかなり厳しい。


 しかしながら、今まで開発してきた商品があれば問題はないと考えており、寧ろかなりの収益が見込めるため、この金額でもなんとかなると考えている。


 ひとまずは、従業員の確保はできたので、そのまま商会を後にした。そして、俺はある場所へ向けて歩き出した。

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