ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
306話「取り調べからの単独行動」
「一体どういうことなんだ!? ちゃんとした説明をしろ!」
「説明も何も、今しただろ?」
「知り合いが誘拐されそうになったので、その落とし前として誘拐犯の黒幕のいるところに乗り込んで成敗したなどという世迷言を信じろと? そんな馬鹿な話があるか!!」
「だが、事実だ。それ以外の話をするなら、俺が嘘をつくことになるが?」
あれから、俺たちは警備兵が詰める駐屯場に連行され、事情聴取を受けていた。聞いた話では、あの豚商人は前から黒い噂が絶えず、街を守る警備兵としても商人をマークしていたのだとか。
そして、奴が人身売買に関与している疑いが強まったため、今日摘発のために突入する手筈だったらしい。だが、突入直前になって建物が爆発したかのような轟音が響いたと思ったら、俺たちが出てきて「誘拐犯の黒幕を召し捕った」と宣言してしまったというわけだ。
警備兵としての通常業務は街の治安維持のための警らと、何かしらの問題が起きた時の対処だが、今回自分たちの街に蔓延る悪を成敗できると思ったら、俺たちに先を越される形となってしまったため、あちら側としては面白くないというわけだ。要は――。
「美味しいところを持っていかれて拗ねているということだな」
「誰が拗ねとるか! 我ら警備兵がそんな子供みたいな理由で――」
「もしそうじゃないなら、簡単な事情聴取をしてすぐに解放されているはずだ。俺たちを解放しないのは、ちょっとしたやっかみもあるのだろう?」
「ぐっ」
未だに俺たちが警備兵から事情を聞かれているのは、今回の事の顛末の詳細を知りたい警備兵たちの要望というのもあるが、それは表向きの事情であって、裏では別の感情が渦巻いている。
ようやく掴んだ悪の根源を断罪できると事前に調べ上げ、ようやく突入となったところを警備兵とは無縁の街の人間でもない一般人に手柄を横から掻っ攫われたのだ。これで俺たちにいい感情を向けろという方が難しいだろう。
尤も、諸悪の根源が捕まったことは事実であり、警備兵側としても人的被害が一切なく事態を収拾できたことについては、俺たちに感謝するべき点であるということを理解しているのだろう。しかし、事前の下調べもなく自分たちのやりたかったことを奪われたということも事実であり、どちらにせよいいところを持っていかれたという感情を拭うことはできない。
「ああそうさ、我々があの男を捕まえるために一体どれだけの時間を費やしてきたことか。準備を抜かりなく進め、あと一歩のところで逮捕できると思った矢先、それをお前たちが横から掠め取ったのだ」
「そんなこと俺たちは知らん。それとも何か。お前は知り合いが酷い目に遭っているのを黙って見過ごし、その酷い目に遭わせた連中を断罪する力があるにも関わらず、何もせずに泣き寝入りしろと言いたいのか?」
「そ、そこまで言うつもりはないが……」
「それでも、手柄を取られたことに変わりはないと。はあ、もういい。事情はあらかた話し終えたことだし、これ以上あんたらのやっかみに付き合ってられん。俺たちはこれで失礼させてもらおう」
「ま、待て! 待ってほしい!!」
これ以上下らないことに巻き込まれるのは御免蒙るということで、俺はその場を後にしようとするが、何故か事情聴取をしていた警備兵が止めに入った。これ以上何か用かとばかりに少し嫌な顔を浮かべながら振り向いてやると、意外にも頭を下げて感謝の言葉を述べ出した。
「経緯はどうあれ、あなたたちが事件を解決してくれたことに変わりはない。事件解決のご協力に感謝する」
「感謝の言葉は受け取っておく。だが、忘れるな。街の治安を守る兵士というのは、自分の手柄のために街を守護しているわけではないということをな」
「……忠告痛み入る。私はライフハート。警備隊の隊長をやっている者だ。何かあれば、言ってきてほしい」
取り調べを受けていた部屋から出ていく際、捨て台詞のように言い放った言葉に返答するように、取り調べをしていた人物が名乗った。
そこで初めて相手の名前を聞いていなかったことに気付いた俺だったが、さして気にすることでもなかったため、相手の言葉に後ろ手で答えながらその場を後にした。
その後、別の部屋で事情を聞かれていたナガルティーニャとリアナを拾って、今回の一件は幕を閉じたかに見えたが、問題がまだ終わってはいなかった。
「ローランド君、これでわたしとの婚約は成立しましたね」
「……お前は何を言ってるんだ?」
「こら貴様ぁー! またそんな世迷言を吐きよってからにぃー。そこに直れ、貴様にはいろいろわからせてやらねばならないことがある!」
まったくといっていい程見当違いなことを宣うリアナに対し、俺は呆れた視線を向ける。そして、相変わらずリアナとのそりが合わない様子のナガルティーニャが、目を吊り上げ彼女と再び険悪なムードとなってしまう。
そんな茶番に付き合ってやるほど俺も暇ではない。当然、二人を置いて俺はすたすたと歩き出した。とりあえず、街の散策でもするとしよう。
首都カフリワは、かつて小国だった国々が一つの共同体として組織化された際、最も大きかった都市に人々が集結した結果、ここまでの規模に発展した経緯を持つ。
それ故、多種多様な人種と物資がこの都市に集まることになり、通常の都市にはないものがあるかもしれない。だからこそ、アレがないのかもしれない。
「まあ、こういう時は市場に行くのが定石か」
そう呟きながら、趣味の一つになりかけている料理で使う食材を見るため、俺は市場を目指して歩を進めた。
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