ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
304話「パロディからのオマージュからの黒幕判明」
「ローランドきゅん、どうしたんだい?」
俺が固まっていることに気付いたナガルティーニャが問い掛けてくる。そんな俺の視線の先には、ウインドウが表示されており、モニターの先にはリアナの姿があった。
そこは人通りの少ない場所で、本通りとは別の裏路地のような場所だ。背の高い建物に囲まれており、本通りから道筋外れているため、滅多なことでは人が通らない。
どうやら、何者かに連れ去られようとしているらしく、何とか隙をついて逃げられたものの、逃げた先が袋小路となっており、絶体絶命の状態だ。
「なるほどね。どうするんだい? 助ける? それとも見捨てる?」
「ほう、お前はこの俺にド畜生になれと言っているんだな?」
ナガルティーニャの言葉に、俺はジト目を向けながらそんな台詞を言い放つ。仮にこのままリアナを助けずに見捨ててしまった場合、彼女がそんな状況に追い込まれる要因を作った人間として、客観的視点から見た場合、その責任は十中八九俺にあるだろう。
だというのに、こいつはそれをすべて無視して俺に人の道理に反しろと提案してきている。何という鬼畜の所業か。“さすがは何百年も生きている人間は面の皮が厚いと見える”という含みをジト目で返してやると、慌てて言い訳のようなものを並べ奉ってきた。
「だ、だって。ローランドきゅんだって迷惑がっていたじゃないかっ」
「その前にお前が割って入ったから俺は何もしとらんぞ?」
確かに、リアナが俺に付いていきたいと言った時断るつもりでいた。俺はスローライフを満喫中なのだ。そこにお荷物となる人間は必要ない。
といっても、すでに俺にとって簡単には捨て置けない人間が増え過ぎている以上、リアナ一人が増えたところでどうということはないのだが、さすがに四六時中付いて回られるのはいくら美少女とはいえ勘弁願いたいところだ。
彼女なら大人なあれこれを要求しても嬉々としてやってくれそうではあるが、一人の男として彼女をそんな目だけで見たくはないし、何よりそういうことはプロに任せた方が後腐れが無くていい。……ふむ、今度そういうところにお出掛けしてみようかな?
などと頭の中でピンク色の思考を巡らせていると、ずっと言い訳をしていたナガルティーニャがモニターを見て真剣な顔つきになる。
「そろそろヤバそうだね。助けるなら今しかないけど」
「もちろん助けるさ。俺はどっかの誰かさんと違って薄情ではないからな」
「ぶぅー。あたしはローランドきゅんのためを思って……」
「結局は自分のためだろうが。自分の欲望を正当化して、他人の不幸は見て見ぬふりですか?」
「あぁ、もう。わかった。わかりましたよ! 助ければいいんでしょう。助ければ!」
ナガルティーニャもまた、自分の言っていることが独りよがりのわがままであるという自覚があったのか、俺が指摘してやるとすぐに考えを改めた。やっぱり、自分の欲で動いてやがったなこいつ……。
さて、考えもまとまったところで、そろそろ本当にヤバくなっている状況の中、俺はリアナのいる場所に瞬間移動をした。
「ローランドくーん!!」
俺が瞬間移動で移動すると、ちょうど俺の名前を叫んでいるリアナの声が聞こえてきたが、タイミングがピッタリ過ぎたがために彼女の叫びが俺の鼓膜をガンガンに震わせる。
「うるさいぞリアナ。そんな大声を出さなくとも聞こえとるわ!」
「うぇ、ローランド君!? い、いつの間に?」
「そんなことはどうでもいい。とりあえず、あいつらを何とかするのが先だ」
と言いながら、リアナと対峙していた相手は、黒装束に身を包んだいかにも闇の住人ですよといった感じのものすごく怪しい三人組だった。差し詰め“黒ずくめの男たち”ってやつだな。
残念ながらこの世界にキック力を上げる特殊なシューズや時計型の麻酔銃などは存在していないが、とりあえずサッカーボール風のボールでも作って攻撃してみるか?
「なんで、倒し方が名〇偵コ〇ン風になってるんだい?」
「だって黒ずくめだぞ? 倒し方にはこだわった方がいいのかと」
「それを言ったら、相手の持ってる武器だって拳銃じゃないじゃないか? そこはどう説明するんだい?」
「た、確かに……」
などとナガルティーニャと意見交換していると、それを挑発と取った黒ずくめの男たちが腰に下げていた剣を抜き放つ。その瞬間、俺とナガルティーニャは身構える。
先ほどまでの穏やかな雰囲気から一転し、いきなりのシリアスモードに突入する俺たちを見て、男たちが警戒レベルを引き上げたのがわかった。
「命賭けろよ?」
「……?」
「獲物抜いたからにゃあ、命賭けろよ?」
「そいつぁ、脅しの道具じゃねぇって言ったんだ」
「ぐはっ」
俺の某アニメの名台詞を横取りする形で、ナガルティーニャが三人組の一人を殴り飛ばしていた。やれやれ、こういったネタを理解できる人間がいるのは嬉しいが、だからといって横取りはいただけない。
そんなどうでもいい下らないことを考えていると、残った二人の男のうちの一人が俺に向かって剣の突きを放ってきた。そのスピードはお粗末なもので、まったく脅威を感じなかった。そんな攻撃が俺に命中するわけもなく、最小限の動きで躱すと、男の背後に回り込み首元に手刀を落とす。
ここで注意しなければならないのが、全力で手刀を落としてしまうと首ごとポロリしてしまうので、絶妙な力加減が必要だということだ。でなければ、大惨事となってしまう。
今回は上手くいったようで、男の意識を刈り取ることに成功する。ふう、思えば一番神経を使う瞬間かもしれない。
「さて、残りはお前だけだが。どうする?」
「ちっ」
残りの男が舌打ち一つすると、そのまま踵を返して逃げ出した。だが、化け物一号とその弟子化け物二号から逃げられるはずもなく、すぐに回り込まれてしまい、あえなく他の仲間と同じく地に伏すことになってしまった。
見逃すこともできたが、こいつらが主犯である可能性が低く、裏で糸を引いている黒幕にリアナ誘拐の失敗の情報が伝わるのを遅らせるためには、このまま逃がすのは些か都合が悪いと判断した。尤も、それを知ってか知らずか、最後の一人を倒したのは俺ではなくナガルティーニャだったが……。
「大丈夫か?」
「……」
「おい、大丈夫かと聞いている。どこか怪我は――」
「だ、大丈夫です。結婚してください!」
「こrrrrrrrrら!! 言うに事欠いて何を言っとるか貴様ぁー!!」
リアナの安否を確認したところ問題なさそうだった。図らずも、ナガルティーニャと漫才が始まってしまったので、馬鹿共はそのまま放っておく。
未だ気絶している黒ずくめの男の一人の上半身を起こし、男の頭に手を置きながら魔法を使う。
「【メモリーファインド】」
メモリーファインドは記憶を読み取る魔法で、これさえあれば相手を拷問して口を割らせる必要性がなく、欲しい情報を映像媒体という形で得ることができる優れものだ。
利点としては、記憶を読み取るため拷問した際に出てきた情報よりも信憑性が高く、記憶を読み取った相手にあらかじめ嘘の情報を吹き込んでいない限りは確実に情報を得られる。
逆に嘘の情報を教えられていた場合、その看破が難しいというのがデメリットではあるが、少なくとも拷問の最中に自害したり死んでしまうという情報を得る前に相手が死ぬことがないのもこの魔法のいいところだ。
「なるほど」
「何かわかったのかい?」
「とりあえず、黒幕は判明した。今からそいつのところに乗り込むぞ」
いつの間にか、漫才を終えていたナガルティーニャが問い掛けてきたので、今から黒幕に会いに行く旨を伝える。やはり記憶を読み取る魔法はかなり有用で、男が気絶しているにも関わらず、必要な情報を引き出すことができた。
今回の落とし前を付けさせるべく、俺たちは目的の場所へと向かった。だが、向かっている道中に思った。これって、自分から面倒事に突っ込んでいないかということを……。
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