ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
303話「お気楽なリアナの人生」
「と、いうわけなんです~」
「……そ、それだけか?」
リアナが話してくれた内容はこうだ。まず、エルフの父親とサキュバスの母親との間に生まれた彼女は、特に蔑まれるようなことはなく日々すくすくと成長し、順風満帆な人生を歩んできた。
そんなある日のこと、両親から突然「お前は若い。だから、いろんな場所を巡って世の中を見てきた方がいい」という言葉と共に住み慣れた土地から旅立つことになった。
その道中でも盗賊などの襲撃などがあったものの、リアナにとっては生気を吸い取るための相手でしかなく、撃退することに成功する。
そんなことを繰り返しているうちに、盗賊たちから「あの女はヤバい」という噂が広まって、次第に襲われなくなっていった。
生気を吸える相手がいなくなったため、近くの都市へと移動をし、その街で幼い少年の魅力に取り憑かれてしまい、街中の少年たちから生気を吸い取る活動に勤しんでしまう。
そんな目立ったことをすれば悪い噂が出るのは必定であり、いつしか誰も彼女を相手にしなくなっていった。
幸いなことに、生気を吸われた相手は死ぬことはなく、寿命も縮まらない。吸われる時に伴う純粋な快楽を味わえるだけであったため、少年たちの親から責められることはなかった。
そんなことを繰り返しているうちに流れ着いたのがブロコリー共和国の首都カフリワで、手始めにどの少年から生気をいただこうかと物色している最中に冒険者ギルドに現れたのが俺だったらしい。
「完全に欲望に向かって忠実な生き方じゃないか。なんだそのお気楽珍道中は?」
「てへ」
「まったく、これだから最近の若い奴は」
リアナの経緯に呆れていると、ナガルティーニャが年寄り臭い言い方で彼女を批評する。まあ、実際実年齢はかなり高齢だからな。
以上がリアナから聞いた話であり、実にライトな話の内容に面を食らってしまったが、だからといって襲われる側からすれば堪ったものではない。寿命が縮んだり死んだりすることはないとのことらしいが、それでも純粋無垢な少年を毒牙にかける行為は褒められたものではない。
しかも、純粋なサキュバスのように生気を吸わなければ生きていけないというわけではなく、人間のように普通の食事でも問題なく生きていける以上、彼女のやっていることは完全に趣味の範囲ということになるから余計に質が悪い。
生気を吸われた本人が悪い気分にはならないものの、その相手が何も知らない少年であるというのは、彼らの情操教育にも悪そうだし、何より妙な性に目覚めてしまう可能性も否定できない。
「とりあえず、生きていく上で生気が必要なのであれば多少は仕方ないかもしれんが、お前の場合は違う。いずれ取り返しのつかないことになる前に自重するべきだろう」
「それは、難しいですね~。ローランド君は、何か好きなことはありますか~? そして、その好きなことを今すぐやめろと言われたらすぐにやめられますか~?」
「詭弁だな。少なくとも俺の好きなことは、他人に迷惑が掛からない範疇のものだ。お前のそれは他者に迷惑が掛かっている。それについてはどうなんだ?」
「……」
リアナの趣味について自重すべきであることを指摘すると、秀逸な例え話で返してきたものの、それを一蹴するように現実問題を突き付けてやると、途端に押し黙った。
どれだけ綺麗事を並べようとも、彼女の趣味は他者に迷惑が掛かる。それは揺るぎのない事実であり、最も問題視すべき点だ。ちなみに、生気についての話を聞いたところ“精気”という読み方ではなく“生気”という単語なのは、吸う対象が相手のやる気などの不定形のものであり、決して相手の体液や精液でないから生気という表現らしい。
「ちなみに、相手の精液でも生気は吸収できますけどね~。試してみます?」
「いらん」
「ちっ」
どうやら、俺の考えていた方の精気でも生気を吸収できるようで、彼女の申し出をすげなく断ったら明確に舌打ちをされた。おいおい、治安が悪いな。
とにかく、リアナの事情を大体把握した俺は、特に事件性がないと判断し「帰っていいぞ」と促したのだが、何故か帰らない。
「なんだ。まだ何か言ってないことでもあるのか?」
「決めました。わたし、ローランド君に付いていく――ぐぼぁ」
「だが断るぅー!」
珍しくリアナが真面目な口調で何かを言おうとしたその時、そうはさせまいとナガルティーニャが割って入るように彼女の横っ面にパンチをお見舞いする。当然手加減はされているものの、俺以上のステータスを持つナガルティーニャの攻撃を受けてただで済むはずもなく、簡単に吹き飛ばされ部屋の壁に激突する。どこか既視感のある光景だったが、そのことには触れずナガルティーニャに物申す。
「おい、いくらなんでも唐突過ぎるだろ。控えめに言っても暴行罪だぞ。下手すりゃ殺人未遂だ」
「はっはっはっはっはぁー。何を言っているのだねローランド君。犯罪というものは、公にならなければ罪にはならないのだよ」
「俺という人間に目撃されている時点で公になっているじゃないか」
「ぐぬぬぬぬ。またあなたですか。どうやら、あなたとは相いれぬ存在のようですね」
ナガルティーニャとそんなやり取りをしていると、復活してきたリアナがナガルティーニャに敵意の籠った視線を向ける。それに応戦するように彼女が睨み返すと、両者の間に火花が散る幻覚が見えた。
俺は鈍感系主人公ではないので、彼女たちが何をそんなに揉めているのかは理解できる。理解できるが、かといってそれで仕方がないと言えるほど俺の器は大きくはない。
「お前らいい加減にしろ。喧嘩するなら部屋の外でやってくれ」
「ローランド君、わたしはあなたに惚れました。だから、付いていきますどこまでも」
「そんなことが許されると思っているのかな? 例えローランドきゅんが許しても、このあたしが許さないよ!」
「はぁー。……【バ〇ルーラ】」
いい加減鬱陶しくなってきたので、前回のナガルティーニャにやった強制的に相手を転移させる魔法を使ってどこかへと飛ばしてやった。ただし、命の危険があるといけないので、リアナは首都カフリワのどこかへ、ナガルティーニャは人の入っていない辺境の地へと飛ばしてやった。……差別ではない、区別である。
静かになった部屋の中で今後の予定を考えていると、すぐさまナガルティーニャが部屋に舞い戻ってくる。そういえば、結界を張るのを忘れていた。
「ちょっとローランドきゅん!? 酷くないかい? いきなりどことも知らぬ辺境の地へ飛ばすなんてさ。しかも、転移した先がSSSランクのモンスターの巣の中とか勘弁してほしいよ。まったく」
「その割には無傷だな」
彼女の抗議の声を華麗にスルーし、ナガルティーニャの姿を見る。飛ばされる前とまったく変わらぬ姿でいる彼女を見て、俺は内心で複雑な心境を思い浮かべる。
彼女の言ったことが本当であれば、SSSランクというモンスターですら彼女に傷一つ付けることはできないということが今証明されてしまったからだ。
SSSランクの強さは限界突破のスキルがレベル3を超えているため、ステータス的には俺よりも格上となる。相性はあれども、俺ですら苦戦することは必至であり、決して侮っていい相手ではない。
だというのに、それをまるで片手間の如く対処できてしまう辺り、奴との実力の隔たりを感じざるを得ない。まったく、底の知れないロリババアめ。今に目に物を見せてくれる。
そんなことを考えながら、一方のリアナがどこに飛ばされたのかを確認するため、遠距離視認型の魔法を発動すると、何やらトラブルに巻き込まれていた。
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