ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
302話「事情聴取」
「で? なんで俺を襲ったんだ」
「ぐすん、そ、それはですね……」
彼女が落ち着いた頃合いを見計らい、問い詰めたところ彼女は一つ一つ白状し始める。
彼女の話によると、彼女はこの首都に棲みついているハーフエルフであることは間違いないのだが、父親がエルフ、母親がサキュバスという少々特殊な種族同士のハーフであり、彼女もまたサキュバスの性質上、男性の生気を糧にできるらしい。
ただ、彼女の場合血の半分がエルフであるため、通常の食べ物から糧を得る方法でも何ら問題なく、生気の方については彼女の癖も相まっての半ば趣味的なものとして、日々好みの男を見つけては、その相手から生気を吸っていたとのことだ。
「そして、わたしは見つけたのですぅ~。冒険者ギルドの入り口に突如現れた見目麗しき少年を~!」
「けっ、このショタが」
「お前にだけは言われたくないと思うぞ」
頬を上気させ、俺の素晴らしさについて熱弁する彼女の言葉を一蹴するかのようにナガルティーニャが悪態をつく。だが、忘れてはいけない。奴もまた俺という少年の虜となった人間であるということを……。
それから、さらに追求していくと、精神を操る魔法を使ったが効かなかったので、とりあえず幻術を使って冒険者ギルドの職員であることを錯覚させたらしい。
「じゃあ、あのギルドにはあの三人はいないということか?」
「三人って誰のことですか~?」
どうやら、この国にはアレが存在していないようで、改めて彼女に三人の特徴を告げてみたが、そんな人間はこの都市の冒険者ギルドにはいないという答えが返ってきた。
彼女の幻術でそうなっていたのかと思ったが、それとは関係なくそもそも存在すらしていないという可能性が浮上してきた。だが、諦めるのはまだ早い。首都にはいなくとも、この国にいないという確証にはならないのだから。
「俺はローランド。お前は?」
「わたしはリアナです~」
「リアナ。今日のところは帰ってくれ。なんかいろいろと疲れたんでな。詳しい話は明日また聞かせてもらうから」
「はい……」
俺がそう言うと、リアナはすごすごと帰って行った。結局のところ彼女の目的は俺と生気だけであり、特に何かの事件に関与していたりという政治的な思惑はなかったらしい。
外はまだ夜の帳が下りた真夜中であり、早起きな人間ですら起床していない。まだ眠気も残っているため、そのままベッドで睡眠を再開しようとしたが、ここでまだ残っている邪魔者に気付いた。
「……何をしている?」
「何って決まっているさね。またあの下賤の輩がローランドきゅんを襲ってこないとも限らない。ここはあたしが添い寝……朝まで付いてやるのが師匠としては勤めではないかね?」
「今現時点で、お前がその下賤の輩になっていることに気付け。【バ〇ルーラ】」
「あっ、ちょ――」
俺は転換魔法を使って、某国民的RPGに登場する敵を強制的に転移させる魔法を奴にぶつけてやった。もちろん、そんな魔法はないのだが、同じ効果をもたらす魔法であれば再現可能であるため、それを実行した。
有無を言わせぬ攻撃に、反応する隙もなくナガルティーニャが忽然と姿を消す。奴がいなくなったと同時に部屋に結界を張り巡らせ、これでようやく誰も入ってこない絶対不可侵領域が完成する。
そこまでする必要性があるのかと問われれば答えは是であり、仮に結界を張らなければ俺と同じ転移の能力を使って再び俺のところに戻ってきてしまうからだ。
まともな感性を持っている人間であれば、これ以上は迷惑が掛かるだとかまた日を改めてなどという気を遣うのだが、相手はあのナガルティーニャである。そんな細かい気配りができる人間ではない。
それが証拠に、何者かの魔法が結界に干渉する気配があった。十中八九、ナガルティーニャが転移を使って戻ってこようとした証拠である。阿呆め、お前のやることはお見通しだ。
「ふぁーあ。さて、まだ夜も遅いことだし、明日に備えて寝るとしよう」
問題が一段落したところで、本格的に睡魔が襲ってきたため、ようやくベッドに入り眠りに就くことにした。念には念を入れ、部屋に張った結界と同じものを三重に張り、奴の侵入に対する備えとしておいた。……ん? やりすぎだって? いやいや、相手はあのナガルティーニャだぞ。やりすぎくらいでちょうどいいのだ。
ベッドに入るとすぐに睡魔が最高潮に達し、俺はすぐさま意識を手放したのであった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「さて、起きるか。……まだやってたのかこいつ」
翌日、ベッドから起き上がり結界の外を見てみると、そこには結界と格闘しているナガルティーニャの姿があった。あの後、結界の外から転移で戻ってきた奴は部屋に張られた結界を破って入ってこようとしたが、俺が念のために張っていた三重の結界をも破ろうとしていたようで、現在最後の砦である三重目の結界の解除を行っているようだった。
さすがというべきか恐ろしいというべきか、俺の渾身の魔力が込められた結界をたった一晩で三回も打ち破り、あと残すところ一枚というところにまで迫ってきたいた。
これが並の人間であれば、結界一枚を破壊するのに何十年という時間を要し、下手をすれば一生掛かっても結界を打ち破れない場合もある。だというのに、このロリババアはたったの一晩で三枚も解除しやがった。呆れを通り越してもはや脱帽である。
「くぅー、間に合わなかったぜ……無念」
「なーにが無念だ。そんな下らないことをする暇があるなら、少しは真面目に人生を生きろ」
「あたしにとって人生とは、今も昔もたった一つ! shota is my life(ショタはあたしの人生だ)!!」
「腐ってやがる……やり過ぎたんだ。いろいろと」
などと再び漫才のようなやり取りがあったが、奴のことは放っておいて、俺は魔法で作った水の球で顔を洗うと、宿の一階にある食堂へと向かった。当然、奴も俺の後ろをすたすたと付いてくる。
一階の食堂で朝食を食べ、リアナがやってくるのを待つ。ちなみに、ちゃっかりとナガルティーニャは朝食を食べ、その金は俺が奢ってやった。金は持っているようだったが、図らずも昨日こいつに助けられる形となってしまったことは不本意であり、何よりもこいつだけには借りを作りたくないという反骨精神も相まって、奢りたくはなかったが、俺の精神衛生上それ以外の選択肢がなかったのである。
しばらく部屋で待っていると、ドアがノックされる音がしたので、扉を開けてみると、そこにはリアナの姿があった。
「おはようございます」
「おう、入れ」
挨拶もそこそこに、彼女を部屋へ招き入れ、さっそく事情を聴くことになった。さすがの俺もこんな状況でナガルティーニャと漫才はやらないので、リアナの話を聞くために聞く体制を作る。どうやらナガルティーニャも同じらしい。
部屋の中に沈黙が流れた。そして、リアナが意を決して話してくれた内容は、俺の予想に反してかなりライトなものだった。
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