ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
294話「目まぐるしい視察」
「ありがとうございました。お気をつけて~」
「お気をつけて~」
セサーナとセーナの母娘に見送られながら、俺は【和やかな風見鶏亭】を後にする。そして、次の街へと向けて出発することにした。
あれから宿を後にした俺は、その足で市場へと赴くことにしたのだが、これといって目新しい品を見つけ出すことはできず、他にこれといった観光名所もなかったため、夕暮れ前に宿に帰還し食堂で食事してそのまま就寝したのだ。
宿の食事はそれなりに美味かったが、普段から高品質の食事をしているからか、今一つ物足りなかったというのが正直なところだ。
ちなみに、宿の看板娘セーナは俺と同じ十三歳で素朴な雰囲気が印象的な少女だったが、張りのある褐色の肌と未だ発展途上の胸部装甲はまだまだ伸びしろがあると感じた。五年後が楽しみである。
そんなこんなでセンプティの街を僅か一日で後にした俺は、次の目的地に向けて出発する。次の目的地とはセコンド王国で一番の商業都市【マカドニア】である。
市場を散策がてら露店を冷かしていた時に店員から聞いた話によると、この国には他国からもその名前が知れ渡っている有名な商業都市があるという話を聞いた。それがマカドニアである。
何でも、隣国であるシェルズ王国の迷宮都市オラルガンドや、さらに西に位置する諸国から様々な品が集まるらしく、セコンド王国内でも一、二を争うほどに栄えた都市らしい。
「まあ、それも今じゃ見る影もないだろうがな」
そんなことを呟きながら、俺はマカドニアの現状を予想する。おそらくだが、今のマカドニアはかつての繁栄は鳴りを潜めており、あまり活気には溢れていない可能性が高い。その原因は、他でもない俺だった。
セコンド王国の上層部が勝手にシェルズ王国に戦争を吹っかけてきたことが発端で、そのペナルティとして俺がセコンド王国の国境線に沿って強力な結界を張ったからだ。
その一件によってかの国の所業が各国に知れ渡ることとなり、諸国はセコンド王国との交易を一時的に規制する処置を取っている。
当然、そのようなことをされればいくら国一番の商業都市といえど大打撃を受けることは必至であり、無事では済まないことは想像に難くない。
今回はそのマカドニアがどうなっているのかということを確認する視察も含めて、セコンド王国で一番の商業都市を見てみることにしたのである。
そして、三日という期間を経て、俺はかの商業都市へとたどり着いたのだが……。
(やはり、あんま活気がないな)
センプティからさらに西に位置する都市マカドニアは、セコンド王国の王都を繋ぐこの国の要所でもあり、この国にとっては都市としても拠点としても重要な役割を担っている。
シェルズ王国に言い換えるのなら迷宮都市オラルガンドと同じ役割をマカドニアが行っており、それだけでもこのマカドニアが重要な場所であるということが窺える。
だというのに、都市に入ろうとする人の列も大都市にしては少なく、オラルガンドの半分以下しかいない。これも結界が影響しているだろうことは火を見るよりも明らかだ。
「次」
そんなことを考えながら順番が来るのを待っていると、ようやく兵士に呼ばれたので、ギルドカードを提示してそのまま都市へと入った。もちろん、ギルドカードは幻術をかけて身分を偽称済みだ。
都市に入ると、さすがの大都市とだけあって大通りの幅は広く、大きな荷馬車が三台も四台も横並びできるほどにとてつもない規模だ。しかし、そんな広い通りには馬車はおろか荷車を引いている人すらいない。
ひとまずは情報収集のため冒険者ギルドへと向かうことにする。もうお決まりパターンなので割愛させてもらうが、レリアン、ロコル、キラルドだった。
ギルドマスターとも会い詳しい話を聞いてみると、やはり結界が原因で今まで順調だった流通がストップし、物が集まらなくなっているらしい。
事態を重く見たセコンド王国上層部は、物の流通を王都に集中させるべく、数少ない物資もマカドニアから移動させており、かつての商業都市は見る影もないとのことだ。
「ふむ、やはりというべきか、予想通りの結果だな」
冒険者ギルドでの情報収集を終え、外に出てきた俺が最初に呟いたのはそんな言葉だった。どれだけの国土を持っていたとしても、大なり小なり他国による輸入に頼っている物資がある以上、それを遮断されれば国として立ち行かなくなるのは道理だ。
だからこそ、それを見越しての国境断絶を行ったわけだが、どうやら俺が想像していたよりも効果覿面だったらしい。
その日は、街の様子を軽く見て冒険者ギルドで聞いた【静かなる風車亭】に泊まった。ちなみにアレはソサーナとソーナだ。うん、予想通りだ。
「こりゃあ、王都に行くしかないな」
マカドニアの現状を把握した俺は、セコンド王国の王都の現状も気になったため、次の目的地を王都にする。
収集した情報によると、セコンド王国国内にある物資を王都へと集めており、マカドニアを始めとする王都への要所となっていた都市が軒並み衰退しているらしい。
その一方で国内すべての物資を王都に集めたことにより、現状なんとかまともに機能している王都だが、他の拠点からの不満の声が日に日に募っており、いつ反乱という形で爆発してもおかしくはなかった。
それもこれも、すべてはセコンド王国が不用意に戦争などという非生産的な行動を取ったが故の自業自得なのだが、それに巻き込まれる国民からすれば堪ったものではないだろう。
というわけで、一通り視察が終わったマカドニアを足早に後にし、さらに五日という期間を経て俺は王都へと到着する。
ここまでの道中がなんだかダイジェストのようにあっという間に過ぎてしまってはいるが、そのほとんどが今までやってきたことの繰り返しであるため、特に気にしないことにする。
だが、一応言っておくと飛行魔法や瞬間移動がなければ、今回かかった日数の三倍から四倍ほどの時間を必要としていたことだろう。やはり、飛行魔法や瞬間移動の恩恵は絶大である。
国一番の都市……王都という肩書きは伊達ではなく、シェルズ王国の王都と比べてみても遜色はないようで、なかなかの規模と広さを持っている。
今まで見てきたセコンド王国の都市の中でも、入都のために並んでいる人の列も長蛇の列で、特に物資を運んでいる荷馬車の数は圧倒的に数が異なる。
(こりゃあ、かなり時間が掛かりそうだな)
面倒だとは思いつつも、無断で侵入して後で咎められても癪なため、ここはルールを守って列に並ぶ。
ちょうど、前に並んでいたのが物資を運ぶ行商人ということもあって、情報収集がてら話を聞いたところ、いろいろなことがわかった。
まずは、王都の名前についてだが、セコンド王国の王都は【ラティルザーク】という名で、別名“光の都”とも呼ばれている。人口はシェルズ王国の王都とほぼ同規模で、その大きさは見れば一目瞭然だ。
最近では、結界の影響により以前にもまして物の流通が活発だが、他の都市からかき集めているだけにすぎないため、表面上は活気に満ち溢れているものの、水面下では不満の声も上げっているらしい。
「てなわけでさぁ」
「なるほどな」
「次」
ちょうど情報を聞き終えたタイミングで行商人の番がきたので、次の番が来るのを待っていると、兵士の中の一人が急に騒ぎ出した。
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