ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
279話「家族との再会」
「ウル姉!」
「ウルねぇ、帰ってきた!」
「この子はまったく……心配かけないでちょうだい!」
ウルルの父親との一件があった後、俺たちはすぐにウルルの実家へと向かった。父親も一緒でなくていいのかとウルルに聞いてみると、「うるさくなるから、放っておきましょう」というなんとも辛辣な一言を頂戴した。……これが、反抗期というやつなのだろうか?
ウルルの故郷は、木造の枠組みに藁か何かの植物の葉を天井部分に使用した、はっきり言ってとても原始的な家の造りをしている。レンガなどの人工的な建築材が手に入らないことを考えれば、仕方のないことと言えるのかもしれない。
家の中に入る前に、匂いに気付いたウルルの家族たちが続々と家の中から現れ、現在ウルルを取り囲んでいた。父親との差が大き過ぎる気がするが、そこは敢えて突っ込まない。
「初めまして、私はウルルの母のウルカと言います」
「ローランドだ。冒険者をやっている」
ウルルとの再会を喜んだ後、母親と名乗る妙齢の女性が話し掛けてきた。ウルルと同じケモ耳に尻尾があり、顔つきも少々彼女に似ていることから、本当に母親であることがよくわかる。
一つウルルと異なる点があるとすれば、たわわに実った二つの果実で、身に着けているものが表面積の薄い服ということもあって、今にもこぼれ落ちそうなほどだ。
母親と言っても、まだまだ若々しい二十代後半という年齢らしい。だというのに、その若さで四人の子持ちというのだから少子化の進む国出身の日本人としては驚きである。
「ヘルル!」
「イルルだよ!」
母親の後で自己紹介してくれたのは、ウルルの弟と妹の双子の兄妹だ。年齢は七歳ということで、まだ純粋無垢な感じが何とも可愛らしい。
ちなみに一番上の兄弟であるガルルの年齢が十五歳、ウルルが十二歳、ヘルルとイルルが七歳ということで、それぞれウルカが十四歳、十七歳、二十二歳の時に産んだ子供だと本人から聞かされた。
それから、定期的に夫婦の営みはあるものの、旦那であるウルルの父親が新しい子供を作ることに乗り気ではないという、惚気なのか何なのかよくわからない愚痴のようなものを聞かされる羽目になった。
「それでね。ウルルが子供の時なんかは本当にやんちゃで――」
「ウルル! 父さんを置いていくなんて酷いじゃないか!!」
などとウルカの世間話を半ば強制的に聞かされていると、復活したウルルの父親が戻ってきた。俺的にはこれ以上ウルカの世間話に付き合わされるのは御免だったためナイスなタイミングといえる。
「父はうるさい。それにべたべたとくっついてきて暑苦しい」
「そ、それはお前のことを愛しているからだ!!」
「あなた。あまり子どもたちの嫌がることはしないでいただけますか? それほどまでにくっつきたいのでしたら、私があなたのお相手をしますが?」
「そ、それは……」
「丁度いいですわ。最近夫婦としての触れ合いがなかったところです。今夜あたり、私たちの愛を確かめましょう……」
「ぐっ」
あれほどまでにウルルにくっつこうとしていたのにも関わらず、ウルカの言葉に途端に大人しくなる。どうやら彼女から聞かされていた通り、夫婦としての営みを避けているようだ。
何故そこまで拒絶しているのかと疑問に思っていると、彼の口からまるで呪文のように「また搾り取られる……。俺は明日の日の出を見られるだろうか……」などという意味深な言葉が聞こえてきたが、敢えてそれを追及する気にはなれなかった。……夫婦とは、とても複雑なものなのだな。
そんなことを考えていると、改めてウルルの父親が俺に自己紹介をしてきた。
「おう、俺はガウルっていうもんだ。さっきっからちょこまかいるお前は誰でい?」
「俺はローランド。ウルルたちをここまで連れてきた冒険者だ」
「そうかい。そのことについては感謝する。だが、娘に変な真似をしてねぇだろうな?」
さっきまでの意気消沈な態度はどこへやらとばかりに、俺に対し悪態をガウルが付き始める。当然ながら、ウルルには手を繋ぐどころか指一本触れさせてはいないため、完全なる言い掛かりだ。
今考えれば血は争えないという言葉通り、オラルガンドにいる間中俺の姿を見るなりウルルが俺に抱き着こうと突撃してくることが何回もあった。だが、彼女程度の実力であればまったくもって問題なく対処が可能であるため、のらりくらりと彼女の抱き着き攻撃を躱し続けていた。
それでも諦めずに、毎日毎日果敢に俺に挑み続ける姿はしつこいを通り越して健気ではあったが、結局のところ俺に抱き着くことは今の今までできていないのだ。
「寧ろ、俺の方が変な真似をされそうになったんだが」
「な、なんだとぅ!? お前、ウルルはまだ成人してねぇんだぞ! そんなウルルそんないかがわしいことをするなんて。なんて羨ま――いや、けしからんのだ!!」
「……」
おいおい親父よ、本音がダダ洩れてるぞ? という具合に俺がジト目でガウルを見ていると、突如としてガウルの体が吹き飛んだ。一体何が起きたのかと周囲の様子を見回すと、そこにいたのはウルルとウルカだった。
ウルルは空手の正拳突きのような構えを取っており、その体勢から彼女の拳が放たれたことは想像に難くない。一方のウルカはその妖艶な生足を惜しげもなく曝け出しており、おそらく蹴りを放ったものだと推察された。
「父、ご主人様をいじめるのダメ」
「あなた。羨ましいとはどういうことですか? そのことについて、今夜はゆっくりとお話ししましょう」
というような言葉が出たものの、それが当事者であるガウルの耳に入ることはなかった。圧倒的な膂力から繰り出された拳と蹴りの衝撃は凄まじく、再びガウルの意識を刈り取るには十二分を通り越してオーバーキルとなっていたからだ。
ウルルはともかくとして、そのあまりの威力に驚いた俺がウルカの能力を調べることは必然だった。彼女のステータスを覗いてみると、なんと今のウルルと同等の能力を持ち合わせており、俺が育てた使用人たちと戦っても引けを取らないほどの力を持っていたのだ。
スキルの欄に【絶倫】と【性豪】という名前のスキルがあったが、俺はそれを見なかったことにした。そりゃあ、搾り取られるわけだ。
少し脱線してしまったが、これだけの騒ぎが起こっているというのに他の村人がやってこないのは、おそらくこれがこの村の日常だということだろう。それが証拠に――。
「相変わらずガウルんとこは騒がしいな」
「いなくなってたウルルが戻って来たんだ。そりゃあ、嬉しくなるもんさね」
「それにしても、ウルルちゃんってこんな強かったか?」
という声が近くの村人から聞こえてきたのだ。これが日常とかどれだけドメスティックな一家なんだか……。
とにかく、戻ってきた家族と送り届けてくれた家族の恩人をそのままにしておくというわけにもいかず、ウルカたちは俺を家へと案内してくれた。
余談だが、この時伸びて動けないガウルを介抱する家族が誰一人としていなかったのであった。ウルルの家族の中でのガウルが、どれだけ下に見られているかわかってしまった瞬間、彼に対し憐みの情が浮かんだのは言うまでもない。
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