ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
271話「値段交渉」
「グレッグはいるか?」
グレッグ商会へとやってきた俺は、さっそくグレッグに会いたい旨を伝える。対応してくれた店員は俺のことを知っているため、すぐにグレッグの下へと案内してくれた。
「これは坊っちゃん。今日は一体どうされたんですか?」
「ああ、実は新しい商品を作ってみたから、グレッグにも見てもらおうと思ってな。これなんだが」
そう言って、俺はストレージから大きさの異なるスプーンとフォーク、料理用の掴み具のトングとサンダルをテーブルに並べた。グレッグはすぐさま真剣な商人の顔つきになり、俺が出した商品を一つ一つ検分し始める。
「これは、大きさの違うスプーンとフォークですか。確かに、一般的に販売されているスプーンとフォークは大きさが同じで、たくさん食べる男性では物足りなく、小食な女性や子供には大き過ぎるところがありますから、性別や年代層に合わせた大きさのものを販売すれば売れるかもしれません。こっちは……何かを掴む道具ですか?」
「それはトングと言って、料理用の掴み具だ。肉を焼く時や手で直接触れると汚れる時に使う」
「なるほど、このトングについては初めての商品ですので、売り出してみないと何とも言えませんね。あとは、靴ですか。丈夫でなかなか履きやすそうな造りをしている。これは問題ないですな」
といった具合に、グレッグが俺が持ち込んだ商品を評価する。まずスプーンとフォークは、ありきたりなものであることに変わりはないとのことで、あまり高額な値段は付けられないらしい。当然、俺もそのつもりで相場に合わせた値段設定をするつもりだ。
トングについては、今まで市場にないものであるからして、どれだけ需要があるのかという前例がないため、スプーンとフォークよりも少しお高めな設定にするという結論になった。
そして、サンダルについてだが、基本的に革靴か裸足の庶民にとってそれ以外の選択肢が増えることは僥倖なことであり、持ち込んだサンダル自体もしっかりとしたものであるため、そこそこな値段で売れるとのことだ。
「それで、具体的にはどれくらいの値段で売るべきなんだ?」
「そうですな。まずはスプーンとフォークですが、一般的な値段が小銅貨五枚から七枚程度ですので、一番大きいものは大銅貨一枚、普通のものが小銅貨六枚、その次に小さいものが小銅貨四枚、一番小さいものが小銅貨二枚というところでどうでしょうか?」
「それで問題ないなら、こちらも問題ない」
それから、トングとサンダルの値段についても話し合い、トングは大銅貨一枚と小銅貨二枚、サンダルについては大銅貨六枚で販売することとなった。
在庫の管理については、今まで通り俺のストレージに繋がっている魔法鞄を渡してあるため、それでできることを告げ、俺は一度自宅へと戻った。
自宅へ戻った後、プロトが出迎えてくれ、そのあとすぐに新商品の生産について増産の指示を出し、ソバスに断りを入れた後、俺は一度王都へと転移する。
「これはローランド様。今日はどうされましたか?」
すぐにコンメル商会へと出向き、同じようにマチャドと値段交渉をする。その結果、スプーンとフォークはグレッグ商会の値段にそれぞれプラス小銅貨二枚を追加した値段とし、トングは大銅貨二枚、サンダルは大銅貨八枚となった。
国中からあらゆるものが集まる王都だけあって、他の都市よりも相場が高くなるのは理解できるため、俺もこの値段は納得だ。
マチャドとの話し合いも終わったので、俺は露店の建ち並ぶ区画へとやってきた。目的は露店販売を任せているメランダたちだ。
「これは主人様、どうされましたか?」
露店へと向かうと、俺を見つけたメランダが駆け寄ってくる。ここに来た目的は一つ、メランダたちにトングとサンダルの使い心地を確かめてもらうためのモニターをお願いするためだ。
一応、俺自身もこの二つの品については実際に使ってみて確かめてはいるものの、あくまでもそれは俺の個人的な主観によるところが大きい。できれば、多くの意見があった方がいいということで、彼女たちにその手伝いをしてもらうことにしたのだ。
実際、彼女たちは靴を履いておらず、日々裸足で生活している。一応給金は支払っているが、全員が他のことに使うか、いざという時のために貯蓄しているらしく、靴にお金を掛けている者はいなかった。
そこで、日頃の仕事ぶりを労う意味でも、靴を与えるということはいい案であるということで、善は急げとばかりに彼女たちを訪ねたというわけだ。
「店の営業が終わったら、全員を集められるか?」
「はい、問題ありません」
さっそく、トングと靴を渡すため、俺はメランダに閉店後全員を集めるよう指示する。その間に、もう一度グレッグとマチャドの下へ赴き、露店の販売員にトングと靴のモニターの件を話しておいた。二人とも、問題ないという返答をもらったので、時間まで暇を潰し、改めてメランダたちの下へと向かった。
「諸君、いつもご苦労。今回は諸君らの頑張りに対し、ささやかながらの感謝の品を用意した。是非受け取ってくれ」
集まってもらった奴隷たちにそう労いの言葉を掛けつつ、俺は全員に今日作ったサンダルを渡す。渡された奴隷たちの反応は驚いている者が多く、中には呆然としている者もいた。
以前にも言ったが、奴隷とはほとんど道具のような扱いを受けることが多く、購入した人間が奴隷を同じ人として扱うことはあまりない。
そんな常識があるにも関わらず、奴隷を対等な存在として扱うとどうなるのか、答えはこうなる。
『一生あなた様にお仕えいたします!!』
全員号泣しながらの一生宣言である。
俺としては、ただ新しく作ったサンダルの使用感を確認するためだけに渡しただけだったのだが、彼女たちにとってはそうではなかったらしく、何とも複雑な気分だ。
とにかく、元々の目的を果たすため、彼女たちの言葉をあしらいつつ、サンダルの使用についての感想をあとで聞き出すため、そういった内容の話をそれとなく伝えた後、逃げるようにその場を後にしたのであった。
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