ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく

こばやん2号

269話「更なる強化と生産」



「……おめでとうございます。これで皆さんBランクに昇格です」


 ギルムザック達が合流してから、さらに一週間が経過する。その間ただただひたすれにダンジョンに潜り続け、確実に攻略範囲を拡大させていった結果、早々に二十階層まで到達する。


 さらに驚異的なのが、全員が二十階層のボスの単独撃破を達成しており、その戦い方にもまだ余裕があった。


 その戦い方が異常であるということは薄々感じてはいたが、ギルムザック達が参加したことで、その薄々が確信に変わっていったといった具合だった。


「師匠のお仲間さんたちおかしいですよ!! なんでボスを単独で倒しちゃってるんですか!?」

「それくらいやってもらわなければ、俺の使用人は名乗れないからだ」

「普通の使用人はモンスターと戦ったりしません!!」


 などと言われてしまったが、計画を進めてきた手前、今更中止になどできるはずもない。それに今中止にしたところで、もうすでに常人の域を遥かに超えてしまっているソバスたちを野放しにはできまい。


 であるならば、常人の域をすでに超えてしまっているのならば、行くところまで行ってしまえばいいのだ。なにせ、彼らにはAランクのモンスターを単独で撃破してもらいたいという思いがあるのだから……。


 そんなこととは露知らず、使用人たちの異常なまでの成長ぶりにギルムザック達も最初は驚いていたものの、今ではその状況に順応し、「彼らにだけ教えるなんてずるい。俺たちにも教えてくださいよ!」などと言ってくる始末であった。


 俺としても、十数人の中に数人が加わったところで手間としては何も変わらないため、教えることに問題はない。彼らも、今以上に強くなりたいがどうすればいいのか悩んでいたらしく、今回の一件がなくても俺に相談するつもりだったとしばらく経って聞かされた。


 そんなこんなで、軽く始めた使用人強化計画も順調に進み、いよいよ二十階層以降の攻略が始まる。俺の記憶では、二十階層以降の攻略は魔族との一件で進んでおらず、ここから先は実質的に俺も初見の相手となる。


 二十階層は、森や草原や砂漠といった様々なフィールド型のダンジョンだったが、今回はスタンダードに洞窟型のダンジョンに戻っている。しかしながら、索敵をしてみるとその気配は明らかに強くなっており、これならソバスたちも手応えのある相手と戦えて経験になる。


 具体的なモンスターのラインナップは、Cランクのモンスターがメインで、ポイズンマインスパイダー、オーク、ロックタートル、バトルマンティスといった俺にとっても彼らにとっても初見の相手であり、どういった攻撃パターンをしてくるのか少し興味がある。


 その他にも、今まで出現したゴブリンやスライムなどの上位種も存在しているようで、それらのモンスターが三匹から六匹のグループを形成して行動しているようだ。


 実力的には、ソバスもギルムザック達もBランクやAランクに相当する実力であるため、ここら一帯のモンスターではまだ問題ないだろうが、そこは様子を見ながらやっていこう。


「よし、ここからは三人一組で戦ってみてくれ。ギルムザック達はそのまま四人組で問題ない」

「わかりました」


 俺の指示に従って、三人一組のグループがいくつかできた。戦力的なバランスは問題なかったので、そのままモンスターと戦わせることにしたのであるが……。


「ふっ」

「てぃ」

「ほっ」


 当然と言わんばかりに、Cランクモンスターを一撃で粉砕する。それを見たギルムザック達が俺に何か言いたげな視線を向けてくる。だが、それを無視して他の参加者たちにもモンスターと戦闘させていく。


 結果として、全員Bランクに昇格できるほどの実力を持っているため、二十階層程度のモンスターでは相手にならず、俺たちはそのままダンジョンを突き進んでいく。


 俺も戦ったことがないモンスターがいるので、たまにお手本と称してモンスターを相手にしたが、SSランクのモンスターでも余裕で勝てる俺の敵ではなかった。ま、当然といえば当然なんだがな。


 そのまま破竹の勢いでダンジョン攻略を進めていき、さらに一週間が経過した頃には、全員が三十階層のボスを単独で攻略できるようになっていた。


 ちなみに、チートな修行である時間経過のない結界を使ってソバスたちをさらに鍛え上げるということも忘れていない。そして、今回参加したギルムザック達も例外ではなく、俺が模擬戦の相手をしてやったらこんなことを言い出した。


「こんな修行を続けていたら、そりゃあ強くなりますよ」

「地獄だわ」

「もう僕吐きそう……」

「ああ、なんて素晴らしいの! 先生もっと、もっとしてぇー!!」


 やはりというべきか一人だけおかしい人間が混ざっているが、ギルムザック達にとっても相当辛いものだったようで、今回のチート修行で全員のパラメータがS帯にまで上昇した。


 ソバスたちもさらに力を蓄え、元々戦闘に秀でていた連中はS帯に、素人組の連中もA帯にまで能力が向上し、すでにAランク冒険者の実力に匹敵するほどまでに強くなっていた。


 そして、そのまま冒険者ギルドに乗り込み、全員が三十階層のボスを単独撃破したことを報告すると、いつものサコルからムリアン、ムリアンからイザベラという連絡網によって再びギルドマスターとのお話しになったが、結局ソバスたち全員の実力が認められ、見事全員Aランク冒険者に昇格できたのだった。


 その後、また参加者たちに三、四日ほど休日を与え、俺は自宅に籠ることにした。その目的は、新たなる商品の開発である。


 この数か月という間に幾つかの生産作業はこなしてはいるものの、どれもメンテナンスやあまり手間の掛からないものばかりだ。そこで今回ダンジョン攻略の合間のこの数日間でがっつりとした生産作業に従事しようと考えたのである。というわけで、レッツDIY!!


「まずは、生産する商品の系統からだな」


 現在、俺が出資しているオラルガンドのグレッグ商会と王都のコンメル商会では、両商会ともほとんど同じ商品を卸している。違いがあるとすれば、グレッグ商会では一部の商品の生産ラインを確立しており、コンメル商会では生産ライン自体がなく、販売する商品が入った俺のストレージに繋がっている魔法鞄を手渡すことで商品を補充している形を取っている。


 そして、主な取扱商品はブレスレットやヘアピン・シュシュなどの装飾品に、木工人形やぬいぐるみといった生活必需品でない嗜好品がメインとなっている。


 そこで今回は、比較的生活に必要なものを生産し、新しい商品として追加するとしよう。では、改めてこの世界の生活必需品とは一体何か?


「食器類か、服飾類ってとこか」


 中世ヨーロッパ程度の文明力において、重要なことは怪我や病気が現代と比べてとても恐ろしいということだ。まともな医療技術のない世界ではただの風邪でも命の危険があったり、正しい治療法を知らなければ、かすり傷から菌が侵入し致命的な状態になる可能性すらある。


 そうならないようにするためには、食事による体力を付けることと清潔な衣服を身に着けることによって、怪我をしても治り易い体と病気になっても戦える免疫力を備えることが大切なのだ。


 であるからして、食事を円滑に行えるよう食器類を充実させることはこの世界の住人にとっては馬鹿にできないものであり、服や靴などにおいても同じことが言えると俺はそう考えている。


 そういった結論に至った俺は、新たに食器類と服飾類を製作しようとさっそく作業に移った。

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