ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
260話「社員旅行、いざオラルガンドへ」
「いらっしゃいませー」
『いらっしゃいませー』
接客係の女の子の声に倣うように、他の女の子たちが声を上げる。まあ、当然その女の子はただの女の子ではなく、昨日俺が購入――もちろん契約者はマチャドだ――した奴隷たちだ。
奴隷購入後、メランダたちと同じように当面の衣食住を最低限用意してやったのちに、メランダたちとも顔合わせをさせた。どうやら奴隷としての習性なのかはわからないが、奴隷になった者を複数購入した場合、その中でリーダー格となる存在が形成されるらしい。
メランダたちの場合はメランダとシーファンとカリファがそれに該当したのだが、今回の奴隷の中にも他の奴隷たちを取り仕切る奴隷がいた。
その奴隷とメランダたちとの間で何か得も言われる視線の応酬が行われたように思えるが、すぐに何事もなかったかのように互いに挨拶を交わしたため、彼女たちの中で何かが決定付けられたのだと判断した。
とにかく、これで王都も四十人体制での飲食販売が整ったわけだが、他の都市と異なるのは王都では唐揚げ販売があるということだ。
とりあえず、しばらくは様子見として俺も屋台の店員として働き、少しずつ料理組の奴隷たちに唐揚げの調理法を伝えていくことにしようと考えている。
元々、ちょっとした気まぐれから始めたことなのでこのまま辞めても問題はないのだが、訪れる客が楽しみにしてくれている以上、すっぱりと辞めることに後ろめたさのようなものを感じてしまう。
そこで思いついたのが奴隷の補充だったのだが、これなら最初から奴隷にやらせた方が良かったのではというなんとも言えないジレンマに苛まれそうになるが、そこはもう諦めるしかない。
そんなこんなで、新しく購入した奴隷たちに唐揚げの調理法とその他諸々の雑事を覚え込ませるのに数日を要し、ようやく形になったため、そのまま彼女たちに任せてようやく俺は唐揚げ売りの臨時バイトをやめることができたのだった。
そして、今何をしているのかといえば、彼女たちが俺無しでもやっていけるかどうかを見定めるための抜き打ちの視察といったところで、彼女たちにバレないよう気配を殺して屋台の様子を窺っている。
傍から見れば不審者極まりない行為だが、そもそも俺を見つけることができる相手がその場にいない以上、俺のやっている行為を咎められることはない。要はバレなければ問題なしというやつだ。
(うむうむ、なかなか上手くやっているようだ。これなら唐揚げも彼女たちに完全に任せてしまってもいいだろう)
今日一日様子を見てみたが、しっかりと客同士のトラブルや予期せぬ出来事にもしっかりと対応できていたように思えたので、これで唐揚げに関しては問題ないということで、俺は次のやりたいことを模索することにする。
「さて、ひとまず食べ物系はこれでいいとして。次は……よし、あれだな」
そう思いついたように呟いた俺は、今後の方針を思い浮かべながら眠りに就いた。
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「ロ、ローランド様。い、今何と仰いましたか?」
翌日、朝食後の席で俺は使用人たちにあることを告げた。そのあまりに突拍子な言葉に、珍しくソバスが慌てた様子を見せる。
「今からオラルガンドに行き、社員旅行兼お前たちの地力を上げる武者修行に行く。全員支度をし二時間後にここに集合すること。以上だ」
「いきなりそのようなことを言われても困ります。大体、屋敷の管理はどうするのですか?」
今回俺が目論んだのは、他でもないソバスたち使用人の実力を上げるための修行だ。普段から世話になっている部下を労う社員旅行も兼ねており、まさに一石二鳥の計画だったのだが、いきなりのこと過ぎたのかソバスの待ったが掛かった。
自分たちがいなくなってしまうことで屋敷の管理は誰がするのかという問いに、俺は淡々と答えてやる。
「こいつらに任せる」
俺は、スキル【無機生物創造】で作り出したゴーレムを出現させる。突然現れたゴーレムに全員が驚いていたが、こちらに危害を加えることがないとわかると、すぐに警戒を解いてくれた。
当然使用人たちをオラルガンドに行かせるということは、屋敷を管理してくれる者がいなくなる。これは当然予想できることであるため、対策としてゴーレムによる警備を提案する。
これであれば、仮に侵入者が現れたとしても撃退してくれるので、使用人がいない間も問題ない。だが、それでもソバスは首を縦に振ろうとはしない。
「確かに、ゴーレムたちに警備を任せればその間の侵入者に対する備えは万全でしょう。ですが、屋敷の管理は何も警備だけではございません。掃除、洗濯、その他諸々の雑事から庭の手入れまで多岐に渡ります。我々が留守の間ゴーレムにそれができますか?」
「……」
まさに正論であった。ソバスの言う通りゴーレムたちに屋敷の警備自体は可能だ。だが、掃除や洗濯など屋敷の管理をすることはできない。だが、それはあくまでも普通の場合だ。
「なら、うちの敷地すべてに時止めの結界を張り巡らせ、その間は誰も入ってこれないようにするというのはどうだ? 結界の中は時間が止まっていて、屋敷が汚れることもなければ、何かが朽ちるということもない」
「……そのようなことが可能なのですか?」
俺のあまりにもあまりな提案に、本当にそんなことができるのかと怪訝な表情でソバス問い掛けてくる。だが、できるものはできるのだ。そこはそういうものだと納得してもらうほかない。
「可能だ。だから、お前たちが出掛けている間に賊に侵入される心配もないし、屋敷が汚れるなどということもない。庭に植えてある植物や家畜が枯れたり死んだりすることもない。これで気が済んだだろう。行くよな? 行くと言え!!」
「はあ、かしこまりました。それがあなたの望みであるなら」
どうやら、俺のごり押しは成功したようで、諦めたようなため息を吐きながらも社員旅行を了承してくれた。……ふっ、俺の勝ちだ。
ソバスが許可を出してからの使用人たちの行動は早く、それぞれの部屋から身の回りの荷物を簡単に纏め上げる。ルッツォに関しては、長期間保存できる食品などを除いたすべての食材や調理器具を持っていこうとしていたので、俺のストレージにすべてぶち込んでおいた。
準備が完了した使用人たちが再び食堂に集結したので、このままオラルガンドに向けて転移する。さすがに一度に十数人をいつも使っている瞬間移動で運ぶことはできないため、普段使っていない転移魔法を使う。
「【ディメンジョンゲート】」
発動した魔法に使用人たちが驚いているようだったが、俺がこういった能力を使えることは使用人の間で共有している情報であるため、それほど驚きは少ない。安全を確認するために、まずは俺が入って大丈夫かどうか確認することにし、ゲートを潜った。
ゲートの先は、オラルガンドの自宅の庭に設定してあるので、突拍子もない場所に移動してしまうということはなく、問題はなかった。
安全を確認したのち、もう一度ゲートを潜り抜けると、ソバスたちに安全だということを告知する。
「本当に大丈夫なのでしょうか?」
「問題ない」
俺のその一言で覚悟が決まったのか、まずはソバスが入って行く。それを見て順々に使用人たちが入って行き、全員がゲートに入ったのを確認すると、最後の仕上げとして敷地全体に侵入不可能な結界を張り巡らせる。
結界を張り終えた後、やり残したことがないか最終確認をした俺は、そのままゲートを潜り使用人たちが待つオラルガンドへと転移した。
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