ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
259話「商売繁盛とマチャドのお迎え」
「へーい、いらっしゃいいらっしゃい!」
などと、威勢よく客引きの声を上げる一人の少年がいる。そう、俺だ。
今日は俺が唐揚げを売り始めて二日目となる。そして、例の如くというべきなのか予定調和というべきなのかは人それぞれだが、開店前から店の前に長蛇の列が形成されていた。
クッキーの店にも変わらず長い列ができているのだが、よくよく観察してみると、並んでいる客に共通点が多いことに気付く。
まずクッキーを買い求める客は女性が多く、その年代は少女から妙齢の女性という若年層が目立つ。一方のうちの屋台といえば……。
「デカ盛二つと大盛り一つ」
「こっちはデカ盛り三つで頼む」
「俺は中盛りを一つで」
「は、はい少々お待ちください!」
そのほとんどが暑苦しい男ばかりで、その見た目も肉体労働者や冒険者といった体を動かす仕事をしている人種が多く感じる。
元々、肉という売り物を扱っているため、あまり女性客が目立って買い求めるということ自体が珍しく、列を成す鼻息の荒い筋肉だるま列車と化している。
まあ、買ってくれるのなら例え見目麗しい女性だろうとむさい男であろうとも変わりはしないのだが、できればもう少し鼻息を押さえて欲しいものだ。……こらそこ、フロントダブルバイセップスをしない!
それから、昨日の青年やギルムザックたちの食べっぷりを見て、明らかに一つ当たりの量が足りないことが判明したため、急遽新たに三つのメニューを追加することにした。
まず一つ目は昨日も販売した【並盛り】で、量的には某コンビニエンスストアで販売されているカ〇アゲくん一個を半分に割った片割れ分が今販売している唐揚げ一個の大きさで、それ十四個分が大体並盛りの量となる。
そして、新たに追加した【中盛り】、【大盛り】、【デカ盛り】というメニューは先ほどの並盛りの1.5倍が中盛りに相当し、さらに並盛りの2.5倍が大盛りとなる。
最後のデカ盛りというのはまた別の新しい商品となっており、従来の――と言っても、販売が始まってまだ二日目だが――唐揚げ一個分の約四倍、カ〇アゲくん換算で約二倍の大きさの唐揚げというビッグサイズな唐揚げを新たに開発した。
開発といってもそれほど大したことをしたわけではなく、コッカトリスの肉を切り出す時に、通常よりも大きめにカットするだけというなんともシンプルな仕様となっている。
ちなみに、各メニューの値段についてだが、並盛りは今まで通り小銅貨四枚、中盛りは小銅貨七枚、大盛りは大銅貨一枚と小銅貨二枚、デカ盛りは大銅貨二枚となっている。
値段と量が釣り合っていないように見えるが、常に同じ量で供給しているわけではないということと、原材料費や人件費などのコストを少し加味した値段設定にしているため、問題はない。寧ろ、そういった諸々のコストを加味すれば、もう少し値段が掛かってしまう可能性すらある。
あとデカ盛りの量については、大きさが大きさだけに今まで使っていたヴァンガスの葉で作った入れ物では少量しか入らず、物足りないものとなってしまう。そこで、考えたのは肉串スタイルだ。
男性でも一口で食べきることができない大きさの唐揚げであるため、何か入れ物に入れるというよりも串などに刺して売る肉串スタイルを取ればいいのではと思い、さっそく試してみたところそれが見事に当たった。
前世の地球でもコンビニなどで売られていた唐揚げ串などがあったため、手法としては悪くないとは思っていたが、まさかここまで当たるとは思ってもみなかった。
そんなこんなで、量が少ないという客のニーズに合わせる形で複数のサイズを用意したことにより、女性や子供の客だけでなく男性客をも取り込むことに成功したのであった。
「上がったぞ」
「はいっ」
「ご主人様、調理をお願いします」
「ああ」
昨日の盛況もあってか、メランダとその下の組長三人が新たに加わり、合計六人体制で客を捌く。この数日でメランダたちが持っていた料理組、接客組、護衛組の組長の役職を各組の二番手的存在の奴隷に譲渡し、メランダたちはそれぞれ奴隷長と副奴隷長の専任となった。
できることならすべての作業をやりたいところだが、それだと客をかなり長い間待たせることになってしまいそうだったので、仕方なく彼女たちにお願いしたという形だ。
その分の給金を払うと言ったのだが、「ご主人様と一緒に働けるならお金はいりません」の一点張りだったため、先払いという形で口の中にスイートポテトを突っ込んでおいた。
(こりゃあ、こっちの屋台も増やして奴隷も新しく雇わないとダメだな)
などと、明らかに異常な長蛇の列を見ながらそんなことを考えていると、列の途中に並んでいた二人の男がなにやら騒ぎ出した。
「てめぇ、やんのかコラ!」
「上等だやってやんよ!」
という具合に、売り言葉に買い言葉を吐きながら取っ組み合いの喧嘩を始めようとしたタイミングで、屋台の厨房から叫んでやった。
「お前ら。喧嘩するのは勝手だが、大人しく並べないならもう二度とここで売らないからな! お前らのせいで唐揚げを食べられなくなった今並んでる奴らが、大人しく黙ってるかな?」
「「ひ、ひぃ! す、すいませんでしたー!!」」
「いいから黙って大人しく並んでろ!」
「「は、はぃー!!」」
俺がそう言ってやると、並んでいた男たちがギロリと喧嘩をしていた男たちに厳しい視線を向ける。自分が原因で贔屓にしていた店を潰されたとあっては、男たちも何も思わないはずがない。そのことに思い至ったのか、二人ともすぐに頭を下げ、しげしげと列に戻って行った。
列に戻った男たちは、隣の冒険者風の男たちに「おい、お前らのせいで店がなくなったらどうしてくれんだ? ああ?」とドスの利いた声で絡まれていたが、自業自得であるため黙認する。
そんなちょっとしたトラブルがありつつも、なんとか客を捌き切ったところで、今日は少し早めに店仕舞いをする。店を閉め、その足ですぐにコンメル商会へと直行し、マチャドを引っ張っていこうとしたのだが……。
「いないだと? どこに行くか聞いてないか?」
「恐らくですが、歓楽街ではないかと」
「なるほどな。わかった。引き続き、業務に励んでくれ」
マチャドも独身男性であるからして、そういったところに顔を出すことはあるのかもしれないが、それにしてもタイミングが悪過ぎる。仕事の打ち合わせということで出掛けているのであれば、こちらとしても諦めがつくと言えるが、こちらが仕事の用件で出向いているのにマチャドの個人的な用事で仕事の進捗が進まないのはいかがなものだろうか?
「さて、どこの店でお楽しみ中だ?」
というわけで、やってきました歓楽街。今も布面積の薄い女性たちが客引きで色香を振りまいているのを尻目に、マチャドがどこにいるのか俺の持つ能力のすべてを駆使して探った結果、ものの数十秒で標的を補足する。
その瞬間、地面を蹴って目標に接近し、ある建物内に侵入する。すぐにある部屋に辿り着くと、魔法で作ったスペアキーでドアのカギを開け放つ。
「な、なんだぁ!?」
「きゃあ」
そこにいたのは、半裸の状態となったマチャドと薄着の女性がいた。だが、見たところまだ始まる前だったようで、ぎりぎり間に合ったといったところだ。
「やあ、マチャド君? 仕事をサボってこんなところに出向くとは、ずいぶんと偉くなったものだな」
「いや、こ、これはその……違うんです」
「何が違うのか小一時間ほど聞き出したいところだが、そんなことより奴隷商会に行くから今すぐ服を着ろ」
「そ、そりゃあないですよ。ここまできて諦められる訳ないじゃないですか!」
などと、面倒臭いことを宣い出すマチャドだったが、俺の一言で手のひらを返すように支度を始めた。
「今度この店の一番人気の娼婦を奢ってやるから、さっさと服を着て俺に付いてこい」
「ほ、本当ですか!? 行きます! すぐに準備しますので!!」
「……」
そのあまりの変わり身の早さに内心で呆れた俺だが、良くも悪くもそれが商人の気質であるのだろうとという他の商人が聞けばクレームが来そうな内容で納得しながら、俺はマチャドが服を着終わるのを待つ。
「あ、あの……」
「ああ、君にはすまないが、今回はキャンセルということでよろしく頼む」
「はあ」
「お詫びといっては何だが、これを進呈しよう」
そう言って、俺はストレージから庶民クッキーの入った紙袋を取り出す。中身がクッキーだとわかると彼女は目を輝かせて喜ぶ。
「わあー、これって今王都で一番人気の甘味じゃないですか!? もらっちゃっていいんですか?」
「ああ、構わない。仕事の邪魔をしたからな。是非もらってくれ」
「ありがとうございます! 行列が凄くて手に入れるのに苦労するって評判だから、なかなか並べなかったんですよね」
「……そうか、喜んでもらえて何よりだ」
そんな会話をしていると、マチャドが着替え終わったので、そのまま娼婦を連れ立って部屋を後にした。店の責任者に事情を説明し、今回は俺の顔とマチャドがその店の上客ということで、「またのご来店をお待ちしております」という言葉と共に送り出してくれた。……こいつ、一体何回ここを利用してやがるんだ?
そんなこんなで、マチャドと共に奴隷商会に行き、新たに二十人の奴隷を補充し、コンメル商会の敷地に彼女たちが住まう住居を増築したところで、その日は終わったのであった。
余談だが、欲求を解消できなかったことが響いたのか、マチャドが店主に言った「性奴隷を見せて欲しい」という言葉を俺のチョップで黙らせるという珍事が起こったことを報告しておく。
こうして、無事奴隷の補充を完了することができたのであった。
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