ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
235話「クッキー計画始動」
今後の方針が決まった俺は、さっそく行動に移す。とりあえず、ここにいる人たちの協力が得られるということで、それを利用することにする。
「ミラレーン夫人、ちょっとお聞きしたいことがあります」
「ふふ、畏まる必要などありませんよ。王妃様にあのように接している相手にそんな態度を取られては、こちらが参ってしまいます」
「では遠慮なく。夫人の知り合いの貴族の中で、善良な貴族はどのくらいいる?」
「そうですねぇ」
俺の問いにしばし考えた後、ミラレーンは爵位が高い順に答えてくれた。
「侯爵家が一つ、伯爵家が二つ、子爵家が四つ、男爵家が六つってとこかしら?」
「なら、夫人はこのあとそれらの貴族家に働きかけて、今回の計画の旨を伝えて協力を取り付けておいて欲しい」
「具体的に彼らは何をすればいいのかしら?」
「難しいことは特にない。俺は近々商業ギルドに今回出したクッキーのレシピの権利を譲渡して、レシピ自体の販売をさせるつもりだ。そして、ゆくゆくはこの国すべての商業ギルドでレシピの販売が行われることとなる」
「そうなれば、いつでもどこでもあなたのクッキーが食べられるということね」
「もちろんそれだけでは俺のクッキーが広まるスピードは早まらない。そこで各貴族と連携して、この国全土にクッキーを広めていくという訳だ」
レシピを商業ギルドで販売することで、料理人がそれを買う。そのレシピを元に作ったものを販売する。そうすることで、徐々にではあるが俺のクッキーが周知されていくのだが、それでもなかなか広まりにくいと予想できる。
そこで、俺自身もクッキー販売を行い、王都だけではなく俺が今まで拠点としていた街でも販売し、拡散的にクッキーを広めることも行っていく。食べ物系の商売は薄利多売な側面があり、労働に対して得られる対価が少なくはあるが、今回はクッキーというお菓子を国全土に行き渡らせるのが目的なため、採算は度外視するつもりだ。
当然だが、商売である以上黒字経営を行わなければ意味がないが、そこのところは値段を調整すれば問題ないと考えている。
「ロランちゃん、私たちも何かできることはない?」
「商業ギルドにレシピが販売されれば、それを買って誰でもクッキー販売ができるようになる。そうなった時は村人の中から募ってクッキー生産を行ってもらいそれを売り出せばいい」
「これから忙しくなりそうね」
「では、これにてお茶会はお開きにさせていただきます」
そんな話をしたのち、王族、ローゼンベルク家、バイレウス家、マルベルト家の順に家へと送り届け、国王並びに各家の当主には礼として残っていた甘味を渡しておいた。
この世界の人間は男も女も関係なく甘いもの好きのようで、甘味を渡された男たちは全員顔を綻ばせていた。もちろん、甘味を渡したのは女性陣が自室へと戻った後だ。そこは抜かりない。
こうして、波乱のお茶会は何とか事なきを得たが、その代わりに国単位での仕事をしなければならなくなってしまった。ひとまずは、お茶会の後始末をするべく、俺は今一度屋敷へと戻って行くのだった。
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それから数日が経過した。お茶会の翌日は、精神的な疲れとナガルティーニャのチュウのお代わりを要求されるという地獄のような体験をしたことで、何も手につかず奴を半殺しにするだけで終わった。
その翌日は、誰でも調理可能なクッキーのレシピ開発に向けて厨房に籠り、そのさらに翌日に何とかレシピが完成した。この時ルッツォに手伝ってもらったのが大きかった。
そして、今日はかなり久々にコンメル商会に足を運んだ。あれから暇を見つけては様子を見に来てはいたのだが、元々商人の息子だけあってマチャドの商才はかなりのもので、俺が細かい指示を出さなくとも商品を納品するだけで、商会の管理から販売戦略もこなしてくれた。
「久しぶりだな」
「これはローランド様。本当に久しぶりですね」
「いろいろお前に任せっきりになってしまって悪かったな」
「なんのなんの。これくらいお安い御用です」
マチャドにとっては、納品された商品を売るだけの簡単なお仕事らしく、儲かる商品を仕入れたりしない分楽なのだそうだ。確かに、売れるとわかっている商品を売るだけならば、これほど楽な仕事はないだろう。尤も、売り方一つで売り上げが変わる場合もあるため、一概にそうであるとは言い難いが……。
「ところで、今日は納品の日ではありませんが、何かございましたか?」
「実は……」
俺はマチャドに、クッキーをこの国の特産品として売り出すため、新たにコンメル商会で食べ物部門としてクッキーの販売を追加する旨を伝える。
元々、食べ物販売は薄利多売であることと賞味期限などの食べられる期限があるため、手を出すのはあまり良くはないと考えていた。だが、お茶会でクッキーを国全体に行き渡らせるという計画を実行するには、そんなことを言っている場合ではなくなったのだ。
「クッキーですか?」
「ん、食べたことないか?」
「はい、お恥ずかしながら」
マチャドのこの言葉は意外だった。確かに、露店でもクッキーを売っている場所はなく、それどころか甘味すら扱っていることすら稀だ。俺も今までそれなりに旅をしてきた自負しているが、露店のほとんどが肉を使った軽食がほとんどで、それ以外だと日用品や食材そのものを取り扱っている店が多くを占めている。
甘味、しかも貴族などの高貴な人間が、お茶を嗜む際のお茶請けとして食されるクッキーを商人の息子とはいえ、平民のマチャドが食べたことがないというのは道理なのかもしれない。
「食べてみるか? これだ」
「ええ、是非に。……もぐもぐ。こ、これは……とても甘くて美味しいです。サクッとした歯ごたえと同時に、口の中一杯に広がる甘味。そして、この大きさもちょうどいい。女性でも一口で食べることができ、お茶請けとしてはとても理に適っている」
ちょうど、一般人でも作れるよう開発したレシピで作ったクッキーをストレージに入れていたので、それを出してやる。すると、まるでどこぞのグルメレポーターのように具体的な味の評価をマチャドが口にする。さすがは商人の息子といったところなのだろうか?
「ひとまずは、これを俺が出資しているここコンメル商会とオラルガンドのグレッグ商会で販売して、頃合いを見計らって具体的なレシピを商業ギルドに譲渡し、それを販売してもらう」
「独占はしないのですね?」
「商い目的なら独占なのだろうが、今回は商売じゃなく商品自体をこの国に広めるのが目的だからな。収益は、譲渡したレシピの売り上げの何割かをこっちに回してもらえば、そこで元は取れるだろ」
「商人としては勿体ない気持ちですが、そういう目的なら仕方ありません」
商人として儲け話を他の連中に持っていかれるのが嫌なのか、唇を噛み締めながらマチャドが納得する。俺としても本来ならこういった情報は独占秘匿すべきものだが、今回の目的が情報そのものを国全体に行き渡らせることであるため、秘匿するとその目的が達成できないのだ。
「とりあえず、まずは人手の確保を優先する。奴隷商会に行くぞ」
「わかりました」
そう言って、俺はマチャドと共に奴隷商会へ赴くことになった。
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