ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく
221話「一件落着と新たなイベント」
「そうですか。ありがとうございます」
魔王の部屋へと戻った俺は、二人に状況を伝えた。ひとまずは、サーラとサーニャにはしばらく時間を置いてからサニヤと会うべきだということを伝え、サニヤもまだ二人に会う心構えができていないことから、今回の対処を受け入れた。
ちなみに、七魔将たちはすでに引き上げており、今回の騒動の後処理に動いている。その中にオシボリもいたが、目線を合わせただけで会話らしい会話をすることはなかった。
「第二王女よ。あまり気にすることはない。あの二人を陥れたのはお前の意志ではないのだろう?」
「もちろんです! 私があの二人にそんなことをするはずがありません!!」
「サーラとサーニャもそれを理解している。それでも気にするというのなら、これから時間を掛けて償っていけばいいだけの話だ」
人は誰しもミスを犯す。ミスをしたときに大事なのは、ミスをしたことを悔いるでもなく、ミスをしないよう心掛けることでもない。そのミスをどう取り返すかということである。
もちろんそれはその場その場の状況によるが、取り返しのつくミスであれば、まずはそのミスをどう補填するか、それを優先して考えるべきなのである。
そして、今回のサニヤのミスは取り返しがつくミスである。尤も、俺がいなければ今頃はサーラもサーニャも生きて城に帰ってくることすらできなかったかもしれない。だが、実際問題彼女たちは無事に生きている。そのことが重要なことなのだ。
「ぶー」
「なんだ馬鹿たれ? また浮気だのなんだのと見当違いなことを宣う気か」
「あたしの時と態度が違う! もっとあたしにも優しくしてくれてもいいじゃないか!!」
「……」
そんなことを口にするナガルティーニャに向かって、呆れを通り越した蔑みの視線を向ける。相手に優しくできない人間が、優しくされるわけがない。なぜこいつはそんな当たり前のことが理解できないのだろうか?
「優しくされたいのなら、自分が相手に優しくしようとする努力をしろ。それができない時点で、優しくしてもらう資格などはない」
「むぅー」
わざとらしい膨れっ面を作って可愛いアピールをするナガルティーニャだったが、普段の言動を垣間見ている人間からすれば逆効果でしかない。ナガルティーニャよ。他人の気持ちに寄り添うことを覚えなければ、誰からも優しくなんてされないんだぜ?
とりあえず、サーラたち姉妹の問題については時間を置くということで決定し、引き続き二人の身柄を俺の屋敷で預かることとなった。
「ローランド殿とナガルティーニャ殿には感謝している。此度の件かたじけない」
「まあ、乗り掛かった舟だ。気にしないでくれ」
「そうそう、この大賢者ナガルティーニャ様に大いに感謝しなさいな」
「……」
こいつ、俺の言っていることを理解しているのだろうか? こいつも俺と同じ元日本人の転生者のはず。日本人の謙虚の美徳はどこへ置いてきたというのだろうか?
元々の気質なのか、それとも彼女をこうさせる何かがあったのか。それは今の俺にはわからないが、ひとまずは頭をはたいておこう。
「いたいっ。ローランドきゅん! やっぱりあたしに対して辛辣過ぎるよ!!」
「自分の態度に問題があるということを理解しているなら、そんな言葉は出てこないはずなんだが? もういい、今回の一件はこれで終わりだ。帰っていいぞ」
「やっぱり扱いが雑な気がするんだけど……」
そう思うのなら、なぜに態度を改めないのだろうかこのロリババアは? 年の功とかよく言うが、逆の意味で老害化が進んでいやしないか? まったく、これだから最近の年寄りは……。
かくして、サニヤの件もひとまず落ち着き、ようやく魔族の一件については終息したのであった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
魔族の件から数日が経過したある日のこと、国王から呼び出しがあった。あの後、国王たちにも事の顛末は話してあるので、その件についての問い合わせではないことは予測できる。
サーラとサーニャについても、引き続きこちらで預かるという旨を話しているので、その件でもない。一体何だろうか?
「ま、行ってみりゃあわかるか」
悩んでいても仕方がないことだと割り切り、その足で国王の元へと瞬間移動する。すぐに「む、来たか」と国王に出迎えられ、俺は用件を問い掛ける。
「それで、何かあったのか?」
「ああ、実は魔族の姫君のことを知ったティアラが、彼女たちをお茶に招待したいと言い出しおってな」
「なるほどな」
詳しい事情までは知らないだろうが、この件に俺が絡んでいるということはなんとなく察知して、少しでも俺の役に立ちたいという健気アピールをやりたいといったところだろう。
あるいは、俺のところにいる魔族の姫がどういった人物なのか見極めるため、特に俺に対して恋慕的な何かを抱いていないかを確認するための探りを入れるかのどちらかと俺は推測する。
「魔族の件が終わったばかりでこういったことを頼むのは忍びないが、ここは一つ頼まれてくれないか」
「わかった。だが、招待されるのはサーラたちではなくティアラだ。俺の屋敷に出向くのなら、二人とのお茶会を許可しよう」
魔族であるサーラたちが人間の王城に出入りするのはいくらなんでもマズイ。道中は俺の瞬間移動でなんとかなったとしても、城内で人目に付かないようにするのはほぼ不可能だ。
であるならば、ティアラの方が俺の屋敷に来てもらい、サーラたちとお茶会をしてもらった方が情報の漏洩を防ぐという意味ではいいのではないかと判断したのだ。
「それはいいアイデアですわね」
「……サリヤ。いつからそこにいたのだ」
「つい今しがたですわ。それよりも、私もそのお茶会に参加したいのですが、よろしいでしょうか?」
国王とそんなことを話し合っていると、いつの間にか王妃のサリヤが現れた。俺の気配察知にも引っ掛からなかったため、気が付かなかったのだが、本当にいつからそこにいたのやら……。
「お前が行くと向こうの姫君が委縮するのではないか?」
「あら、あなたは私が鬼婆とでもいいたいのかしら?」
「そんなことは言っておらん! 王妃であるお前が出向けば、相手に気を遣わせてしまうという意味で言ったのだ」
国王の必死に釈明する声を聞きながら、俺は頭の中で思案する。サーラたちも人間界に来て数日経過しており、そろそろ暇を持て余している頃だ。ここでイベントの一つも開催して、彼女たちをもてなすのもホストとしての務めではないだろうか?
そうと決まれば、ここはいっそのこと盛大にやってやろうではないかということで、俺が構想を練っていると、俺の服の裾を引っ張る人物がいた。
「……」
「あなたですね。ティアラお姉様が話していた婚約者というのは?」
「お前は?」
「申し遅れました。わたしはシェルズ王国第二王女シェリルです。八歳になります。以後お見知りおきを」
そういいながら、シェリルがドレスの裾を摘まんで一礼する。その仕草は拙いながらも、しっかりとした王族の礼儀作法に則ったものであり、気品のようなものが感じられた。というか、ティアラに妹がいたのか。全然知らなかった。
俺は礼儀知らずな人間ではない。礼儀には礼儀で返す男なのだ。というわけで、久々の貴族モード展開。
「これはこれはご丁寧に。私はこの王都で冒険者をやっております。ローランドという者です。こちらこそお見知りおきくださりませ。シェリル王女殿下」
「っ!? ……一応、礼節は弁えているらしいですね」
俺は貴族モードで胸に手を当てながらシェリルの返礼する。それを見たシェリルが目を見開きながら驚くと、ぽつりと言葉を漏らす。
一方の国王と王妃は、そのやり取りを黙って見ていたが、二人とも普段の俺の態度を知っているだけに、シェリルのことをからかっているのだとすぐに理解した。
そんな中、またまた国王の部屋にやってきた人物がいた。シェリルの姉であり、シェルズ王国第一王女のティアラである。
「失礼します。お父様、先日の件ですが……あぁ、ローランド様!」
「これはこれは、ティアラ王女。相も変わらず実に見目麗しい。あなたが部屋に入ってきた瞬間、天使が迷い込んできたのかと思いましたよ」
「そ、そそそそんな! わた、私が天使だなんて!」
「お姉様……」
俺のあからさまなお世辞に対し、口をどもらせながらあたふたするティアラに内心で呆れながら、余所行きの微笑みを張り付ける。それを見たシェリルも何か思うことがあるのか、ただ姉を呼ぶだけだった。
「ティアラ王女、サリヤ王妃。お茶会の件についてですが、私に少々考えがありますので、この件預からせてもらいます。お時間をいただきたいので、準備ができたら文を送らせていただきます」
「わかりました。楽しみにしていますね。シェリルもティアラも今からお勉強の時間ですよ。早く行くなさい」
「「わかりました」」
こうして、急遽王族を客とするお茶会が始まろうとしていた。
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